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ー第3項 開始される異例の飲み比べ対決、聖女の魔法防御と科学的に調合された悪魔的カクテルの衝突

第3項 開始される異例の飲み比べ対決、聖女の魔法防御と科学的に調合された悪魔的カクテルの衝突


 広場の中央に特設リング(という名の大きなテーブル)が用意された。

 領民たちが面白がって集まってくる。

 対戦カードは、聖女エリス対、俺特製カクテル『天使の堕落(フォールン・エンジェル)』。


「ルールは簡単だ。これを飲み干して、それでも『もっと欲しい』と言わずに耐えられたら、あんたの勝ちだ」


 俺が差し出したのは、クリスタルグラスに注がれた、虹色に輝く液体だ。

 ベースは高純度の蒸留酒。そこに数種類の果実エキスと、俺の魔力で生成した特殊な甘味料、そして炭酸を限界まで封じ込めてある。

 だが、最大の隠し味は別にある。

 俺の肩に乗った『おつまみ』が、グラスの上でプルプルと震え、目に見えない微粒子を混入させていた。

 それは、理性のタガを外す特製フェロモンだ。


「……望むところです!」


 エリスは悲壮な覚悟でグラスを手に取った。

 彼女は飲む直前に、小さな声で祝詞(のりと)を唱える。彼女の身体が淡い光に包まれた。

 『状態異常無効化』の聖魔法だ。なるほど、毒や麻痺を防ぐ魔法で、アルコールの作用を中和するつもりか。

 だが、甘い。

 俺の酒は魔法だけじゃない。「化学」だ。そして『おつまみ』の能力は「精神干渉」だ。物理的な分解と精神的な誘惑の二段構えを防げるかな?


「いただきます!」


 エリスは一気にグラスをあおった。

 ゴク、ゴク、ゴク……プハァッ!

 空になったグラスをテーブルに叩きつける。


「……ふふん、どうですか? なんともありませんよ。少し喉が熱いだけです」


 エリスは勝ち誇ったように微笑んだ。

 司祭が「おお、さすが聖女!」と喝采を上げる。

 だが、俺は知っていた。

 この酒は、時間差で来る。


「……あれ? なんだか……世界が……ふわふわして……」


 数秒後、エリスの頬がみるみるうちに紅潮し始めた。

 聖魔法の光が明滅し、消えていく。

 脳内でドーパミンとエンドルフィンが爆発的な化学反応を起こし、理性の防壁を溶解させていく。

 そして、『おつまみ』が彼女の頭上に飛び移り、最後のひと押しをした。

 彼女が長年抑圧してきた「我慢」という名の蓋を、ポンッと抜いたのだ。


「う……ううう……」

「どうした、エリス? 気分が悪いのか?」


 司祭が心配そうに覗き込む。

 エリスはうつむき、肩を震わせていた。そして――。


「あーもう! やってらんないわよぉおおおお!!」


 聖女の絶叫が、広場に響き渡った。

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