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11ピース

ありがとうございます。

前に進みながら、自分の腹の前にある箱に気づいた。「おかしいな。いつも棚の上においているのに」不思議に思いながら、中を見て何も入ってない事を確認する。


「こんにちは。あたしは神よ」



そして、扉に向かって歩き出そうとする。「今日は2本目だったな」そう言って扉に手を「ちょっと! あたしは神よ。あなたの生活の習慣は神のあいさつよりも大切なのね。わかったわ。落ち着くわ」掛けようとしたが「あれ? 扉がなかよ」そういってあたりを見回していた。






 セイは自分の周りをやっと確認できていた。いつもやっていた身支度は、なにも考えないで身体が動いてしまっていたから。そして、今自分がいる場所が家ではないことに気づいた。

「なんね、ここは。何処にも壁がないし、地面もないし。おかしかね」

「やっと、聞こえたわね。いい、セイくん。あたしは神よ」

 セイの前には小さな女の子が立っていた。オレンジと黒い髪が長く伸びていて、綺麗な目がこっちを下から見上げていた。そして、セイにの方に白い長袖のトレーナーから少しだけ出てきた白くて細い右手を伸ばし、人差し指を向けた。


「セイくん。わかった? あたしは神よ」


 ちょっと出ている右足をもうちょっと前に出したので、少し近づいた女の子は、しっかりとセイの顔を見上げている。右手はそのままだ。


「聞こえた? わかったの?」


 綺麗な目に見とれていた。「ハナよりはすこし年上かな? でも、声は大人、というか偉そうだな」何て考えていたら

「年齢は言えないわ。でも5才じゃないわ。偉そうではなくて、偉いのよ。神ですから」

「あれ。僕声出してないとけど。あっ」

 言いながら、口を閉じた。

「なに言ってるの。わたしは神よ。思っていることもわかるし、あなたが話していることもわかるの。というか、わかってるから、セイをこの場所に連れてきたのよ」


 セイは、「この子は何をいっているんだ?」そう思い女の子に確認しようとした。ここは何処か。自分はどうしてここにいるのか。トルトは? クオカはどうなったのか。


「あたしが言ってることはおかしくないのよ。わからないセイくんがいけないの。ここは軸層じくそう。セイくんはあたしのお手伝いをして欲しいからここに来ているの。トルトって人のこと今は、わからないわ。調べておくわね。わかったら答えるわね。クオカはセイが生活していたクオカのことでいいかしら? 」

「あ、はい、そう」

 この女の子は本当に僕のことをわかっている。そう信じたセイはその女の子の話にしっかり耳を傾ける。

「あっ、あたしは、曖昧な神。神々からは、あまみって呼ばれてる」

こんな不思議な場所に連れてこられて、わかるはずのないことを突きつけられているのに、自分の言葉を聞いてわかろうとすることに、必死になっているセイがとても素敵に見えた。

「あ、あまみ。3つの文字は長の名前やね」

 真剣に、そして思っていることを素直にあまみに打ち出す。「かわいい」不覚にもそう感じていた。

「セイくん。今まで生きてきた所ではそうかもしれないわ。でもね、今からセイくんに手伝ってもらうことは、今までのセイくんじゃわからないことばっかりなの。何でも聞いてくれていいわ。わかることはちゃんと答えるから。名前で長とか偉いとかの決まりはないわ。でもあたしは、神だから偉いのよ。あなたのことは何でもわかるの」

 そう言ってくれたあまみの方を見て、ナゲルが土に還ることをイヤだと言った時、そして岩の向こうの木で、トルトからわかってもらえると思った時の顔になり、固まるしかなかった。


声が、震えていた。あまみが自分のことをわかると言ってくれたこと。さっきから、セイが思ったことにちゃんと答えてくれていること。トルトのことをわからないときも、後で答えると言ってくれたこと。

わかってもらえないと思っていた。自分は違うと思い、恐がっていた。でも、ここに、わかってくれる人がいた。自分じゃわからないことは、聞いていいと言ってくれる人がいた。

セイの目尻から頬を通り、顎から何かが何度も落ちていった。

「あまみちゃん。僕の目から落ちていくのは、なんね?」


あまみが、立っているセイの後ろに回り背中に手をあて、ゆっくりと地面のないこの場所に、座らせた。そして座ったセイの前に歩きながらさっきまで見上げていたセイの顔を見下ろし、両手で頬を包み込んだ。


「それは、涙っていうの。人は、悲しいときや理解ができないとき、嬉しいときや認められたとき、いろんな思いが高ぶったときに、その思いを目から流すの。それを、涙っていうのよ。今、セイくんは、わかってくれること、認めてくれることが嬉しくて、涙を流してしまっているのよ」


