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22ピース

ありがとうございます。

ロシマでは、生活している家の表や裏に自分の欠実が植えてある。目覚めて、それを採って口入れると、みんなが、日の火の場所に集まってくる。168人のロシマの人が集まるのを確認したリベラとブリテは、グレトに声を掛けに行く。アーツが整えられた木を1本グレトに手渡す。いつも大きな声で話して、笑ったりしている4人が、ロシマの長としての役割をしっかり果たしているように見えた。

「225本目じゃ」

 整えられた木が、日の火の中で灯された。みんなが炎を見ている。しばらくするとグレトが森の方に歩き始めた。ブリテもグレトを見て動き出した。その後を森での役割がある、片の人たちが追いかける。日の火の場所から13人が見えなくなったと思ったら、リベラがみんなを集めていた。

「私たちも、行くですの。今日セイちゃんは培いの部屋に行くですの。アーツ、一緒にお願いですの」

「わかったぞー。セイ、行こうか」

 残っていた大人と子どもが、手をつなぎ合ったり、抱き上げられたりしながらリベラを先頭に片を出て、部屋に向かっていく。セイはアーツと一緒に片に誰も残っていない事を確認してから培いの部屋に向かった。

「セイ! ウチも培いの部屋に行くからな」

 前を歩いていたエスが来てセイの横に並んだ。アーツがエスを見て喜び3人で部屋に向かって歩く。エスに抱かれていたルイはセイに向かって手を伸ばし、結局セイが生きる部屋まで連れて行く事になった。

「あら。ルイちゃん、またセイちゃんに抱っこされているですの。良かったですの。でもセイちゃんは培いに部屋に行く約束があるから、また帰るときに抱っこしてもらうですの」

 リベラがルイに優しく伝えるが、セイの身体から離れようとしないルイ。

「あらあら、ですの」

 生きる部屋の入口にセイが立っているとまた、子どもたちが近くによって来ていた。リベラはルイに伝えながら周りを見た。セイは相変わらず何も言わないで子どもたちを見ていた。

「セイちゃん。培いの部屋には行かないで、生きる部屋に居てもいいですの?」

「え? 僕は培いの部屋に行くとよ。あの部屋で何をしてるか知りたかとよ」

「でも、ルイちゃんも、他の子どもも……」

 リベラが後ろを見たり、ルイを見たりしている。

「ルイ、僕は培いの部屋に行ってくるとよ。だから、ルイはこの部屋で待っててくれんやか? エスと一緒にまたこの部屋に戻ってくるけんね」

 いつもの話し方でセイはルイに伝えていた。その声は、近づいてきていた子どもたちにも聞こえたようだった。その伝える姿と、セイの目にリベラは強く感じるものがあった。

 セイが伝え終わると、ルイがリベラの方を向いて手を伸ばしていた。セイを見ていたリベラは気づくのが遅れてしまい、すぐにルイの顔を見た。その顔に笑顔は見られないが、この小さな命は、伝えられたことを理解し、セイから離れることを納得したかのような顔をしていた。そして、リベラが手を出すと、その胸に飛び込んでいた。

「ルイ。みんなも、また後でやね」

 生きる部屋を出たら、慣れてきた橋をすたすたと渡り、すぐに培いの部屋に向かった。

 その後ろ姿を見つめるルイと、リベラは静かに扉を閉めて、部屋に入っていった。

 

 培いの部屋に近づくと、大きな音や、声が飛び交っていた。扉を開けるとそこにはたくさんの木が並べられていて、その木の皮を石の刃で剥がしていたり、セイがロシマの森で見た姿がこの培いの部屋で行われていた。

「セイ。遅かったじゃないか。ルイが離れなかったかい?」

  笑いながらセイの近くにきたエスにセイはすぐに聞いていた。

「ここでは何をしてるとね? 森でしてたことを、ここでもしてるとね?」

「そうさ。培いの部屋では、森に行ってやることを学ぶ場所なんだ」

「凄か」

 エスは「好きに見ていきな」と言いながら、石の刃で皮を剥いでいる女の子に声を掛けに行った。セイは新しい物を見つけるため、周りを良く見ながら歩いていた。

「セイくん。何でここにいるの?」

 木がたくさん並べられていて、その木に向かって真剣に手を動かしている子どもたち。細くて平らになっている道具を何本か持っていた。その細やかな動きを見ていたら、後ろから声がした。

「森で木に穴を開けてた人?」

「あら。覚えてくれてたの? 嬉しい。セイくんこの道具はまだ使ってないでしょ? どう? ちょっと触ってみないかしら?」

 優しい声でセイを座れる場所に連れていくと、さっきセイが見ていた細い平らな石をテーブルの上に置いた。そして、セイの両手を広げた程の大きさの木を持ってきた。

「これで、何をするとね? えっと……」

「オンよ。名前は言ってなかったものね。木の皮を剥いだあとは、その木を使う大きさに切るのよ。そして、この石のいしのみを使って木に溝を入れるの。周りがしていることより細かいけど、この溝があるから木と木を組み立てることができるようになる、大事な役目なのよ」

