24 死闘!鎧武者
【登場人物】
小野タスク
地味で平凡で貧弱な高校生。
悪霊を斬る霊剣『韴霊剣』を目覚めさせる能力がある。
コマチ(小野小町)
平安時代の鬼退治師であり和歌の言霊を操り自由に時空間を変化させ、炎や水を操る能力を持つ少女。
・パンツを履くという概念が無い
猟師コマチ(チビ助)
鬼と戦う少女。蝦夷風の装束を身にまとい半弓と毒薬を使う。
・パンツを履くという概念が無い
柳生十兵衛 平 三厳 (ミツヨシさん)
山奥で修行中になぜか現代に召喚されてしまい、なぜかタスクの家でお手伝いさんをしている剣豪。
鈴鹿御前の霊刀『小通連』に片目を食われた。
餓鬼阿弥とテルテ
男女の熾燃餓鬼。鬼の身体能力を持ち、炎の属性魔術を使う魔界の武士
立烏帽子(鈴鹿御前)
第六天魔王の一人。リアル魔王
魔王軍随一の女性剣士である。
タカムラ(小野篁)
コマチの父。
地獄の高官であり自由に地獄と現世を行き来でき、強力な呪術を使う。
お供に降魔の化け猫(この子猫の子)を連れている。
川崎カヲル
年齢不詳の女性民族学者。
裏山の古墳を発掘するため移住して来てそのまま学校の司書になった変人。
・南軍流剣術の宗家である。
犬山、猿田、鳥飼
三年生のちょいワル三人組。
夜道の奥から三台のバイクが走り込んで来て餓鬼の群れを跳ね飛ばし、蹴散らした。
黄色いド派手なオンボロSUZUKIハスラー250!
「カヲルさん!」
「はあ〜い、おまったっせっ!」
カヲルさんはヘルメットをかぶったままバイクからヒラリと降りると背中に担いだ日本刀をスラリと抜いた。
いつも司書室の壁に掛けてあるあの日本刀…やっぱ本身だったんかい!
いや、今はツッコミはよそう。最強の援軍だ。
「小野!大丈夫か!」
「犬山さん!」
いきなり名前を呼ばれて驚いたが、他のバイクに乗ってたのは犬山さんと仲間二人だ。
来てくれたのか!
犬山さんたちは餓鬼たちに木刀や鉄パイプを打ち込み、通行人や建物から引き離す。
餓鬼はシャアア!と威嚇するが、そこを横から有無一剣で斬りまくった。
鬼たちは剣の力で次々と成仏していく。
助かった!
これならなんとかなる。
「上だ!屋根から来るぞ!」
いつの間にか犬山さんの仲間の一人が屋根に登っていた。何この人すごい!どうやって登ったんだ?
目をこらすと屋根の上に数匹の餓鬼が駆け回っているのが見えた。
「飛べ!フツのミタマ!!」
鎌はブーメランのように回転して餓鬼を薙ぎ払うい手元に戻って来る。
「小野?!なんだそれ!」
犬山さんが驚いている。
「え、えと、南軍流の秘密兵器っす」
「そ…そうか…」
いやいくら南軍流でもありえねぇけど、今は飲み込んでもらうしか無い。
いきなり餓鬼たちが飛び退いた。
なんだ?
闇の奥からガシャリ!と鎧武者が現れた。
見ればボロボロの甲冑の全身には矢が刺さり、顔には乱れた髪と血がこびりつき目は金色に輝いている。
(まさか、あれも餓鬼なのか?)
鎧武者は手前の餓鬼を蹴飛ばすと右手に持った太刀で薙ぎ払った。
手当たり次第かよ!
小野忠明先生の居た修羅界にはまだ修羅道なりの秩序や道義心はあった。だが餓鬼道にはその観念すら無いらしい。
つまり自分以外は全て敵なのか。
まさに戦う鬼だ。
「おりゃ!」犬山さんの仲間が屋根から飛び降りながら鉄パイプで殴り落とす。
ガシャン!とすさまじい打撃音が響いたが
鎧武者は全く動じず、振り返りながら片手で太刀を横薙ぎに振り回してきた。
「危ない!」
と思った時には犬山さんの仲間はヒラリとバク転して間合いの外へ逃げていた。
「猿田!そいつヤバいぞ!距離をおけ!」
犬山さんの指示で猿田という人はサッと飛び退いた。すごいジャンプ力と身のこなしだ。
この人たちこんなに強かったのか!
