7ピース
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種を畑に宿して、日の火の炎に1本目の枝を灯す。そして、新しい命に名をつける。それがクオカの新しい命が実ったときに行われることだった。ナゲルはみんなの前で小さな命を抱きながら、優しく声を出した。
「セイ。この男をセイと呼ぼう」
セイがクオカの片の民になった。みんなは、4人が居なくなったことには触れることができなかった。誰かを責めたからと、4人が還ってくることはないとわかっていたから。
セイの種を触ったナゲルの身体や、畑の花になにもなかったことは、みんなの不安を和らげていたのかもしれない。
それからは、セイを育てるのにみんなが協力した。セイの欠実の花もしっかり育っていた。だが、セイが話しをしないまま、3才になろうとしていた。
セイがクオカで生きるようになった時から、長になってからしかできなかった畑の見守りをトルトが行い始めた。その間、サンとアナが眠った。ナゲルはセイを岩の近くの家に連れて行き眠らせていた。そして、サンの欠実が育つと、サンを起こしてトルトは眠りについた。ナゲルもその後に家に戻り眠っていたようだ。そして、ナゲルの実が育ったら、起きたセイをサンが連れてきて、アナとトルトが見守っている間に2人は枝を採りに行っていた。
日の火の炎が絶えることはなかった。そして、セイが3才になる1本目の枝を採りに行く時がきた。その枝を採りに行くのは、トルトとアナだった。ナゲルとサンは35才の眠りにつくのだ。
365本目の枝を日の火に灯したナゲルは、クオカの民の前で思いを伝えた。片の人々に世話になったこと。争いが無かったこと。4人が居なくなったこと。セイを皆が受け入れたこと。そして、育ってくれていること。
「トルト、日の火の炎を絶やすことなく、クオカ片を任せていいな」
「はい」
片のみんなも、もちろん頷いてくれた。
「アナ。トルトと一緒に長の家を支えていってくれ」
「わかってる」
小さな声だが、みんなにはアナの思いが伝わったようだ。
「大事な話がある」
ナゲルは最後の炎を見ながら、トルトを呼び止めた。その炎の前で長の家の4人と、セイがナゲルの胡座の上に座り集まった。他のみんなは自分たちの生活の場に戻っていて、近くには誰もいない。
「セイのことだ」
ゆっくりと話しを始めた。
「セイはクオカ片のこれまでを変えている子だ。あの4人が消えた時に家にいたことはお前らもわかっているだろう。」
「セイはクオカのみんなと何も変わらないだろ?」
「あぁ。良く育ってくれている。お前らにも迷惑をかけた。だがな、セイはお前らが思った以上に特別だ。この子は、私たちとは違うんだ」
2人がナゲルの顔をじっと見た。セイを1番可愛がったナゲルがセイを悪く言うことはない。なのに、急にこんな事を言い出したことで、不安がよぎった。
「ねぇ、私たちに何を言いたいか、わかんないよ」
アナは、はっきりと口に出して聞くしかなかった。ナゲルは2人に声を抑えて言った。
「セイは眠らない。眠れないのかもしれない」
「なにいってるんだ。そんなこと……」
「セイは眠らないんだ。だけどセイの欠実は育つ。私が眠っているときにな」
「トルト、アナ、これは本当だ。私も信じたくなかったが、ナゲルと考えを出し合って、確認している」
サンが2人を落ち着かせるよう言葉を挟み、ナゲルの話しを最後まで聞くよう促す。
「眠らないこと、セイの欠実が私の眠っているときに育つことは確実だ。大切なのは次だ。わかるだろ?」
「ナゲルの欠実の花が土に還って、ナゲルが眠らなくなったら、セイの欠実の花はどうやって育つんだよ」
「悪いが全くわからない。眠り、土に還ったら、長の家に2人の命と種が実るだろう。大変なのは本当にわかる。だが、セイも守ってやって欲しい。この子はクオカ片で生きているんだ。眠らないことと、私の眠りで欠実が育つことは皆は知らない方がいいと思っていた。クオカの民は変わる事を恐れている。セイを助けてやってくれ。これは、長としてこれまでクオカ片を支えた私の最後の願いだ」
後ろからセイを抱きしめながら、小さくなっていく声は、今まで見たどんなナゲルよりも弱々しかったが、そ、の姿から、言葉にできない力が伝わってきた。
「セイは長の家の者みたいなもんだ。大丈夫。オレが何とかする」
立ち上がり、拳をナゲルの方に出しながらハッキリと言葉にした。
「ナゲル、サン、心配しないで。セイも、新しい2つの命も、私がしっかり育てるから。トルトのことは心配だろうけど、大丈夫よ。放っておくから」
いつも見せてくれる笑顔と、両手を広げたアナの所に向かって走り出し、抱き上げられたセイ。少し寂しそうに微笑むナゲルとサン。アナに文句を言い放つトルトと、抱きかかえたセイに語りかけながら、横からの雑音を無視しているアナ。その2人を交互に見つめているセイを見て「大丈夫、だといいが」と同時に思っていた。
そして、2人は日の火の枝を取りに行かなくていい、畑の見守りもしないでいい、最後の眠りについた。
次もよろしくおねがいします。