 そう言いながら、セイと座っている距離を縮めてきたオンが、テーブルから右手で石の深を掴んでセイの左手に渡そうとしている。セイの右側に座っているオンは、セイの身体を覆うように手を伸ばしていた。セイは「この石の深は左手に持つのかな」と座ってオンの動きを見ていた。すると、急にオンの身体がセイから離れたと思ったら、右手に石の深をのせられていた。

「セイ。石の深よりも先に、木を必要な大きさに切る、石のいしのこを見てからの方が、わかりやすいんじゃないか?」

 セイと、一緒に座っていたオンの間に後ろから立ったまま間に入って、エスが話しかけてきた。

「あれ? エスは石の刃を使う所にいたやろ?」

「そうよ。エスちゃん。セイくんは今から、私と石の深を使って、綺麗な溝を掘っていくのよ」

 2人の間に入ってきたエスの身体を押し戻しながら、オンが「ねぇー」とセイに同意を求めている。

「セイ。せっかく木を倒して、皮を剥いでって、順番通りに来たんだろ。それなら、ここの前に木を切るところを見てからの方がいいんじゃないか?」

 押されながらもセイに訴えるエスは、どこかいつもより必死に見えた。その横で「順番なんて気にしなくて良いのよ」と言っているがエスが身を乗り出しているから、セイからはオンの顔が見えないでいた。そのせいか、エスの言葉がしっかり耳に入り、先に知りたいことができたセイは立ちあがった。

「そうやね。木が切られるから、ここで溝を掘れるとなら、順番通りにやっていくのがよかね」

「そうだろ。さ、こっちだ」

「セイくーん」

オンが、座ったまま手を伸ばしてセイを掴もうとする。その手を払いのけながら、エスがセイの背中を押して進んで行った。オンは「セイくん、何で行っちゃうのよ」と言いながら、座っている椅子に片手を着いたまま、届かなかったセイの背中に手を伸ばして固まっていた。

「オン。セイは木を切るところが終わったら、ここに戻ってくるだろ。ほら、培いの部屋には石の深を使えるようになりたい人がたくさんいるんだから、そいつらの方を見てやってくれないか」

 後ろに立った男の顔を見なくても誰かわかっていたオンは、伸ばしていた手を戻して、腕を組み、さっきまでの可愛らしい声が嘘だったかのように、早口で答えていた。

「そうね。ガレと2人で石の深の役割を任せられているけど、早くもう1人、一緒にやれる人が欲しいものね。わかったわ」

 ガレが座っていたオンに手を出したが、その手が握り替えされることはなく、そのまま何も言わず歩き出した。ガレは、そのままオンが歩いて行く方向について行く。途中でガレは、真剣に石の深を使って溝を掘っている少年に優しく声を掛けて、足を止めていた。オンも同じように、木の溝に向き合っている女の子の手に自分の手を添えながら声を掛けるため立ち止まり、綺麗な手を使って女の子の手伝いをしていた。自分たちができることはロシマの新しい役割を持つ人を育てることだと、2人はしっかり理解していた。


「セイ。ここで、うちらが皮を剥いだ木を必要な形にするために切る所だ。ここでは石のいしのこという道具を使うんだが、お。調度よかった。ヤル。セイに石の固の使い方教えてやってくれないかい?」

 セイとエスの前に歩いてきた男はセイと同じ位の高さだが、腕がセイの2倍程太く、全身がとても逞しい身体つきをしていた。

「うちが教えても良いんだけど、石の刃の場所で誰かが叫んでてうるさいだろ。うちも石の固を教えるより石の刃を教える方が楽だし、ヤルは石の固の扱いなら今のロシマで1番上手いはずさ」

 セイがこの部屋に入ってきたあたりでアーツが「エスさーん」と何度も叫んでいるのが聞こえてきた。その声はここまで聞こえる大きさだから、とても大きな声だろう。セイはエスに「わかった」と伝えると、ヤルの方を向いた。ヤルの手には片手で持ちやすい細さにされ、その先から太くなった平らな石には、石の端に均等な幅で何段も細かい段がついている。その細かい段が石の先までついていた。ヤルが目の前にあった長い木に石の固の先を合わせた、と思ったら軽やかに引いたり押したりして石の固を動かしていった。その足下には細かい木の粉が落ちていく。しばらくすると、木が切っていた所から落ちて、1本の長い木が2本になっていた。

