05白々しく家族仲を戻そうとしてるがどの口が言うか
それにしても、王太子の態度も酷いを通り越して、王太子教育の敗北と完全な失敗の塊だったなぁ。
婚約の本質を理解してなかったし、そこら辺の五歳児の方が礼儀正しいと思った。
これが貴族のトップなのかと思ったら、この国は終わりだなぁと本能で決めていた。王国は終わりなのかもね。ここまでうちの家を馬鹿にしていては、後ろ盾として機能しないだろう。
「母はなんて?」
母の反応はどうなのだろうかと聞いてみると、動揺していたのだが今は落ち着いているらしい。
落ち着いているとはどこまでのことを言っているのだろう。具体的に聞いてみると、この手紙を読ませて反応を見てみるかと二人で話し合う。
エメベルマは腕を組むと母親のところに祖父と向かう。今は自室で本を読んでいたらしく静かに文字を追っていた。
側には部屋付きの使用人、温かな紅茶と摘まむための小さな菓子。夫人の優雅なひととき。
こちらに気づいた母は手紙を持っていたことで予想したらしく顔をこわばらせた。
何度か目の手紙なので、定期的に送られてくることも知っている。内容がなにも変化していないことも。
不誠実で何も決められない、好きに操られている夫に少しずつ少しずつ失望しているのも、こちらは感じ取っていた。
「そう、また来たのね」
母は親として父を見ていない。視点がまず違うから娘とは違って失望を簡単に口にしない。二人で積み上げた経験や信頼は家族の中でも言い表せられないだろう。
同情もしてあげられない頼りない父親に内心、罵倒しておいた。誰かを擁護する前に家族を守れと。
しかし、どうにもならないのだ。バカは治らない。
諦めるしかないなと一族で漂ってる空気。避けては通れない混乱を思うと一族は一人減るというだけ。家族としては片親がいなくなる大事件。
「あやつは諦めろ」
王家からしたら貴族の一人がいなくなる些細なこと……些細なことで終わらせるものか。舐めるなよ。ただの令嬢じゃないんだ。祖父が母に話しかける中で、エメベルマは祖父に鋭い目で話しかけた。
「お祖父様、王家を許したくありません。彼らを椅子に座らせ続けるのは納得できません。うちは王家擁護派ですよね?味方から背中を刺されたようなものではないのですか?」
「すまない。私が甘やかしたせいだ」
祖父と王は学生時代からの知己。祖父は当主を兄に変更すると断言した。それに母は頭を下げて「お願いします」とゆったりした態度で告げる。
王に伺いも立てず気づかれないようにするとのこと。当主の代替わりは王家に提出するので知られることになるだろう。しかし、知られずにやれるということなのだろう。
父にも知られることなく静かに移行されているのだ。当たり前の処置と言える。他の貴族だって彼らを見放し離籍するし、離反して何も言わずに去るだろう。
全ての家門の当主が考えるように、派手に立ち回らず気付いたらなにも無くなっていることなど、よくあること。
王家もいよいよ終わりだ。当主の引き継ぎが終われば中立派ないし、反対派に転じる計画を立てているようだ。
中立の反対派閥になるだろうと予想してみる。王家はうちを裏切ったものとみなしているので、皆が納得している。今孤立しているのは父のみ。実に残念だ。
エメベルマはやれやれと思いながら父が選んだのが悪いと断言した。家族か王家か。
選んだのは本人だ。カウントダウンや条件を突きつけてなお、そんなあやふやさをこちらへ押し付けたのだから。
ひっそり祖父がコネやツテを使ってひっそり次期当主の兄を当主にした。ここで王家が横槍をいれたら次こそ終わると思ったのか反応はなかった。精々手紙を寄越された程度だ。
「お兄様おめでとう」
「嬉しいけど思ってたより早かった」
「文句は父に言えばいい」
「ああ、少ししたら手紙でも送る」
母は兄の継承に伴い当主夫人でなくなったから、社交界の出入りは控えている。
父は母に会うために社交界で情報を集めていたみたいだが、もう雲隠れしてしまうから会う機会は恵まれないだろう。
これが父が手に取った結果ならば貴族らしく受け止めていて欲しい。エメベルマに出来ることは何も無い。
しかし、王家が父と我が家の再会をセッティングするという裏がありそうなことをしてきた。
父と再会させる機会に王城の部屋の一角を用意したので来てくれと、王妃の名前で手紙が届いたのだ。
祖父母たちも母も兄も今更ではないか、エメベルマを利用しておいてマッチポンプではないか、と怒りに興奮する我が家。
当主の父を利用して崩壊させておいて、今になって仲直りのために集めようとするなんて片腹痛い。
お前たちのせいだろう、と言いたい我が家の顔はどれもしかめている。しかし、王家に堂々と文句を言いに行く、いい機会。
つまりは総出で向かおう、となる。王子妃候補にしようとしたら、次はこちらの家を懐柔しようとしているみたい。恩を売るつもりの行動に呆れている。特に兄が鼻で笑う。王太子がそこに居そうだなと。




