44. 事件です
――12月23日――
期末テストも終わり、クリスマスや冬休みに向けてか、教室の中がにわかに沸いている。
と、そんなときに事件は起こった。
昼休みも残り15分。
食堂から戻ってくるのを待っていたように佐々木さんが僕に近づいてきた。
「林、ちょっと話があんの。ここじゃ何だからあーしについてきてくれる」
「あ、うん」
なにか焦ってるような感じの佐々木さん。
廊下に出た僕たちが向かった先は特別教室。
また、ここか。
手をワキワキさせていたポーラの姿が脳裏に蘇る。
いま思い出してもお股がひゅんとなってしまう。
あれって絶対僕のチ○コを狙ってたよな。
少しだけドアを開け、中を確認している佐々木さん。
「うん誰もいない。林も早く入って!」
手招きされるまま特別教室に入る僕。
佐々木さんは後ろ手にカチャリと鍵を閉めると、いきなり僕に抱きついてきた。
!!!
――ちゅ~~~~~う♡ ッポン!
特別教室に爽やかな音が響き渡った。(うそ)
「は~スッキリした。不安でモヤモヤしてたのよね。あんがとね林」
腕の中でにっこり笑う佐々木さん。
「どうしたの?」
僕は佐々木さんの目を見つめ、彼女が話し始めるのを待った。
「実はさー、昨日の晩から美桜と連絡が取れないんだよね~」
「え、相州さんと連絡つかないの? 病気で休んでるとかじゃなくて?」
「うん、それでさっき美桜のお母さんから電話かかってきたんだけどぉ、美桜、昨日から家に帰ってないんだって」
「どっかにお泊りしてて、スマホの電源が切れてるだけかも?」
「それな。でも昼まで連絡つかないなんてこと今までなかったし」
「そっか~」
「うん、それに最近、変な噂もいろいろ聞くし。怖い人たちともめてるなんてことも言ってたし。変なところに連れていかれてたらどうしよう」
今にも泣き出しそうな顔をしている佐々木さん。
ああ~もう、かわいいなぁ。
僕はそっと彼女の背中をさすった。
「うんうん、とりあえず落ち着こうね」
「ううう……」
………………
話を聞いてみたところ、夏過ぎあたりから相州さんには仕事場をめぐってのトラブルが起きていたという。
具体的に言うと、よそのシマにあるパパ活喫茶に相州さんの先輩が無断で出入りしていたらしく、それを同業者に見られてしまったことからいざこざが起きているということだ。
実際にもめているのは先輩なので、相州さん自身はとばっちりを受けないように大人しくしていたみたいだけど……。
う~ん。
パパ活喫茶とは、一般的には出会い系の掲示板やマッチングアプリなどを通じて出会ったふたりが『顔見せ』に使うお店のことを言うんだけど。
こちらでいえば、少し落ち着いた雰囲気の椿○珈琲やル○アールといったところかな。
最近ではシティホテルのロビーなんかもそれらしい客が増えているそうだ。
で、なんでそんなところでトラブルが起きるの?
まあ喫茶店にもシマはあるんだろうけど、もめるほどのことなのかな?