 セイには難しい言葉が、たくさん並んでいたが、あまみの暖かい手が頭の後ろにまわった。抱きしめられたセイの顔からは、たくさんの涙が地面に落ちていた。


「セイくん。たくさん考えるの。セイくんのことは、あたしがわかってあげるわ。大丈夫。あたしがなんとかするわ」


 何処かで聞いたことのある台詞が、セイの耳に入った。そしてセイは静かに目を閉じていた。



「ん……? あまみちゃん?」

「おはよう。セイくん。よく眠っていたわよ。落ち着いたかしら」

「眠れた?」

今の自分のふわふわした身体と、頭が上手く働かない感じが初めてだった。あまみが言うから間違いないのだろう。眠っていたのだ。あまみがセイの近くにきてもう1度「おはよう」と声をかけてきた。

「おはよう。って?」

「セイくん。人は眠って、起きたら、おはようと言うの。他にも言い方はたくさんあるけど、これからは眠って起きたら「おはよう」を言ってみたらいいわ」

 起きるとは、目覚めるってことだろうと思って、あまみを見ると「そうよ」と頷いていたので、あまみの方に近づいて行った。

「おはよう。あまみちゃん」

 寝起きのセイの笑顔が、可愛かったのだ。小さな女の子の神は、顔を真っ赤にして後ろを向いた。

「おはよう。落ち着いたみたいでよかったわ」

 恥ずかしかったのか背中を向けて安心を伝えている。そして、セイはあまみにたくさん聞きたい事があることを伝えた。

「もちろん、セイくんの質問に答えるわ。でも先にあたしの話しを聞いてほしいの? どうかしら」

セイは、すぐに座ってあまみの話しを聞こうとした。この素直な心にまた、顔を赤らめてしまう。小さな咳払いをして話しを始めた。

「セイくん。あなたをここに呼んだのは何でか、わかるかしら?」

「手伝ってって、いいよったね」

「そうなの。あたしはセイくんに手伝って欲しい事、やってほしい事があるのよ」

「僕ができることなら、なんだってするよ。あまみちゃんの手伝いって、何ね?」

 その真っ直ぐな心と言葉があまみをドキドキさせる。

「ありがとう。セイくん。お手伝いをお願いする前にセイくんに知ってて欲しい事があるのよ。大事なことだからよく聞いてほしいの」

 そういうあまみの顔がとても真剣で、セイはしっかり座り直して、身体を真っ直ぐ向けた。

「セイくん。あなたが生活していたクオカ片って所があったわね。そこには、16人が生活していたわ。でもね、他にもたくさんの人が生活しているのよ。クオカ片じゃない片に。わかるかしら」

 できるだけセイが混乱しないように、落ち着いた話し方でセイに問いかける。あまみの顔を見つめ、頷いて次の言葉を待っている。

「でもね、その生活している場所にはみんないける訳じゃないのよ。セイくんはクオカ片の木の終わりまで行ったことあった?」

 首を傾げるセイ。「可愛い……」緩みそうな顔を引き締めつつ話しを続けていく。

「ほら、セイくんの家の裏から岩を上って行くとたくさんの木があったでしょ。そこの木をずっと進んでいくと行き止まりになるのよ。そこがクオカ片の端なの。その端を触ってずっと歩くとクオカ片を1周できたのよ」

 セイはもっと首を傾げていた。あまみは1度後ろを向いて顔を整えて振り向いた。

「なら、僕が木の向こうに行ってみたかと思っとったけど、行っても何もなかったてこと?」

「そうね。セイくんがさっきまでいたクオカ片だったら行っても行き止まりだったわ。」

「そうなんやね。よかった。行ってショックうけんで」

 そう言って笑っているセイに、あまみは「セイくんが行かなくて良かった」そう思ったが、気を取り直しすぐに話しを続けた。

「でもね、昔は行き止まりじゃなかったの。何十年も昔は、クオカ片の行き止まりはなくて、あの森を進んで行ったら、他の片につながっていたの」

「森って何ね?」

「木がたくさん集まっている所のことを、森というのよ」

 何でも知ってるなと感心したセイの心が見えるあまみは照れながらセイに近づいた。

「それでね、セイくんには昔みたいにクオカ片と他の片をつなげて欲しいの」

「ん? 木の向こう、えっと森の向こう側を見つけるってことやか?」

 理解しようと必死なセイはあまみに何とか自分の考えを言葉にしている。こんなに必死になってくれる姿を見てあまみは嬉しくなり、いつの間にかセイの横に座っていた。

「そうね。見つかってはいるの。でもね、その片と片をつなげるのは、あたしにできないの。それをセイくんに手伝って欲しいなぁというわけよ」

 いつも可愛らしい声をもっと甘くしながら、セイにお願いを伝えている。いつのまにか、セイの膝をクルクルと人差し指で触れていた。「お手伝い。してくれる?」セイを見上げてもう1度聞いていた。

