ー第4項 魔王と教皇の極秘会談と和解、世界の二大トップをも虜にするバッカスの酒と毛玉の癒やし
第4項 魔王と教皇の極秘会談と和解、世界の二大トップをも虜にするバッカスの酒と毛玉の癒やし
その夜、領主館のVIPルームにて、歴史的な、しかし極秘の会談が行われていた。
円卓を囲んでいるのは、俺。
そして、黒いマントに身を包み、角を生やした巨漢――魔王。
対面には、煌びやかな法衣を着た老人――教皇。
世界を二分して争っていたトップ同士が、俺のバーで肩を並べている。
「……ふむ。この『百年物・ウィスキー』……素晴らしい香りだ。魔界の瘴気など比ではない芳醇さよ」
「魔王殿、貴殿も中々通ですな。しかし、こちらの『聖女の涙』というカクテルも絶品ですぞ。心が洗われるようだ」
「フン、貴様ら人間にしてはやるな」
かつては殺し合っていた二人が、今は酒のうんちくを語り合い、ツマミの皿を回し合っている。
彼らもお忍びでこの街に来て、そしてハマってしまったクチだ。
魔王は「世界征服のプレッシャー」に、教皇は「信者減少と組織運営のストレス」に、それぞれ胃に穴が開くほど悩んでいたらしい。
それがどうだ。今や巨大毛玉『おつまみ』に頭から突っ込み、思う存分モフモフした後、こうして俺の酒でリラックスしている。
「バッカスよ。我輩は思うのだ。もう戦争などバカバカしいと」
「そうですな。信者の数より、酒の在庫の方が気になります」
魔王と教皇が、とろんとした目で同意し合う。
俺は彼らのグラスに酒を注ぎ足しながら言った。
「なら、停戦協定でも結んだらどうだ? 調印式はこの店でやればいい。ツマミはサービスしてやる」
「……うむ。悪くない案だ」
「賛成です。書類仕事は後回しにして、今は飲みましょう」
世界平和が、バーのカウンターで決定した瞬間だった。
政治的な駆け引きも、宗教的な対立も、美味い酒と『おつまみ』の前では無力だった。
彼らはただの「疲れたおっさん」に戻り、そして癒やされたのだ。
「かんぱーい!」
「うむ、乾杯!」
グラスが重なる。
世界の歴史が動いた音がしたが、外の喧騒にかき消されて誰にも聞こえなかっただろう。それでいい。平和とは、案外そんな軽いノリで決まるものなのだ。