――――タラリラッタリタラタラッタッター♪♪――――
――――タラリラッタリタラタラッタッター♪♪――――
あ、昼休みが終わっちゃった。
「じゃあ、また放課後に話そうね」そう言って僕たちは教室に戻った。
――吉十のマンション――
やっぱり佐々木さんには元気がない。
温かいカフェラテを目の前に置いても彼女のテンションは上がらない。
隣にくっついてるお菊も心配しているようで、佐々木さんのお腹に顔を押しつけてぐりぐりしている。
相州さんとは未だに連絡がつかないそうだ。
今は夕方の4時を回ったところ。一時間もすれば外は真っ暗になる。
散歩の時間だけど、お菊にはちょっと待ってもらい、先に佐々木さんの話を聞くことにした。
僕は彼女のすぐ隣に腰掛けると、
――よっこらせ。
膝の裏と腰に手をまわし、佐々木さんをひょいっと横向きに抱き上げると、そのままポスンと僕の膝の上に乗せた。
「わわわっ!」
目を大きく見開いて驚いている佐々木さん。僕と目が合うとようやくにっこり笑ってくれた。
「じゃあ、相州さんのことについて話してくれる。できるだけ詳しくね」
「うん!」
………………
…………
……
なるほど、ネットカフェでパパ活してたのか。
ネットカフェなら昼間だと千円ぐらいから入れるからね。
掲示板で募集をかけ客を探し、三人こなしたら店を変わる。
これは当然だな。そうそう人の部屋に出入りするわけにはいかないだろうし。
それにこれ従業員にはバレてたりするんじゃないか? 監視カメラも付いてるし。
サービスは手と口で本番はなし……か。まあ、個室は狭いからね。
セイラという名で募集をかけると、瞬く間に10人以上の客が付いていたという。
そりゃまあそうだろう。あのルックスで現役女子高生だもんね。
――悪の軍団のアジト――
「へへへ兄貴、今回もなかなかの粒揃いっすねぇ。ちょっと味見しちゃダメっすか?」
「あ―――ん、ダメに決まってんだろうがこのボケナス。勝手に手ぇ出しやがったらしばき上げるぞ。こらー!」
「ひ、ひー、すんませんすんません! 絶対手も足もチ○ポも出しませんから!」
「おい、おさむ。てめーなめてんのか? まずはそのきたねぇもん仕舞ってズボンを穿いてこい!」
「えー、オ○ニーもダメなんすかぁ? そんな殺生な~~~」
下半身むき出しのおさむ。あそこはギンギンにおっぱっぴー。
ここは海辺近くにある、とある廃倉庫。
二階フロアの一角にあるこの部屋には鉄格子の檻があり、その檻の中には数人の女性が監禁されていた。
女性の衣服は剥ぎ取られ、下着姿のまま段ボールの上に座らせられている。
そして檻の前では一人の女性が天井から垂らされたロープに両手を縛られ、その場に立たされていた。
パンティーのみという姿で立たされている女性。
目はどこか虚ろで、時折ピクンピクンと痙攣するように身体が跳ねている。
どこから見ても普通ではない。半分に開いた口元からはとめどなく涎が滴り落ちていた。
「お、もうこんな時間か。よーし今日はここまでだな。おさむ、こいつを檻に戻してやれ」
「へーい。げへへへへ」
「おい、大切な商品なんだから丁寧に扱えよ」
「わかってまさぁ。げへへへへ」
「えいじ、ストーブに灯油はいれたか? 忘れるとみんな死んじまうからな」
「さっき全部確認しましたんで大丈夫です。発電機のガソリンの方も一緒に入れときやした」
「そうか、流石えいじだな。じゃあこいつらに餌やったら一旦事務所に戻るぞ」
「え、見張りは置かないんすか? あれだったら俺ここに残りますけど?」
「なに言ってんだおさむ。ダメだダメだ。お前置いていったらその巨根で食べ散らかすだろう。せっかく確保した女たちが何日も使い物にならなくなってみろ。下手したら俺たち全員の首が飛ぶ!」
………………
『ううううう、寒いよぉ、怖いよぉ、お家に帰りたい。どうしてこんなことになっちゃったんだろう。誰か助けてよ。もうパパ活なんかしないからぁ』
数基の達磨ストーブの炎だけが照らす檻の中。三人の女たちは毛布をかぶり身を寄せあうように眠っていた。
さっき戻された女性からは時折うめき声がもれている。
あの腕に注射されたのは何だったのだろう。
あそこに擦りつけられていた薬はどんな効果をもたらすのだろう。
怖い。なんとなく分かるだけに怖さが増していく。
明日は自分もあれをうたれるのだろうか?
もう逃げられないかもしれない。
もうみんなに会えないかもしれない。
いや! いやだよ。お願い誰か助けて! オタク助けてよぉ! ううう、うううううう。
???
誰かが私の頭をなでてくれている。
言葉はない。
自分も同じ身の上なのだ。かける言葉などあろうはずもなかった。
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次回をお楽しみに!




