ー第4項 一夜明けて変貌した領地と輝く瞳の領民たち、そして訪れる聖女エリスの混乱と困惑の序曲
第4項 一夜明けて変貌した領地と輝く瞳の領民たち、そして訪れる聖女エリスの混乱と困惑の序曲
翌朝。
俺は執務室の窓から外を見て、満足げにコーヒー(代わりの泥水みたいな豆汁)を啜った。
領民たちは、すでに畑に出ていた。
昨日のような、死んだように鍬を振るう姿はない。
二日酔いで頭を押さえながらも、その瞳は異様なほどギラギラと輝いている。
「うおおおお! 働け! 働いて喉を乾かせ!」
「乾いた後の酒が一番美味いんだよぉおお!」
鬼気迫る勢いで開墾が進んでいる。昨日の数倍のペースだ。
ちょっと目が怖いが、まあ死にたがっているよりはマシだろう。
俺の視界に入る「不幸な顔」は一掃された。これでようやく、俺も美味い酒が飲めるというものだ。
「……領主様、これは一体どういうことですか?」
背後から震える声がした。
振り返ると、教会の法衣を身にまとった少女が立っていた。
この領地の教会に派遣されている聖女、エリスだ。金髪碧眼、清廉潔白を絵に描いたような堅物である。
彼女は窓の外の光景と、俺の顔を交互に見て、混乱のあまり目を回しそうになっていた。
「皆さん、昨日までは『聖女様、私を導いてください』と縋ってきていたのに……今朝、声をかけたら『邪魔だどけ、芋が植えられねえだろ!』と怒鳴られました……」
「ああ、健全になっただろ?」
「どこがですか!? 欲望まみれじゃないですか! 現世は修行の場なんですよ!? 苦しみに耐えてこそ……」
「エリスちゃんよ」
俺は彼女の言葉を遮り、肩に乗った『おつまみ』を撫でながら言った。
「修行なんかしてたら、美味い酒は飲めないぞ」
「は?」
エリスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
俺と『おつまみ』、そしてアルコールに染まった領民たちによる、教会の教えへの真っ向からの反逆。
こうして、泥酔と狂騒に満ちた俺たちの領地改革――いや、宗教戦争が幕を開けたのだった。