「ん」

 ヤルがセイに。切れた方の木を見せてくれた。その切られた表面は平らになっていて、地面に置いても揺れることがなかった。

「凄か」

 セイが、他でも石の固を引いたり押したりしている姿に見とれているとヤルがセイの肩を叩いた。

「イタっ。あ。やってもいいとね?」

 太い腕が軽々と石の固をセイに渡してくれた。セイは、細くなっている所を強めに握る。片手で持とうとしたが、石の固の重さをしっかり感じたセイは、両手を使って石の固を安定させた。

「ん?」

 ヤルが目の前にあった木を指さした。ヤルがさっき切った所から少し離れた所に石の固の先を合わせて、ゆっくり引いて、ゆっくり押してと繰り返した。次第に動きに慣れてきたセイは石の固の動きを早めていった。しばらくセイは石の固を動かし続けていたが、なかなか木が切れない。横から見ていたヤルが親指と人差し指の間を少しだけ開いて片目を閉じてセイに訴えかけてくれた。セイはもう少しと、力を込めて石の固を動かしていた。足下にはたくさんの木の粉が落ちていた。

「ん」

 セイの足下に木が切れて落ちていた。セイは石の固を地面に置いて木を両手で持ち上げた。表面はヤルが切った物とは違ってガタガタになっていたが、セイは切れた木を見てとても嬉しくなっていた。その後ろでヤルは腕を組んで頷いて喜んでくれていた。

 その後も、セイは何度も石の固を使って木を切っていた。ヤルもセイの石の固の扱いが上手くなってきたことを感じたので丸い木を切るだけではなく、セイの腕の長さ程で、片手で握れる太さの角張った形にしてみるよう指示していた。セイはその形に木を切るため、何度も石の固を動かしていた。セイの耳に石の固が木を削っている音しか聞こえなくなってしまい、周りに人が集まってきていることに気づかなかった。

「できたよ! ヤル! どうね?」

 セイが大声を出しながら振り向き、ヤルに切りそろえた木を見せようとした。そこにはヤルが立っている後ろに、エス、アーツ、オン、ガレが座っていた。

「ん」

 ヤルの右手の親指だけが真っ直ぐ伸びてセイの方に向いていた。

「上出来だってさ」

 机に手をついて顔を支えたままエスがセイに言った。ヤルも腕を組んで頷いていた。

「もぉー。セイくんたら、私の所に戻ってくるって言ったのに」

 オンの手には石の深が持たれていた。セイが手に持っていた木を「ちょっと失礼」といって自分の手に取ると、机の上に置いて石の深を使って、溝を掘っていた。直ぐに顔を上げるとセイに木を返してくれた。

「こうやって、溝を掘る練習を、セイくんとやりたかったのにな」

 木の何処を掘ったのかと見ていたら、セイから1番離れている端の方に「セイ」と小さく名前が彫られていた。セイはその木をしっかりと握りしめて、みんなと一緒に培いの部屋を出た。セイたちが部屋を出るときには部屋の中には誰も居なくなっていた。

 セイとアーツとエスは生きる部屋に向かって歩いていた。オンとガレは育ちの部屋に、ヤレは片に戻っていった。オンがセイに一緒に育ちの部屋に行こうとしていたが、ルイとの朝のやり取りを伝えると、オンも何も言えなくなってしまい、ガレと一緒に寂しそうに歩いて行った。

「セイは、クオカでも、小さな子どもと一緒に生きていたのかい?」

「いや、小さい子どもはクオカにも居たけど、一緒に生きてはいなかったとよ」

 1人で生きていたと言っても、上手く伝えることができないと思ったセイはエスにこう答えていた。そして、3人は生きる部屋の橋を渡って部屋の扉を開けた。

「やっときたですの。エスさん、ルイちゃんが早く早くって扉の前まで何度も動いてですね」

 エスがルイを抱こうと手を伸ばすと、ルイの身体がセイの方に向いていた。エスは音がするように息を吐きながら頭に手を当てて「いいかい?」と聞いた。セイが何も言わずに出した手に、ルイがリベラの腕から飛ぶように動き、抱かれにいった。

「セイさんが戻ってくるのをちゃんと待ってたんですの。セイさんには子どもたちが、なぜか寄っていくですの」

「ルイはセイが気に入ってるんだよ。いいことじゃないか」

「そうですの。でも、今までこんなに強く気持ちを出すことはなかったですの。セイさんに何かあるですの?」

「僕は、いつも変わらんよ」

「ルイ。一緒に生きてる、うちよりもセイに抱かれてるのがいいのかい?」

 顔を見ようとするが、ルイはセイの胸に顔を埋めて出てこない。エスは何度もルイに声を掛けるが反応が無い。そのルイの姿をみて3人が笑っていると、セイと名前の彫ってある木を持って前を歩いていたアーツが「早く行こう」と良いながら、ロシマに向かって走っていた。3人とルイはゆっくりと歩いてロシマに向かった。


次もよろしくおねがいします。

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