…いや、コマチが異常に強すぎるのか…
しかし鉄パイプで殴られても平気なのか…
あの甲冑のゴテゴテした装飾が衝撃を吸収してしまうらしい。ただの飾りではないようだ。
「犬山退がれ!」
カヲルさんが鎧武者に飛びかかる。と、見せて顔面に手裏剣を投げつけた。
相変わらずカヲルさんらしいダーティーな戦法だ。
だが鎧武者は左肩の鎧の袖で難なく手裏剣を受け弾いててしまう。
(あの手裏剣戦法が通じないのか!)
※鎧の袖:甲冑の両肩に装着されている板状の盾
カヲルさんは手裏剣を防がれてもかまわず飛び込み刀で斬りつける。
だが鎧武者は右片手太刀だけで受け止めてしまう。
鎧武者が体当たりすればカヲルさんの方が弾き飛ばされて転がる。
甲冑着けてるだけでこんなに強いのか!
カヲルさんはクルリと受け身をしながら立膝で振り向くと「ふう〜ん」と言いながら刀を顔の前に立てて祈る様に構えながら呪文を唱え初めた。
「天に向い一ツの印!地に向かい六つの印!西に向かい三つの印!」
あの呪文は!
以前、巨大な熾燃餓鬼を倒した南軍流の必殺技だ。
カヲルさんは祈りの構えから切っ先を突き出し、そこからさらに上段に構えると、まるで舞を舞うように刀をクルリと回し、刀身で身体を囲いながら入身して甲冑武者に体当たりする。
鎧武者はまた体当たりで弾き返そうとしたが、それに合わせてカヲルさんは甲冑の袖を掴んでグン!と身体をネジリ横転し、さらに足をカラメて引き倒す。
『南軍流!竜搦』
鎧武者は足をすくわれドカっと倒れる。ゴキッ!と足が折れた音がした。
あ!初めて見た時は踊りに見えたけど、今なら技の意味が分かる。この前習った南軍流六箇条の太刀打ちの技だ。
あの呪文は刀で使う連続技の名前だったのか!
最初に祈りの構えから突きの構え、さらに上段に構えて一打三手に取る。
これが天に向い一ツの印。
そこから切っ先を左肩に下げて身を囲い、左廻りに回転しながら横薙ぎに切る。
これが地に向かい六つの印。
最後に横薙ぎに切った勢いで右肩を囲うように振りかぶって体当たりした。
それが西に向かい三つの印なのか!
一瞬で南軍流の術理に目が覚めた気がする。
すごい!
カヲルさんは倒した武者の上に素早く馬乗りになり、上からギリギリと刃を押しつける。
鎧武者は両手を太刀に添えて刀を受け止めるので、カヲルさんはさらに左手を刀身に添えて全体重を乗せてミシミシと押さえ付けた。
すごい死闘だ!
「やった!」と犬山さんたちが声を上げた
今だ!カヲルさんが押さえ込んでいる今ならあの鎧武者を倒せる!
俺は鎌を手に走り出した。
だがその瞬間、鎧武者は口から炎を吹き浴びて来た。
カヲルさんはとっさにクルリと後転受け身で飛び退く。
鎧武者はゆっくりと起き上がった。
(まさか熾燃餓鬼!)
熾燃餓鬼は戦争の業魔を背負いながら餓鬼道に堕ちた戦士だ。戦闘力は他の餓鬼たちをはるかに超える。
つまり餓鬼阿弥たちと互角の戦闘力だ。人間の勝てる相手ではない!
「飛べ!フツのミタマ!!」
鎌はブーメランのように飛ばしたが鎧武者には片手太刀でバチッ!と払われてしまい、手元に戻って来た。
もう一発!
再びカマを投げつけるが鎧武者はカマを甲冑で弾くなりこちらに向かって走り込んで来た。
まずい!
カマを投げてしまったので斬られてしまう!間に合わない!
