36. 覗いちゃダメ
――佐々木優里――
私は自室のベッドに寝転がりスマホを見ていた。
『えへへ、写真もらっちゃった。かわいい私の吉十くん!』
チュッ♡
最近ちょっぴり背も伸びて顔つきもだんだん男らしくなってきたわよね。
それにしても、今日の彼って大胆だったわ。
海の見える砂浜でお姫様抱っこは反則でしょう。
抱えられた瞬間に『どこへでも連れてって♡』て本気で思ったもの。
二人で眺めた海は最高だったな。
まあ、彼はモンスターを警戒してたみたいだけど。
あれがすべてドッグラン?
腰越海岸と江の島を模してドッグランを作ってしまえる黒まろって本当に何者なのかしら?
でも、なんとなく正体は分かっちゃった。
ユリ・ササキ Lv.1
年齢 16
状態 通常
HP 15/15
MP 16/02 +20(魔力の指輪)
筋力 7
防御 5
魔防 1
敏捷 7
器用 8
知力 2
【スキル】 命中補正 魔力操作(1)
【Gal魔】 プチウォーター プチパラ
プチクリーン プチヒール
【Galレージ】 12マイル
【称号】 ギャル、
【加護】 聖獣
なんだか知らないけど、ステータス表示が見られるようになったみたい。
海の家のトイレに入っているときに気づいたの。
まずはこれからよね、『聖獣の加護』。
どうして私に加護が与えられたのか疑問は残るけど、くれたのはおそらく黒まろだよね。
マジックリングもくれたし、おばあちゃんには魔法の箒をあげてたしね。
ホント気前がいい聖獣さまだこと。
でも、あの魔法の箒っていいわよね。空を自由に飛べるって魅力的だわ。
ただ自分の力で飛べるようになるにはそれ相当の訓練が必要だって言ってたけどね。
おばあちゃんはやる気満々みたいだけれど大丈夫なのかしら。
スキルの方は命中補正と魔力操作か……。
魔力操作の方は吉十くんに聞いてるから、これはいいとして、
命中補正ってなにかしら? 弓矢とかを使うやつ?
これは吉十くんに相談してみないとね。
そして『Gal魔』。
これは小規模な魔法だったわ。
ちょっと怖かったけど、さっきいろいろ試してみたの。
そしたら凄いの!
手のひらからぶわぁって水があふれてきたり、
爪に施していたネイルがきれいさっぱり消えちゃったり、
ちょっと目の前がブレただけってのもあったけど、
一番驚いたのはコレね。
『プチヒール』
作用範囲は人差し指の指先だけって感じだけれど、
使ってみてびっくり!
私の目下の悩みだった「おでこのニキビ」が跡形もなく消えたのよ。
おでこだから目上の悩みになるんだけどね。
まあ、そんなことはどうでもよくて、
これこそ神。神魔法だわ!
あまりの驚きに鏡の前で奇声を上げていたら、お母さんが血相変えて飛んできちゃった。
えへっ、ごめんなさい。
でもそのくらい凄いことなんだから。
メイクしても完全に隠せないし、ニキビの跡や色素沈着も気になるしで、
私が今までどれだけ悩んできたと思ってるのよ!
こほん。少し興奮しちゃったわね。
それで最後がこの謎の表示。
『Galレージ』
後ろにマイルの表示があることからなんとなく予想はつくけど、
ちゃんと説明を受けないと何のことだかさっぱりだわ。
これもマイダーリンに要相談っと。
私は再びスマホを手に取ると、吉十くんの写真を見ながらベッドの上で仰向けになった。
さあ、今日も魔力ぐるぐる頑張んなくちゃ。(魔力操作)
でもこれやってると、ついあの時のことを思い出しちゃうの。
するとだんだんと手があそこに吸い寄せられていって……。
――ダメ!