「わかった。僕ができることなら、なんだってするよ。」

 そう言ってあまみの手を握った。そして、力を込めて「僕がんばるけんね」そう言って、あまみの顔を覗き込んだ。あまみはセイの綺麗な心と言葉を直接ぶつけられて、気を失ってしまうところだった。



「セイくんには、この軸層を使って、片と片を行き来してもらうわ」

 1度落ち着くために、セイから遠く離れた場所まで行き「自分のやるべき事がわかってすぐに素直に受け入れる男。可愛すぎるわよぉぉぉ」と叫んで戻ってきたあまみは、セイと少し離れた場所に立って話しを続けた。

「軸層はあたしが作ってる特別な場所なの。だから安心してね。この軸層では、セイくんとあたししか存在できないのよ。だから、軸層と片を結ぶ(むすぶ)ことで、セイくんはこの軸層と片を行き来できるってことよ。新しい片へは、あたしの力でセイくんを送り出すことができるわ。でもその片から、セイくんを戻ってこさせる力があたしにはあまり残ってないの。でも、セイくんが手伝ってくれると力をあまり使わないで軸層と片を結ぶことができるの。そのためにはね、その新しい片にいる、長の者に会って欲しいの。そしてその長の者に、どんなことをしてでもいいから涙を流させて欲しいの。長の者の涙さえあれば、あたしの力でその涙が落ちた場所と、この軸層を結ぶことができるのよ。それを通って、ここに、あたしのところに戻ってきてね。できるだけ早くよ。それでね、軸層と片が結ばれたら、次は片と片を合わせていくの。そのために、破図はずっていう物に、その片の欠実を合わせていくのよ。破図はここには無いから、また必要な時に説明するわね。とりあえずは、その片の誰のでもいいから、欠実を採ってきて、そうね、セイくんが持ってきたマス箱に集めていってくれたらいいわ。」

 セイは瞬きを忘れるくらい、耳と頭を使ってあまみの話しを聞いていた。しかし、わからない言葉が多すぎたことと、あまみが少し離れているからか、上手く聞こえない所があったので、もう1度教えてもらおうと近づこうとした。しかし、近づくとあまみが離れていくので「わからないことがたくさんあったから、もう少しゆっくり教えてくれんやか」と言ったが「ちょっと待っててよ」と走って見えなくなった。少し待っているとあまみが戻ってきた。

「はい。ここに書いてあるから、これ読んでわからないとこ聞きにきてよ」

 あまみが、セイに向かって投げたものには、たくさんの文字が書いてあった。せいは、片の名前以外の文字がたくさん並んでいるのを初めて見て、驚いていた。

「お手紙っていうのよ。その中にセイくんにやって欲しい事を書いてるわ」

セイはお手紙を両手で持って嬉しそうに中を見ていた。その可愛らしい顔を見て、あまみは赤く染まった頬に右手を添えてセイを眺めていた。すると、セイが近くによって来たので、緩んでいた顔を整えた。

「わかりやすく書いてるでしょ。ちゃんと読んでから質問しに来ないと駄目なのよ」

 近づくセイを見つめ、いつの間にか両手を広げて待ち構えてしまっていたが、照れ隠しをしながら強い口調で言ってやった。

「あまみちゃん。僕、畑に書いてあった文字しか読めんとよ。わからないところ教えてくれんやか?」


たくさんの文字と言葉の意味を教えるために、隣に座っても、前に座っても、顔を真っ赤にし続けてしまったあまみは、もうセイへの好意を隠すようなことはしなくなっていった。



あまみがセイくんにお願いするお手伝い

セイくん、あまみのお手伝いをしてくれてありがとう。本当にありがとう。セイくんのためにあまみもたくさんセイくんのお手伝いするからね。だから、セイくんはこれを頑張って下さい。

1、あたしがセイくんを新しい片にいってらっしゃいします。

2、その片の長を見つけてね。

3、その片の長の者が涙を流したら、そこに大好きなあまみが待ってる所に戻れる軸層をつくるわ。

4、忘れないでね。その片の欠実を1つ持って帰ってくるの。持ってきた欠実はマス箱に入れててね。

5、その欠実を破図にはめていくことで、片と片を合わせていくの。いま破図は無いから見つかったらすぐ見せるからね。

 こんな感じでお手伝いをお願いするわね。絶対無理しないこと。それと、困ったときはいつでもあたしを呼んでね。

セイくんの大好きなあまみより


次もよろしくおねがいします。

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