18ピース
ありがとうございます。
「糸の光はその片の欠実を持ってないと光ることはないのに。ま、さっきのセイくんの焦ったお話なら、前後バラバラってこともあるわね。それにしても、ウツテって子が、なかなかおもしろくしてくれたわね。さすがセイくんと一緒に生きてきた片の長だわ。今からクオカ片をどう変えていってくれるのかしら。楽しみだわ」
セイが眠ったことを確認したあまみは、いつものテーブルと大きめの椅子を出して、暖かいお茶を飲みながら、セイがクオカで触った糸の光よりも、2周りは大きな糸の光をだして短く呟くと中に映った何かを見だした。
「やはり、私以外にも軸層を結ぶ者がいたか。あまみサンは何人いるかは確かにしなかったが、楽しみではあるな。いずれあえるのならば、私は私のやるべきことをやるだけだ」
そう言って、新しい片に着いた女は両足で着地して周りを見渡す。そしてすぐに歩き出した。森の中を歩いて行くと簡単に抜けることができた。そこには家が2列に真っ直ぐ並んでいて、その間をこの片の人々が行き来しているようだ。その中には、大きな岩を削ったものや、木を倒したものを運んでいる人が多く見えた。並んでいる家の裏側には、大きな岩があるのだが、森から抜けてきた女の目の前に岩はない。その奥の方にはたくさんの人が集まっているのが見える。女はそこに向かって歩く。途中ですれ違った子どもたちに「誰?」「知らないよ」などと言われていたが、全く気にせず進んで行く。
「おい、待つのだ。このナガワの片では見たことのない顔。なぜ、ここに居る?」
そう言って前から近づいてきた小柄な男の後ろには、たくさんの男がいた。女は立ち止まって片膝を着いて顔を地面に向けた。
「私は、この片の長に用がある。どこにいるか教えてくれないだろうか」
そう言うと、近くにいた男たちや、家の中から出てきた片の人々が「なんなんだ」「見たこと無いな」「長に会いたいって」など、騒ぎ始めた。「ウキョウ片ではほとんどの人が私の顔を知ってくれていたが、このナガワ片という場所では私は認められない者。まずはここを上手くやらないと次には進めないか」顔を下げたまま周りの声に耳を傾けるが全く落ち着く様子がない。次第に人が集まってきた。顔を上げ、静かに立ちあがり先ほど話しかけてきた小柄な男の方を見る。
「騒ぎになってしまい申し訳ない。このままでは、片の者の生活が乱される。私は1度この片から離れる。よかったらこのナガワの長に伝えていてくれないか。私はエン。ウキョウと言う片から来た。話しがしたいのだ。私はこの真っ直ぐな道を歩き、そのまま少し行った木がある所で待つと。よろしく頼む」
そう言って後ろを向いて歩き出す。集まってきていた者たちは、エンが歩く道を空けるよう横に分かれていく。その後ろ姿を、小柄な男が見ていたがエンは振り向くことは無かった。
エンは、森に向かって歩き、最初の木の前で横になった。上を見て「どうするか」と考えた。「まずは、このナガワの片の者たちと関わることができないことには長のことも、欠実のことも話しが進まない。しかし、どう伝えるか。神に送られた。片を結ぶために。そんなことをわかってくれるはずはないだろうし」横になっているエンは、上に向かって考えを言葉にしているが全くいい考えが浮かばない。落ち着いて目を閉じてこれからのことを整理しようとしていた。
「あら、あの無愛想なできる女も、なかなか困ってるわねー。まぁそれでも上手くやってくるんでしょうけどね」
そう言って、温かいお茶を飲もうとコップを握るために手を伸ばそうとしたときセイが起きる気配を感じた。あまみは慌てて、大きな糸の光とテーブルと椅子、コップを消してセイの近くに飛んでいった。
「あら、セイくん良く眠れたみたいね。おはよう」
少し、焦っている様子は、セイには伝わっていなかった。「おはよう」と言いながらゆっくり起き上がるセイは、2回目の眠りから目覚めた感覚を喜んでいた。
「あまみちゃん、僕は次はどこの片に行くとね?」
「それは、セイくんが行って調べて欲しいの。大丈夫かしら?」
セイは「わかった」と言って、あまみに静かに頭を向けた。その頭を触りながら「気をつけてね。何かあったらすぐにあたしを呼んでいいんだからね」と言ってセイの身体が光ったと思ったら、軸層から消えていた。
「エンは何とかするだろうから、いいとして、セイくんは心配だからちゃんと見ておかなくちゃ」
テーブルと椅子を出して、飲もうとしたコップの中のお茶が冷えてきていたので温かい物を入れ直し、大きな糸の光を出してセイの行く先を見ることにした。
軸層と新しい片を結んでいる糸の中を通っている。「新しい片では、どんなことがあるとやか?」セイは初めて行く場所に期待をしながら、慣れた糸の中で横になって片に着くことを待っていた。
「お。ついたね」
横になったまま、地面に落とされたセイは、すぐに起き上がると周りに何もないことに驚いた。身体にはたくさん何かの粉がついていた。身体を叩いたりして落とし、遠くを見ながら1周してみたが、何も見えない。今立っている地面にある粉がずっと続いている。
「森に出るって思とったけど違ったとやね」
そう言いながら、地面の粉を触ると、とてもサラサラしていて気持ちがいい。何度か手の中にさらさらの粉を入れて地面に落とした。手から粉を落としながらもう1度周りを見て「まずは、片の集落をみつけんとね」と歩き始めた。
地面がずっと続いている。セイは上下左右を見ながら、進んで行くが何も見あたらない。集落どころか、木も岩も見あたらない中、あるき続けた。セイは歩きながらこの地面が上がったり下がったりしていることに気づいた。そのまま、歩いていくと、出した足が見えない何かにあたって止まる。その先に手を出してみるとその手も止まってしまう。
「この片はここから違う片と結ばれるとやね。ということは」
見えない壁を背中に着けて、まっすぐ歩き始めた。
「これで、新しい片の集落につくやかね」
さっき歩いてきた道とは違うような気がしたが、この地面も上がったり下がったりがあると思いながら、セイは歩き続けた。
そのまま進んで行くと、小さな子どもたちの声が聞こえてきた。その声のする方に歩いて行くと、今いる地面から下っていった場所に木で出来た大きな家のような箱があった。声はその箱の中から聞こえてきている。入口を探そうと箱の周りを歩いてみたが、1周しても入るところが見あたらない。しかも、同じような大きな木の箱が2つも隣に並んでいた。その2つにも入口がないため、セイは1度下ってきた道とは違う道で、坂道を上ってみる。上っている途中からセイの目に、大きな箱に続く木の道が見えてきた。木の道は同じ長さになっている木を、横並びに揃えてあり、1つ1つをしっかり固定させてあった。その並べてある木の道をさっきの木の箱の中に通じるようにつないでいる。木の道は地面から離れているがその両端を、所々で縦に長い木で支えてあり、倒れないようにしてあった。セイにはこれが何か全くわからなかった。この木の箱も、道も初めて見る物だったので、これが何なのか知りたくなった。
しかし、箱の中から声が聞こえるが見えるところに人が居ない。この木の道を渡れば、箱の中に行けるのではと思ったが、地面に着いていない道を渡ることなどしたことなかったセイは足を進めることができなかった。
「おい。お前なにしてんだよ?」
行こうとしながら前に進めない、変な男に声を掛けてきたのは、体格が良くて、セイの身体に比べると肌が黒くなっている男だった。
次もよろしくおねがいします。




