ー第4項 理性の崩壊と本音の爆発、聖女の仮面を脱ぎ捨てたエリスが叫ぶ切実な欲望とドン引きする司祭
第4項 理性の崩壊と本音の爆発、聖女の仮面を脱ぎ捨てたエリスが叫ぶ切実な欲望とドン引きする司祭
広場が静まり返ったのは一瞬だった。
エリスはテーブルをバンバンと叩きながら、堰を切ったように叫び始めた。
「毎日毎日、お祈りお祈り! 朝は早いし、ご飯は質素だし! 私だって本当は、朝はお昼まで寝ていたいのよ! パンの耳じゃなくて、クリームたっぷりのケーキが食べたいのよぉおお!」
それは、彼女が聖女という役割の裏に押し殺してきた、等身大の少女の叫びだった。
司祭は目を剥いて硬直している。
「エ、エリス!? 何を言って……乱心したか!?」
「うるさいハゲェ! あんたの説教は長いのよ! 聞いてるフリして寝るのも限界なのよ!」
「ブフォッ!」
領民の誰かが吹き出したのを皮切りに、広場は大爆笑に包まれた。
「言ったな聖女様! ハゲは余計だが、その通りだ!」
「聖女様も人間だったんだな!」
「親近感湧くぜ!」
エリスは止まらない。
彼女は俺の方を向き、涙目で訴えた。
「ねえ、バッカスさん! このお酒、すっごく美味しい! もう一杯ちょうだい! あと、つまみ! 甘いやつ! 甘くてカロリー高いやつ持ってきて!」
「はいよ、特製ドライフルーツの洋酒漬けだ」
「最高ぉおおお! んん~っ、幸せぇえええ!」
エリスは頬を押さえ、とろけるような笑顔を見せた。
その顔には、一点の曇りもない。
神への背信? 知ったことか。今、彼女は自分自身の神になったのだ。食欲と睡眠欲と、少しのアルコールを崇める神に。
「こ、こんな……こんなことが許されてたまるか! 悪魔憑きだ! 浄化せねば!」
司祭が杖を構えるが、すでに遅い。
『おつまみ』が司祭の周りを飛び回り、彼が発する焦燥感を吸い尽くしてしまったからだ。
毒気を抜かれた司祭は、ガクリと膝をついた。
「……もう、どうでもいいかもしれん……ワシも疲れた……」
「お、司祭様も飲むか?」
「……一杯だけ、もらおうか……」
勝負ありだ。
完全に俺たちの勝利である。




