2ピース
ありがとうございます。
「セイくん、ありがとね」
小さな両手の上に「ハナ」と書かれたマスにある実を渡す。さっきセイが食べた実とは形は同じだが大きさも、色も全く違う実を口に入れてもぐもぐと噛んでいるハナ。そして家の中にいる3人にもセイが来たことを伝えに行く。
「いつも悪いな。助かる」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
セイより2回りは大きいトクと、同じ年のヨシとルナが家の中から出てくる。マス箱の、名前の確認し、3つの形は一緒だが大きさも色も違う実を、間違いの無いようにしっかり確認して、手渡ししていく。
トクは実を口に放り込み力強く噛みながら、セイの背中に見える枝を見つけて驚いている。
「そうか。最後の1本だったか。すっかり忘れてたぜ」
ヨシとルナも、口に実を入れ、しっかり噛みながらも目を見開いて嬉しそうな顔をしている。
「もう1回寝たらハナ、5才になるんだね」
セイはハナの目線に合うようにしゃがみ込み、頭の上で綺麗に丸く束ねられた髪を崩さないように優しく手をのせ、あまり上手くない笑顔を見せる。ハナもセイの表情と同じように素敵な笑顔でお返しをする。その2人を暖かく3人が見守っていた。
セイは残りの実をもって、もう2軒家を回る。そこでもセイが背負っている枝を見て喜び、セイの、欠実を渡し終えるとそれぞれが、身支度を始めていた。
マス箱の中の残り4つの実を確認して、3軒の家より少し高台に向かって歩き出す。岩を綺麗に並べた階段を上っていくとセイの両手を広げるよりも少し大きい位の箱の中で、小さな炎が揺れている。その横にはセイが背負っているカゴによく似たものが置いてあり、その中に1本の枝が入っている。炎と枝をしっかりと見つめたセイは、ゆっくりと目を閉じた。
そして、その炎の箱を通りすぎた先にある、建物に向かって歩いて行った。
「おー、セイ。ありがとう。イト、セイが欠実を持ってきてくれたと2人にも伝えてきてくれないか」
小さく首を動かし家の中に入っていく女の子。セイは扉の前に立つ背の高い細めの男に「トルト」とマス箱に書かれた場所から実を手渡す。トルトは大きな口の中に大きな欠実を放り込み、家の中を見ている。
セイはトルトに背を向けるようにして自分の生活している、このクオカ片を見下ろす。
トルトの家は、ここの集落では1番高いところに建っているので、少し下の炎が揺れているところも、ハナたちが住んでいる家も、セイの家もよく見える。そして大きな岩にこの集落が囲まれていること。その先には木々が続いていて、トルトの家の高さよりも高い木々が生えている先は見えないこと。見上げると、何もない空間が続いていることがわかる。
「いつか、あの向こうにいってみたかね」
1人で高い木々の向こう側に話しかけていると、イトともう2人が家から出てきた。
イトより少し成長していて、大人びた表情をしている女の子。綺麗な黒の髪を無理矢理後ろで束ねながら歩いてきている。その後に、トルトよりも高くて細い、見ているだけで暖かみのある男がセイに近づいてきた。
「セイさん。いつも欠実を持ってきてもらってありがとうございます。すいません、ちょっと身支度していて出てくるのが遅くなってしまって。ほら、イトもちゃんとお礼を言うのよ」
「アレちゃん、今まで、でっかい口開けてグースカ寝てたくせに」
「こら、なに言ってるの、イト」
顔を真っ赤にしてイトの口を閉じさせようとしているアレは、そんなことはなかったと必死に誤魔化している。
その2人のドタバタを見ていると、セイの横から細くて長い手が伸びてきて、動きを止めた。
マス箱からしっかり名前を確認して欠実を手渡す。
「セイくん、どぉもありがとぉね」
ゆっくりした言葉と動きで、ウツテは欠実を口に含む。そして、トルトの横に立ち、揺れる炎の箱を見下ろした。
「そっかぁ。日の火の枝が、あと1本だったんだねぇ」
「そうさ。だからセイが、また枝をとってきてくれてるんだよ」
「セイくんは、みんなができない事、なぁんでもできちゃってすごいよねぇ」
「ウツテ。オレも、もう35になる。わかってるな」
「はぁいはい。わかってますよぉ。ちゃぁんと僕も、考えてるからさぁ」
建物を降りた所にある、日の火の炎と、その横にあるカゴの中の1本の枝を優しい目で眺めているウツテ。それを心配そうに横目で見ているトルトだが、さっきまで視界に入っていたセイが居なくなっていたので後ろを振り向いた。セイは、いつもの下手くそな笑顔で、アレとイトに欠実を渡していた。アレは、もらった欠実よりも、もっと真っ赤な顔だ。
トルトはセイを含めた4人を見て、少し微笑みながら、また炎を眺め直した。
よろしくおねがいします。




