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19ピース

ありがとうございます。

「僕、セイって言います。箱の中から声が聞こえるから、中に行ってみたいんやけど、この地面に着いていない木の道を歩くのが不安で……」

 男は近づいてきて大きな身体を倒しながら、セイの顔を見て首を傾げる。

「お前。初めて見る顔だよな?」

「はい。僕はクオカ片って所で生きてたとよ。さっき、ここに送られてきて」

「おい。待ってくれよ。お前はどうやってきたんだよ。何しにこのロシマに来たんだよ?」

 男はセイからパッと離れて、少しずつ声を荒げながら聞いてきた。

「僕は片と片を結ぶために、このロシマ片? に来たと。」

 男はセイが話すことを理解できなかったが、全く焦っていないセイの話しを聞いた。

「このロシマの長に会って、涙っていう思いがたくさん詰まっているものを流してもらったら、このロシマ片も違う片と結ばれることができるとよ」

 セイは、自分のやることを素直に話した。もちろん、わかってもらえるとは思っていなかったが、ここでわかってもらえるように説明をし続けることが大事だと感じていた。そして、もう1つ大事なことがあった。セイは自分がわからないことをわかりたかった。

「僕は、このロシマのことがもっと知りたかと。よかったら、教えてくれんやか?」

 男はセイの言葉を聞きながら「こいつが言ってることは全くわからない。でも、このままあそこに入られるのは良くないはずだ」と考えていた。セイは男が固まっていることに気づき話すのをやめて待っていた。

「わかった。ロシマの片に行こう。そこで、もう1度話しをするんだよ。長もそこに居る」

 そうして、2人は木の箱と反対の方向に歩き始める。すぐに「ねぇ。あの木の道の奥にある箱はなんね?」と聞くが答えてくれなかった。そのまま歩く男に何度も聞いていたが、男が急に止まって振り向いた。

「オレはロシマの長の家で生きているブリテだよ。お前のことがまだ何もわからないから、その答えを教えることができない。頼むから、静かに着いてきてくれよ」

 そう言った男はまた、歩き出した。

「じゃあ、僕のことわかってくれたら、教えてくれるとやんね? 僕はクオカって所で生きてたとよ。クオカってところは、17人の片で「ナウト」っていう楽しみを見つけたすごい片とよ。あっ。僕こう見えて、28才で」

 ブリテは立ち止まり、振り向いた。

「ぷっ。お前、28才? 何を言ってるんだよ。まだ子どもみたいな顔してるじゃないかよ。身体だって細くて小さいしよ」

 そういいながら、セイを見て笑っていた。セイは初めて自分が28才と言って笑われた。「見た目は関係なかとよ」と後ろから声を上げるが「はいはい、28才で子どもみたいな顔した、クオカから来たセイくん」と前を向いたまま笑われて、顔を赤らめてしまった。

 右に左に上ったり下がったりと、しばらく歩いていると、前に見えてきた集落を見て、セイは驚き足を止めた。

「こんなにたくさん。凄かね……」

 とても広い場所に、たくさんの家が並んでいた。

「あれが、オレたちのロシマだ。セイのクオカは17人って言ってたな。このロシマには168人が生きているよ」

 そう言ったブリテは「さ、行こう」と言ってセイをロシマに案内していった。セイは初めてクオカ以外の片に入ることをとても楽しみにしていた。



「やっぱり、素直が1番だわ。セイくんの顔を見て笑ったあの男はイヤな奴だけど、すんなりロシマ片に入れるみたいね。この片ではセイくん何を見つけて戻ってくるのかしらね。楽しみだわ-。……そういえば、あの女がどうなったか気にな、らないか。まぁ大丈夫でしょうね。もうちょっとだけ、あたしの可愛いセイくんを見守るとしますかね」



 ロシマ片の中に入るとたくさんの男が、木を運んでどこかに持っていく姿が目に入った。「あの木はどうしたの?」と聞くが「まずは、長に会ってから、それから教えてやるよ」そう言ってたくさんの家が並ぶ中を歩いて行く。男たちが「なんだあいつは」と言っていたそうだが、セイは周りに見たこと無いものがたくさんあり、それを見ることに必死で聞こえていなかった。


