表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/25

1ピース

ありがとうございます。

目を開いた。いつもの慣れ親しんだ音が遠くからも近くからも聞こえてくる。小さな鳥の鳴き声や、飛び立つときに枝や葉が揺れる音。

 

深い椅子に座っていた男は、ゆっくりと立ちあがった。両手を挙げ、顔を天井に向けながら、細めのしっかりした両足を伸ばして欠伸をしている。気だるそうな表情をしている顔を、首から左右に数回横に振ると、前に進む。足取りは重たいが、目はしっかりと目標に向かっている。

胸の高さにある棚がある。その棚の上にある木の箱を両手で持ち上げて、つながっている紐を首に掛ける。腹のあたりで安定したのを確認しながら微調整をして手を離す。


箱には、人差し指から薬指の三本をくっつけた程のマス目があり、縦に4マスと横に5マスで区切られている。

1つ1つのマス目の底には、汚い文字でそれぞれ何かが書いてある。よく見ると何度か消したり書いたりしてあることがわかる。新しい箱でないが、大切に使われていることが良く分かる。

先ほどまでの冴えない表情は見えず、少し微笑みながらしっかりと固定された木箱を見つめ扉に向かって足を進めていく。

「あっ。そうやった」

寝床の近くに置いてある、男の膝上くらいまでの高さの木のカゴをしっかり背負ってから右手で「グチャ」と音のする扉を開ける。

「んー。いつもとほぼ変わらず、変な音の扉やね」

 そう、呟きながら、家の裏から大きな岩を乗り越えて、美しい木々の生えている方に向かって歩いて行った。








 歩きながら、周囲を見渡し手に届く高さの枝を折って、葉を全部ちぎって背中のカゴに入れていく。高さはバラバラの木だが、種類は同じで、枝も似たように生えてきている。そのため毎回枝を集めるときは同じルートに沿って同じ木の枝を折っていくことでカゴの中をいつも通りの数にすることができる。

 木々の間を抜けると先ほど乗り越えた岩あたりに出る。もちろんカゴの中には、同じくらいの長さの枝がしっかり集まっている。

「欠実を持っていくとき一緒に持っていくとよかね」

 大きな岩を再び乗り越えて、家の前に着くと背中のカゴをゆっくりと下ろして、胸の前にあるマス箱の安定をもう一度確かめて、静かに歩き出した。


「枝を集めるときは、この箱はいらなかったな」と思いながら進んで行くと、生活がしやすくなるための工夫がされてある大きめの家が3軒見えてきた。家は向かい合うように建っていて、その真ん中あたりに小さな畑がある。

そこには17の花が咲いていた。大きさや色、葉の形はバラバラでその1つの花の前にはそれぞれ文字が書いてある。花の前に座り、その文字がマス箱で隠れないよう、上半身だけを横に向けて、花の中に見える、不思議な色をした実を優しく両手で包む。

花の前に書いてある「ハナ」の文字を確認して、マス箱の「ハナ」と書かれている場所に、手に持っている実をゆっくりと置く。そうやって、花の中にある実をゆっくりと手に取っては、文字をしっかり確認しながらマス箱の中に置いていく。

16の実をマス箱の中に置いて、次のハナの前に立つ。最後の花は他の花よりも色が薄く、実の色も重たい。「セイ」と書かれた文字を見てその実に手を伸ばす。親指と人差し指でつまむようにとり、そのまま口の中に放り込む。口の中で数回噛むと、飲み込めたのかセイはゆっくりと3軒の家に向かって歩いて行く。


よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