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母と結婚するときに子を政略に使わないことを条件に嫁入りしてもらったのに約束を忘れてやらかすとはなにごとですか?  作者: リーシャ


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07引き裂いておいて被害者ぶるのは間違い

 婚約を知らされた日に兄が居たら、別の未来があったのかもしれない。ぼんやりともしもが胸に落ちる。


「お父様はなんて声をかけてくるのかな」


「まずは久しぶりとかじゃないか?」


 兄が口角を上げてから、ゲームのように告げる。もう何もかも、期待していないというのがよくわかった。


「軽く話せる空気じゃないのに?」


「ああ。そういうところがある。空気を読んで空気をどうにかするところが」


「それで王家と我が家を取り持ったつもりで泥舟に乗せられたのだ」


 祖父がふうと息を吐いて付け加える。なるほどな、と詳しい解説に納得がいく。父が王家にどう操られるのか高みの見物だ。


 王城に着くと先に降りた兄は招待状を執事に持たせて門番たちに、堂々とした目で威圧して通り抜ける。

 そこからゾロゾロとエメベルマたちも背をピンと張り、少しでも強く思われるために真っ直ぐ伸ばす。祖父も祖母も母も同じようにしているので、真似て見たけれど上手くできただろうか。


 王家からみれば一番幼いからと標的になるかもしれないのが自分なのだ。虎の威を借る狐にならなければ。

 見てくれはどうにもならないが、五人も勢揃いすれば軽んじられる必要はなくなる。王子にも馬鹿にされることはない。


 やはり心理的にも武装はするべき。父だけだったからあれほど自分勝手なことを言われた。父が舐められていた証以外にない。


 王城内に案内されると政治の中枢に身を置く面々がおらず、王家の者たちだけが居た。非公式にするつもりなのだろうか。

 中に通された後は椅子を勧められて、片方の側に全員座った。父は向こう側にまるで、人質みたいにちょこんと所在なさげに腰を落ち着けている。


 緊張でか、汗を流しているけど。誰もあの人に元気だったかなどという声もかけない。一族ではない扱いなのだ。どんな立場になったのか、立ち位置をしっかり目に焼き付けておいて欲しい。これは子心といったもの。


「貴家の皆様には勘違いされるような振る舞いをしてしまったこと、大変申し訳なく思っております」


 王が話し始めた。親しげに話しかけてくるが、我が家の中に彼と仲睦まじい相手はいない。こんな風に馴れ馴れしくされるほど仲は深くないのに。

 うちの陣営は頑として無視した。話し合いをする人たちの内容は謝罪から始まるが、許すことをしないと初めから決まっていたのだから返されないし、返さない。


 いつからすれ違いが起きたのかなんてどうでもいい。気にする部分はされたという事実のみ。そこに至る経緯など知っても無意味だ。


 今後悔してやらなければよかった、止めればよかったと誰かが止めたとしても思考が生まれてしまえば、消えることはないのだから。


 父のような油断をして足元を掬われたことは一族にとって、ちょこっとダメージを負った程度。王家はもっと与えられると踏んで干渉してきたのかもしれない。


 前まではできたのかもしれないが、もうどうすることもできないからこうして話し合いという、ふれあいを望んだのだろうな。エメベルマでさえ、政治のことを深く知らなくてもこちらの後ろ盾を失いたくない王家の考えを看破できる。


 考えていることがわかると言えば、父の顔もげっそりしている。そんなに不調になるのならば距離を空けて縁を切ってしまえばいい。


「我らに気にせず話すといい」


 父に目を向けた王たち。


「……元気にしていたか」


 エメベルマの方に向けて声をかけてきた男は王家の操り人形に見えてきた。娘を望まれるままに差し出そうとしただけはある。


 話しかけられようと声を出す予定はない。全員が声を無視し父をいないものとして扱うと、王家の方の顔つきが変化した。

 心の中で役立たずな男だと思っているのが丸わかり。特にまだ教えられてなさそうな王子。少しくらい取り繕えばいいのに。彼だけは同席なしにすればバレなかった気がする。


 エメベルマは静かに観察していると父がもう一度話しかけるが、誰も答えない。そこで一旦声かけをやめたのか項垂れる。母にまで無視されているのだから、誰も答えないと理解したのだろう。


「気にせず話すといい」


「ええ。私たちはあなたたちの不仲はかなしいのです」


 王と王妃。なんって白々しい。後ろ盾欲しさに勝手に話を進めて、一家をこうなるまで追い詰めておいて。不仲が悲しいなんてよくも言えたものだ。ぐつぐつと怒りが煮えたぎる。


「話とはなんでしょう」


 兄が用は終わったと王たちに向き、鋭い顔つきで対面する。


「ひっ」


「あ、だから、父との話がうまくいっていないと」


「既に話し合いはしております。決裂致しましたので改めて話すことはありません」


 きっぱり言い終わると一族は首を縦に振り、一族の総意だと示す。しかし、王家は話を続けたいのかそれでも、としつこい。王子の方が焦れたのかこちらを見たと思えば睨みつけてきた。


「なんでしょう?」


 王家を追い落とす弱みはここだとエメベルマはわかり、挑発するように笑う。これに引っかかるのは子供なのだ。子供はイキってるみたいで息が荒い。

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