すでに鎧武者は目の前で太刀を振り上げている。
『電光!』
カヲルさんの気合と共に日本刀が飛んで来て鎧武者の兜に当たり弾け飛ぶ。
「もういっちょ!」
カヲルさんはこちらに走り込みながら左手で手裏剣の束を投げつける。
そのうちの一本が鎧武者の顔面に刺さった。
やった!助かった。死ぬかと思った。
カヲルさんは鎧武者とスレ違いざまに相手の脇差を引き抜き右脇の下に突き刺さす。
『焔回!』
さらに反対方向にクルリと回転し鎧武者の左腕を取り、肩口に突き刺さした。
すげ…ガチの殺人剣だな。
まさか相手の武器を使って倒す技だったとは。
鎧武者は再び火を吹いた。
カヲルさんは飛び退く。
鎧武者は手裏剣と脇差を引き抜くと歩き出した。
「不死身かよ!」犬山さんが叫んだ。
「チッ!」とカヲルさんは舌打ちした。
さすがにもう武器は無い。
「ダメだ、コイツは俺が倒さないと…」
有るは無く
無きは数添う 世の中に
あわれいづれの日まで嘆かん
『有無一剣』
シャッ!と鎌がツルギに変形した。
ズン!と突きの構えに切っ先を突き出して構える。
一剣天によっ…
鎧武者はいきなり俺に火を吹いてきた。
「うわわわっ!ズルいぞ!」
ダメだ!夢想剣に集中できない。
鎧武者火を吹きながら追いかけて来る。俺は逃げ回った。
考えてみたら今まで鬼の超能力に対する防御は全部コマチに任せていたから戦いに集中できた。
つーか俺ってコマチがいないと戦えないのかよ!
「放水!はじめ!」
いきなり横から水流が浴びせられ鎧武者が倒れた。
これはコマチの「激瀬」という魔法!
振り向いて見れば放水していたのは犬山さんの仲間の人たちだった。
消火栓からホースを引き出し放水したのか!
鎧武者は水を浴びながら強引に太刀を振り回して来る。
ダメだ、炎を封じてもまだ強い。
炎は防げても弱体化したわけではない。
こんな強敵相手にどうやって戦えばいいんだ。
「タスクどの!斬らせて勝つのでござるよ」
路地裏から十兵衛が杖を突きながら現れた。
ミツヨシさん!
「斬らせて勝つ?…」
考えてる間に鎧武者はこちらに太刀を振り回して斬りつけてくる。
そうか!斬る瞬間は火を吹かないんだ!
ならば相手が太刀で斬るのに合わせて相打ちで打てば炎で焼かれる事も無いはずだ。
「炎に焼かれまいとは思わず、『焼かれてしまえ』と思って相手の呼吸見るのでござる。そうすれば炎の呼吸が見えまする。そこに自分の呼吸を合わせるのでござる」
炎の呼吸?
そうか!相手の呼吸を読むのか。
ミツヨシさんはゆるりと杖に両手をもたれ掛けながら言う。
「電光影裏に春風を斬る。炎に焼かれ刀に斬られてしまいなされ」
ハッと気づいた。これが夢想剣の入り方なのか!
やれる!俺にもできる!
再び有無一剣をスッと切っ先を突き出して構えた。
鎧武者は炎を吐くが、それを南軍流の足さばきで避ける。
(見える!相手の炎の呼吸が見える!)
逃げ回るんじゃない、相手の呼吸に合わせるんだ。
焼かれてしまえ、斬られてしまえ…
心を捨てて捨てぬなり。
俺はスッと左足を引きながら剣を上段に振り上げる。
南軍流一打三手、俺にはこれしか無い。
鎧武者は太刀を振りかざし、こちらに突進しながら炎を吐いて来た。
見える。
俺は左足を右に避けながら上段の切っ先を左肩に回して身を囲い、クルリと左に回転しながら横薙ぎに切る。
「地に向かい六つの印!」
太刀と剣が下段でぶつかり合い、重い鉄の刀の衝撃を受けた。
(斬られてしまえ)
俺はかまわず真っ向上段に振りかぶる。
電光影裏、春風を斬る…
有無一剣は鎧武者の甲冑ごと切り割った。
〜24 「死闘!鎧武者」〜 完
(=φωφ=)あとがき。
今回は甲冑戦ですねえ。
じっさいに鉄剣と甲冑で切り合いしてみると、威力も防御力も違うので、まぁ勉強にはなりますね。
おすすめです。
> 南軍流 焔回
これは創作技ですが、奥山流の炎會の名前だけ使いました。炎會は五つ目の印、切合という太刀です。
十兵衛が餓鬼阿弥の腕を折った技「猿廻」の事です。
>消火栓
あの水は水道代金がかかってますので、イタズラで使ってはダメですよ。
圧力は約3〜5kgf/cm2ぐらいでしょうか。
ちょっと人間の力で耐えられる威力では無いですね。