「グレト。ちょっといいか? グレトに見てもらいたいんだよ」

 片に入って、1番奥にある大きな家の中に入ってブリテが声をかけていた。「大きな家だ。長はグレトっていうんだ」そう思いながら、その男が家から出てくるのを待った。

「ブリテ。早かったな。あっちを見に行くと言ってたじゃろ」

 そう言って出てきた男は大きなブリテよりも、もっと大きな身体をした男だった。この男にならこの家の大きさも納得できた。

「中を見に行こうとしたら、こいつを見つけてよ。ちょっと話しを聞いてやってくれよ」

「こいつ? ん? 何だ?」

 グレトは額に水平に当てた右手の下の目で周囲を見回すが「こいつ」と言うのがみえてないようだ。

「こっち、こっちだよ」

 ブリテがグレトの目の前で手を振りながら、その手を少しずつ下げていくとグレトの目線が下がってセイの顔が見えてきた。

「おいおい。灯した後は培い(つちかい)の部屋じゃろが。居なくなると、みんなが心配するじゃろうに」

 セイの顔を見るなり、そう言ってグレトは右手でセイの首の後ろを掴んで持ち上げた。「仕方ない。わしが連れて行くかの」と言いながら歩こうとした。

「待ってくれよ、グレト。よーくそいつの顔見てくれよ」

 持ち上げられたセイはグレトの方に顔を向けられる。とりあえずセイは微笑んでいた。

「んー、この顔と身体の大きさは育ちの部屋ではないじゃろう。やはり培いの部屋じゃ」

 また、歩き出そうとするグレトに「はぁ」と頭を抱えた。

「違うだろうよ。そいつはロシマの子どもじゃないんだよ」

 もう1度グレトはセイの顔を見るため、自分の顔の近くに持ち上げた。しばらく見つめ合っていたが、セイの身体はゆっくりと下がり始めた。

「お前、誰じゃ?」

 やっと、地面に下ろされたセイは、さっとブリテの後ろに移動した。特に何も考えていない動きだったが、こうした方が良いと身体が勝手に動いていた。

「ほら、ロシマの長に会わせてやったよ。もうわかってるだろうが、グレトだよ」

 そう言ってセイを自分の前に押し出す。「あとはお前がどうにかするんだよ」と2歩ほど後ろに下がって行った。

大きな身体は、セイに向かって正面に立っている。さっき、首を捕まれて持ち上げられていたときは、ちょっと低いがおっとりとした声を出していたが、セイがロシマの人で無いとわかってからか、表情が変わった。セイは、その迫力に両手を身体の横にピッタリつけて、足を閉じて固まってしまった。

「お前は、誰じゃ?」

 やはり、さっきの声とは違った。セイは身体は固まったままだが、しっかりと口を大きく動かして答え始めた。

「僕はセイです」

「どこから来た?」

「クオカという17人の片からです」

「17人? ロシマは168人じゃ」

「はい。大きな集落に驚きました」

「そうじゃろう。それで、そのクオカという所から何しにきたのじゃ?」

「僕は片と片を昔みたいに結ぶためにこのロシマに来ました」

「ほう。セイとやら。その結ぶとはどうしたらいいのじゃ」

「この片の長の涙と欠実を1つもらうことで結ぶことができます」

「なんじゃと? 欠実を、もらうじゃと?」

 セイはグレトの顔が変わったのがわかったので、声を出せずにいた。身体はずっと固まったままだ。

「わかったのじゃ」

「ありがとうございま……えっ」

「協力しよう。セイ。わしはどうしたらいいのじゃ?」

「えっ? いいと?」

「はぁー。まぁこうなると思ってたよ」

 後ろで、またブリテが右手で頭を抱えていた。グレトはセイの驚いた顔を見ながら大きな口を開けて「がははははは」と笑っていた。セイはグレトの大きな笑い声につられて、一緒に大きな声を出して笑っていた。声を出して笑ったのは初めてだった。


次もよろしくおねがいします。


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