04祖父は王家に面会要請するが断られる
まあ、こんな世界、倫理観が遅れているから思考も弱いのは仕方ない。
所詮は現代人からしたら取るに足らない教育を受けた毛の生えた適度の知識で文明人を名乗れるのだから。
とはいえ、長年共に暮らした家族。そこに情はある。情はね。でも、助けてくれないとわかったらこちとら現代人の大人な思考を持つ転生者だ。
縁を切るときはブッチっと音がするくらいは引きちぎれる。今こうして声に出しているのは家族だから、特別だから。あとは、声を出さずに観察する番。
少しでも貴族思想を優先させてなんてしたら、こっちもとんでもない思考で終わらせる計画くらいはある。
婚約白紙の文章がなかなか送られてこず、父はやはり裏切り者と祖父母たちも認識し始めて祖父母が動くことになる。
今の先代国王と友人であり、うちとは切っても切れない仲なのだが今回の不始末は縁を切られてもおかしくない。大問題。
「どうです。返事は」
「言い訳ばかりだ。あやつも耄碌したな」
祖父が憤怒を瞳に浮かべて首を振った。その通りだと同意する。父がいい加減何か動けばいいのにモタモタしているのがわからない。
さっさと婚約白紙にするかなかったことにしてしまえばいいのに。王妃の後ろ盾なんて呑気なことを考えている場合ではない。
離縁の危機なのだから。母の後ろ盾を欲して娘を利用したのにその肝心の妻に逃げられた状況は非常に香ばしい。
おまけに母の実家の祖父母らも事態を知りこうして激怒している。ことは一つの物事で終わらない事態に達しているというのに。
耄碌したと年上の祖父に言われる父は、今後ここへ来るたびに尋常じゃない汗や緊張、胃痛を患いながら立つことになるだろう。今からでも簡単に浮かぶ光景だ。
「どんな面をしてここへやってくるのか実に楽しみだ」
「そうですねえ。本当に私の孫を好き勝手できる王家に易々と利用されるなんて、情けない婿に成り下がったわね?」
今の先代王妃と友人だという祖母が怪しい笑顔で目元を暗くする。祖母もどういうことなのかしらと圧のある文章で何某かを問いかけたらしい。
こちらもふんわりしているらしく、今回は王家が全員グルなのかもしれないという疑惑があるとのこと。
確かに先代王妃までそうとなると疑いたくもなる。エメベルマのことも誰も言わなかったのがすでに違和感だらけだ。
普通は祖父母たちにも根回しするはずなのに。それをせずに父にだけ話を通したのが可笑しい。
「お祖父様……王家はなにをしたいのかわかりません」
「そうだな……最近王家の力が弱くなっていることに関係があるのかもしれんなぁ」
「それは私も薄々……知ってましたけど。今回みたいなことを押し通そうとしてまではまだだと思いますけど」
ふざけるなと言いたくなる。やり方ってもんがあるでしょと言いたい。エメベルマは生贄でもなんでもないというのに。
わけがわからない。他のやり方があると思う。少なくとも祖父母らを怒らせる必要なんてないのだが。
何度考えても理解できない。後ろ盾を得る前に今ある後ろ盾が消える寸前なのだ。この事態に祖父母達は王家と距離を取る気持ちになっているみたいだし。
兄もあんな父親なんて、最初からいなかったことにすればいいと見捨てる前提でいる。それ程、父がやったことは家族の信頼をなくすようなことだから、仕方ない。
「父から手紙が?」
「あなたによ」
「婚約を白紙にしてくれた報告だといいけどね」
手紙を受け取り中を読むと案の定、言い訳のオンパレードだが婚約白紙に向けて動いているとのこと。
このままずるずる白紙の話し合いをしているのに、長引かせられそう。向こうの思惑が王家の力の強化ならば、今の状態は手放せないはず。
婚約白紙をしないのならなにも動かないと言うのに、まだわからないとふざけるつもりか。
祖父も読んだら杖を叩きつけた。へし折りそうな勢いだ。あやつはまだ良いように使われおって、と低い声が執務室に響く。
父は流石になんとかしないと実家からも籍を抜かれるかもしれない。ここは母の実家なんだけど、今回のことは家のことも関わってるので内部干渉にあたる。
貴族の家に干渉するなんていかに王家だろうが、許されることではない。家と家が今まさに亀裂が入っているのだ。これを他家が知ったらどう思うのか。
王家が血を絶やそうとしている。利用価値のある家に遠慮なく、家族仲を裂いてでも王家に囲おうとした。そのせいで父の実家とも仲が悪化した場合、さらに王家は追い詰められることになるのだが。
王家は高位貴族の家を不仲にさせ、お家の交流も関係も壊したと他の貴族たちに知られてしまう。
そうなったら、他家は慌てて王家と距離を空けようとすると思うし、いくら擁護派でも同じ目に遭わされるかもしれないとなれば中立派に行くだろう。
何を慌てて今回のことをやらかしたのか調べきれておらず、説明を聞くために祖父は王に面会を望んでいるのだが今は忙しいとわかりやすく拒否されている。
いやいや、孫と婚約させたくせに祖父とは話せないなんてそんなわけあるか!と皆は思った。




