3ピース
ありがとうございます。
欠実がなくなったマス箱を家に置きに行くことをトルトの伝えると、枝を入れているカゴを日の火の炎の近くに置いていくことを提案される。言われたとおり、カゴを置いて家に戻ることにした。
「セイ、もうすぐみんなが日の火の場所に集まる。早く戻ってこいよ」
トルトの方を向き、小さく頭を下げて、早足で家に戻る。途中、ハナの家の横に住むミロとタロに会った。2人は小さなソウとシズを抱きかかえて話しをしていた。
「あ。セイくん、もうトルトさんたちは、日の火の所?」
歩きながら頷くと、2人はそれぞれの家に入って行った。欠実を採った花はそれぞれが元気に咲いていた。セイの花の色が相変わらず暗いのは、いつも通りだった。
家に着くと、棚の上にマス箱を片付け、肘までの服の上から、手首まである服に着替える。美しい小さな石が着いた首飾りをつけて、服の中に隠した。そして、再びトルトの家に向かうため、同じ道を歩いて行く。
日の火の炎には、みんなが集まっていた。炎の回りを囲むように座り、美しく揺れる炎を見つめていた。セイが着いたことにウツテが気づいたようで、トルトに伝えている。
「セイくん。ハナの髪の毛可愛いでしょ」
さっき見たときとほとんど変わってないが、軽く頷いて座るとハナもセイの横に座った。
「ねぇ、セイくん。ハナもう1回眠ったら5才だもんね」
ハナの方を見て、ゆっくり頷く。ハナはセイの相槌を確認しながら話しをしていく。
「トクは25才。ヨシとルナちゃんは15才」
「シロくんとリンちゃんは27才でコウちゃんは16才、ソウくんは1才だよね」
「タロくんが22才、アリちゃんとコタくんは12才。しずちゃんは2才だもんね」
「イトちゃんは15才。ウツテさんとアレちゃんは25才だっけ? 」
しっかりと頷く。
「……トルトさん、35才になっちゃうのか」
少し間が空いてハナがセイの顔をのぞき込む。セイは真っ直ぐ炎を見つめたまま動かない。ハナもゆっくりと炎の方に顔を向け、動きを止めた。あたりが静かになってくる。
「クオカの民よ。日の火の炎に目を向けよ」
トルトの低くて、落ち着きのある声がみんなの耳に入り、中心にある炎に目が集まる。
「これより、365本目の日の火を灯す。……ウツテ」
木のカゴに入っていた最後の一本の枝を、ウツテがトルトに手渡そうとする。アレ、イトもトルトの枝を受け取る姿をしっかりと見守っている。片のみんなもその姿を静かに、どこか寂しげに見守る。
トルトが枝を手に持ち、ゆっくりと日の火の炎に向かって歩く。ミロとリンが下を向いている姿に、アレが気づき顔を手で覆う。トクはまったく動くことなくトルトの右手にある枝から目を反らさない。ハナがセイの膝に手を置いてトルトを見守る。
「365本目だ」
そういって炎の中に枝が落とされた。誰も口を開かず、動くこともない。ただ、静かに炎を見つめていた。
「オレはもう1度眠ると35になる。小さな頃は、いつもサンに背負われていたのも覚えている。そんなオレも、こんなにでかく育つことができた。今ではウツテの方が、細いくせにでかくなっちまったな。このクオカ片のみんなには、昔からずっと世話になってきた。ナゲルが花になっちまった時、オレはまだ10才だった。みんなの畑に還った花たちにたくさんのことを教えてもらった。片の長として365本目をこの炎に灯させてもらうのは25回目だ」
みんなが炎を見ている。トルトの心地よい声がまた流れる。
「何もできなかったが、この日の火に枝を1本入れる度に、みんなと生きていることの大切さをしっかりと感じることができた」
ウツテの長い腕の中に、アレとイトが入って顔が見えなくなっている。ハナはトルトの頭よりもっと上を見ていて、セイの膝の上にある手には力が入ってきている。
「ひとつ、誇りに想うことがある。このクオカ片のみんなは、決して争うことがなかった。問題があっても、皆で考え合うことができたそのことを心から感謝する」
みんなが、先ほどよりも考え込むような顔つきになっている。
ウツテは真っ直ぐとトルトの方を見ていた。トルトもゆっくりと左に身体を向けながら、ウツテの方をみた。
「クオカの炎を絶やさぬよう、灯し続けてくれ。ウツテ。頼んだぞ」
みんながウツテの方に顔を向ける。アレとイトが下を向いたままウツテから離れていく。ウツテはゆっくり立ち上がり、真っ直ぐトルトを見る。足音がウツテに近づいてくる。そして大きな右手が、ウツテの左肩に乗る。
「頼んだぞ」
「この感じじゃぁ、頼まれたら断れないよねぇ。でもぉ、ぼくには無理だよぉ」
よろしくおねがいします。