乙女の秘密は覗いちゃダメなんだからね。
――林吉十――
期末テストまで12日に迫った週末の日曜日。
僕はお菊を連れて江東ギルドまで来ていた。
もちろんダンジョンに潜るためなんだけど、今日の主な目的は佐々木さんたちの引率なのだ。
先日のドッグランでの話、
「あ、それからさぁ、今度の日曜日に江東ポータルまで来れる? あーしたち魔石採取があんのー。できれば経験者とパーティー組んでいろいろと学ぶようにだってー」
魔石採取といえば最終カリキュラムだったよな。
もうそこまで進んでたんだ。
これなら冬休みは一緒にダンジョン探索ができるよな。うんうん。
まだ少し時間があるようなので、この前レベルアップしたステータスをもう一度確認しておくことにしよう。
ヨシト・ハヤシ Lv.4
年齢 16
状態 通常
【従魔】 オキク(*****)
HP 25/25
MP 34/14 +20(魔力の指輪)
筋力 15
防御 13
魔防 12
敏捷 13
器用 14
知力 15
【特殊スキル】 時空間魔法(U)状態異常耐性
【スキル】 魔法適性(風・土)魔力操作(3)
アクセル 瞬間移動 念話
【魔法】 土魔法(3)風魔法(1)身体強化(1)
【称号】 チビデブ、契約者、早漏、彼ぴ、
【加護】 聖獣
吉十のステータス成長費
→ Lv.4
HP 21 +4
MP 10 +4
筋力 12 +3
防御 10 +3
魔防 9 +3
敏捷 10 +3
器用 11 +3
知力 11 +4
まずはステータスから。
相変わらず著しい成長を見せている。
ネットなどに出ている一般探索者のステータスと比較してみたところ、
中堅どころと呼ばれているレベル8の人たちをも軽く凌駕していることがわかった。
ここでいう中堅どころとは、5階層~7階層を狩場として戦っている人たちのことを指しているのだ。
つまり5階層のフロアボスを倒して転移台座が使えるようになれば、晴れて中堅探索者と呼ばれるようになるらしい。
え、僕?
今の僕なら一人でも楽々クリアできるとは思うんだけど。
いやいや、まだ行かないよ。
舐めプしてるとかそんなんじゃなくて、なんていうか……悪目立ちするじゃん。
「ダンジョンが増えつつあるこの世界情勢を鑑みても、いま目立つような行為は極力避けるべきだな」
五郎おじさんもこう言ってるし、しばらくは大人しくしているつもり。
次はスキルの方だけど、
僕が最初から持っていたスキル。
『アクセル』
最近ようやく使いこなせるようになってきたんだ。
まず、『アクセル』と頭の中で念じるだけでスキルが発動するようになった。
スキルの作用は動作の高速化であり、通常の3倍のスピードで動くことが可能になるようだ。
口から息を吐き出すことで『アクセル』は解除されてしまうけど。
この『アクセル』は一切MPに依存しないし、解除後に変なディレイタイムなども存在しない。
つまり、体力が続く限り連続で使い続けることができるというわけ。
実際どれくらい動けるのかだけど。
戦闘時における息止めは、やはりどう頑張っても一分間が限界のようだ。
まるまる限界まで息を止めてしまうと『アクセル』解除後に息が上がった状態になり大きな隙を作ってしまうことになる。
このことから、使用時間の目安としては20秒ほどが適当じゃないかという結論に達している。
(今現在はというところだけどね)
実際の時間にして7秒弱。それを3倍速で動けるわけだ。
近接戦なら圧倒的だし、
Lv.4になった今の僕なら、100メートル離れた敵の首を一瞬で刎ね飛ばすことだって出来るだろう。
まさにこれってチートスキルだけど、使い過ぎると寿命が短くなりそうでなんとなく怖いよ。
おっといけない、そろそろ時間かな。
先に準備を済ませ、改札機のある大ホールで佐々木さんが来るのを待っていると、
通路の方からガヤガヤと雑談しながらこちらに入ってくる集団があった。
時間的にもこの集団かな?
ん――――っ。あ、いた!
あの黄色のツナギが佐々木さんだ。
左手には僕と一緒に選んだヘルムを抱え、背中には小さなデイパックを背負っている。
まあ、今日はダンジョン入るといっても二~三時間だからあれで十分だよね。
佐々木さんの方も僕がいることに気づいたようで、こちらに向けて手を振っている。
可愛い。
僕の彼女はなんて可愛いんだろう。
ついつい顔がにへらと緩んでしまいそうになる。
そして佐々木さんの隣を歩いてる女の子に目が移った。
え、あれって相州美桜さん!?
彼女も今回一緒に受講していたのか。
どういう経緯かは分からないけれど、
相州さんって、こういう泥臭いことは一番敬遠しそうなタイプに見えるんだよね。
先ほどの集団は簡単なブリーフィングを済ませるとすぐに解散となった。
今回のカリキュラムはこれまでの講習で学んできたことを基に、実際ダンジョンに入り魔石を持ち帰ることだ。
もちろんライセンスのない受講者個人や受講者同士でのダンジョン侵入は不可。
かならず一名以上の引率者がいるパーティーに入れてもらう必要があるのだ。
僕も今朝、引率者としての登録は済ませているのでなにも問題はない。
「林おまた~。今日は美桜共々よろしくね~」
「はい、佐々木さん。こちらこそよろしくです」
「げ、ほんとにオタクが来てんじゃん。2メートル以内に近づいたら殺すから!」
「はい……。気をつけます」
「も~美桜ったら~。小学生かよ!」
ブックマーク、評価ポイント、ありがとうございます。
元気出てきました。φ(ΦωΦ )
次回をお楽しみに!




