5ピース
ありがとうございます。
「ナゲル。起きて枝を炎やす時は32才になる。これまで以上に、クオカ片を思い、生きよう。その思いが欠実と炎に現れる」
「そうだな。では、私は欠実を見に行ってくる。サンはゆっくり眠るんだよ。トルト、お前もよく眠るんだぞ」
「わかってるよ」
「では、休ませてもらう。欠実が育ったら起こしてくれ。頼んだぞ」
ナゲルは家を出て行った。炎を通り過ぎ、畑に向かい、自分の欠実の花の横にある、サンと書かれた花を見る。
花は美しく咲いており、その中の小さな欠実が少しずつ大きくなっているのがわかる。
ナゲルは、他の花も見て回る。トルトの欠実もしっかり大きくなっている。1つ1つの花をしっかり見守りながら、畑を1周する。どの欠実もしっかり育ってくれているようだ。しかし、ナゲルの欠実は全く育っていない。
「もう少しだな」
その言葉をサンの欠実に向かって呟いたあと、ナゲルの欠実以外の育ちが止まった。もう1度畑を確認するため見回って、欠実が育っていることを確認すると、炎の横を通って家に向かった。そして、眠っているサンを優しく揺すり起こす。サンは起き上がり、綺麗な髪を整えながら立ちあがった。
「ナゲル、早く眠りなさい」
そう言うと、静かに家を出て行った。ナゲルは早々と寝床に向かい目を閉じた。
サンは、畑の前に行き、みんなの欠実を確認している。さっきまでは、全く育っていなかったナゲルの欠実も、少しずつ大きくなっている。そして、ナゲルの欠実がしっかり育ったことを確認したサンは家に戻り、ナゲルを起こした。
2人は炎の横を通り、畑を横目に歩き続ける。1軒の家を通り過ぎると、大きな岩の前に立った。
「1本目だ」
「1本目だな」
そう言い合って、大きな岩を上り始めた。岩を降りるとすぐに美しい木々が並んでいる。そして、その入口の枝を採りに行く。いつも同じ岩を登り、同じ木に枝を採りに行っているので、歩く所の土が回りに比べると少し固まっている。ナゲルが枝を採ると、2人は来た道を戻り、枝を炎の近くに置き片の人たちを起こしにいく。
これはナゲルが、片の長になった時から、サンはナゲルとアナが生きてきた、その時からずっと与えられた、片の長の家を受け継ぐ者たちの使命だった。
今採ってきた枝は、トルトが7才になる、1本目の枝だった。
「ナゲル、いつもありがとう」
「サン。あなたが居てくれて助かるわ」
それぞれの家に向かい、片の人を起こしていく。それぞれが目覚めると、畑に集まる。ナゲルは、炎から1番離れている家に向かう。小さなレイとノンがいる、その家の目覚めと畑に行くまでを、いつもナゲルが手伝っていた。「あの2人も、あの枝が炎えたら1才か」そう思いながら、早足で進んで行く。
もう家が見えてきた所あたりで、後ろから大きな足音が聞こえてくる。その足音と一緒に叫び声のような音がするので、ナゲルは素早く振り返っていた。
「ナゲル! ナゲル!」
トルトが大きく身体を動かして走ってきた。そして、荒い息遣いのまま膝に手をつき、必死に何かを伝えようとする。
「どうした。そんなに急いでいたら、伝わることも伝わらないだろ。落ち着け」
呼吸を整えながら顔を上げ、しっかりと伝えるため、落ち着こうとしている。しかし、その表情をみて、異変に気づく。
「何があった! 落ち着けよ。ゆっくり話してくれ」
同じセリフを繰り返していて、明らかに落ち着いていない2人は、ゆっくり息を吸ってお互いの顔を見合う。
「畑の花が。無くなってる。欠実が。なくなってるんだ。」
静かに伝えるべき事を伝える。しかし、どんなに落ち着こうとしても落ち着けない。トルトは話しながら、どんどん前に進んでしまっていて、ナゲルの胸の近くまで距離を詰めていた。
「レオ、レイ、カレ、ノンの花が、欠実がなくなってるんだ!」
ナゲルの胸のあたりで叫び終わると、身体から急に力が抜けたのか倒れそうになる。その両肩をしっかりと支え、もう1度、その顔を合わせる。
「なっ。何だと」
2人の目が合う。しっかりと聞き取れた。だが頭には上手く入ってこない。理解できない。理解しようとするが、全くできていない。
「トルト。欠実の花はな、35才になって眠りについた時に、あの畑に還るんだ。あの家では、26才のカレが1番生きている。小さな2人は、さっき私がとってきた枝を日の火の炎に入れて、1才になるんだぞ」
自分に言い聞かすよう、頭の中を整理しながら話していく。
トルトは、両手を真っ直ぐ下ろし、力強く拳を握りしめ、真っ直ぐだが、弱々しい目を向ける。
「サンと2人でさっきも欠実の確認をした。これから、枝を炎に入れてもクオカの民に35才になる者はいない。欠実の花が畑に還ることはないんだ。わかるか?」
言葉はない。
「もう1度、畑を見てこい。私は、レイとノンたちを連れて畑に向かうから」
そう言うと、カレの家に向かって走り出した。その後を、ナゲルが追いかけた。そして、あっという間に2人は家の前に着いた。
「カレ! レオ! 1本目の枝を炎やすぞ」
いつもの何倍もの声と、扉を叩く音。
「ナゲルさん。いつも助かるわ」
そう言ってカレが扉を開ける。最近歩き始めたレイとノンがナゲルの足めがけてフラフラしながら歩いてくる。両足にしがみつくと、愛くるしい顔で上を見上げてくれる。中には扉の前に立つナゲルを、目を擦りながら細目で見てくるレオがいる。
「さぁ。皆待っている。いこうか」
いつものナゲルの手伝いだ。可愛いレイとノンの危なっかしい後ろ姿を追いかけ畑に向かうのだ。
しかし、開かない扉。全く聞こえない声。
2人は何度も呼びかけるが反応が無い。
次もよろしくおねがいします。




