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ー第3項 死生観の変革と新たな葬送の儀式、悲しみの涙ではなく感謝の献杯で送る人生の卒業式

第3項 死生観の変革と新たな葬送の儀式、悲しみの涙ではなく感謝の献杯で送る人生の卒業式


 この街では、「死」の概念すらも書き換えられていた。

 かつて人々は「死ねば楽園に行ける」と信じ、現世を呪っていた。

 だが今は違う。「現世こそが楽園」であり、死はその宴の「お開き」に過ぎないと考えている。


 その日、一人の老人が天寿を全うした。

 街の創設期から俺を支えてくれた、あの芋農家の爺さんだ。

 広場で行われたのは、湿っぽい葬儀ではない。盛大な『卒業パーティー』だ。


 棺の周りには、故人が愛した酒瓶が山のように積まれている。

 参列者たちは喪服ではなく、一番派手な服を着て、グラスを手に集まっていた。


「じいさん、あっちの世界でも美味い酒飲めよ!」

「俺たちがそっちに行くまで、席とっといてくれ!」

「じいさんの作った芋焼酎、最高だったぜ!」


 泣いている者はいない。いや、泣いてはいるが、それは悲嘆の涙ではない。

 素晴らしい飲み仲間を送り出す、寂しさと感謝の涙だ。

 俺は棺の前に立ち、爺さんの安らかな死顔を見下ろした。その表情は、満足しきったように微笑んでいる。


「……お疲れさん。あんたのおかげで、最初の酒が作れた。恩に着るよ」


 俺は持っていた極上の酒を、棺の中に注いだ。

 そして振り返り、参列者たちに向けてグラスを掲げた。


「野郎ども! 湿っぽい顔をするな! 爺さんが心配して化けて出ちまうぞ! 化けて出たらまた一緒に飲むだけだがな!」

「「「ガハハハハ!」」」

「今日は飲み明かすぞ! 爺さんの新しい旅立ちに、献杯!」

「「「献杯ッ!!」」」


 数千のグラスが触れ合う音が、天にまで届く鐘の音のように響き渡る。

 死を恐れず、しかし死を急がず。

 今日という日を全力で楽しみ、飲み干し、笑い倒す。

 それが、俺たちが築き上げた『ネオ・ゴクラク』の流儀だ。

 神が見たら顔をしかめるかもしれない。だが、知ったことか。俺たちは俺たちのやり方で、魂を救済しているのだから。

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