24. 文化祭
――放課後・文化祭の準備――
11月に入り、文化祭まで残り僅かとなった。
今週末の開催ということもあってか、学園の中の空気は文化祭一色。
ダンスやバンドの練習だろうか、
放課後になるとアニソンやボカロの曲が聞こえてきたり、
カンカンカンカンとトンカチの音がどこからともなく響いてくる。
白王学園の文化祭は全行程2日で行われ、
初日は本校生徒だけの催し物で、2日目は一般入場も可能となっている。
『展示物の準備なんか楽勝だろう』と高を括っていた僕だけど、
いざ担当が決まって仕事が割り振られると、これが思ったよりも大変だった。
僕の担当は案内看板のイラスト係。もちろん一人でやっている訳ではない。
自然とできたグループには、書き手として僕ともなかが。
サポート要員として、
佐々木さん、可藤さん、クウディーさんの三人が買い出しなどの雑務を担当してくれている。
『ねぇよっしー。文化祭というのは楽しいのか?』
僕に念話で話しかけてくるのは、
いろいろと謎のある褐色肌の留学生、ミキ・ポーラ・クウディーさんだ。
ここのところ、教室で作業している僕の横にずっとへばりついている。
『う~ん、文化祭って僕ら学生のお祭りみたいなものだから、楽しめるとは思うよ』
『お祭りなのか……。神社の例大祭なんかは手伝ったことがあるぞ』
『神社の例大祭? それはまた本格的な祭りだね』
『マスターと一緒に毎年手伝っていたぞ。お面を売ったり、りんご飴を売ったりしてな』
『…………』
マスターって人、的屋ヤクザなの?
『へ、へぇ~、そうなんだ。ポーラの地元ではどういったお祭りがあるの?』
この前までクウディーさんと呼んでいたんだけど、
『もう友達なんだから私のことはポーラでいい』と言われたので、
それ以来、彼女のことはポーラと呼んでいる。
念話でだけどね。
『私の部族はやはり何と言っても「裸祭り」だな』
おお、裸祭り。
男達がふんどし姿で神輿を担いだりするやつか?
『祭りの内容だが、ひとつの家に男女10人程が入り乱れ、朝が来るまで組んずほぐれつ……』
違った――――っ!
まさかの乱交パーティーじゃん。
『私たちは長寿ゆえ性に無頓着な者が多いのだ。だから定期的にこの祭りを開かないと、いずれ種族そのものが衰退してしまう』
ふーん、割と深刻なんだね。即、永住したいとか思ってしまってスマン。
ほんと、ポーラってどこの国から来ているんだろう?
「ほい! 水くんできたよー」
「ありがとう佐々木さん。よかったら、このパネルを少しずつ左へ回してくれると有難いんだけど」
「うん、OK! OK! 大きな丸を描くんだよね」
「そうそう、ほんとはダイナミックに一筆書きでいきたいところなんだけど、ペンキが周りに飛んでしまったら看板が台無しになっちゃうからね」
ニコニコ笑顔で作業に付き合ってくれる佐々木さん。
ペンキが飛んで制服が汚れてはいけないということで、
作業班はみんな学園のジャージを着ている。
それはいいんだけど……、佐々木さん?
僕の目の前でチリチリとファスナーを下ろしているのはなぜ?
「…………」
ついにジャージのファスナーは開け放たれ、中のTシャツが見えているんですけど。
これがその……、エロいんです。
胸部がパックリ横に割れており、胸の谷間が見えている。
さっきからギャル達が集まってキャーキャー何かやってると思ったら、
この『胸あきカットソー』を見て騒いでたんだ。
いくら先生が見ていないからって、これはやり過ぎだよ。
すぐにジャージのファスナーを上げさせ、僕は作業に没頭した。
「んもう、林の い・け・ず♡」
『いけずじゃない!』
まったく……。
* * * * *
――文化祭――
いよいよ文化祭の当日だ。
展示班である僕たちは看板や装飾物に破損がないか? 落下はないか?
定期的に見回り、場合によっては補修などをおこなっていく。
見回りといっても二人一組で、一日に一回まわってくるかな~というところである。
朝、見回りの順番を決めたら、その時間までは基本的に自由。
学園の外に出なければどこにいても問題はないのだ。
中学生時代、文化祭などであまりいい経験をしたことがない僕は、
生徒もまばらになった教室で自分の席に座り、頬杖をついて好きな音楽を聴いていた。
するとしばらくして、トントンと僕の背中を誰かが叩いてくる。
!!!
うしろを振り返ると、そこにいたのはにっこり笑った爆乳ちみっこギャルの可藤さん。
「ん、どうしたの? 看板の補修?」
「うんにゃ、そうじゃなか。表でチョコバナナを売りよるところがあるげな。ひとりで行くのも寂しかけん誰かおらんやろかーて教室に来たら、肉丸くんがおったばい」
「それで僕を誘ってくれているんだ?」
「そうばい、暇やったら一緒に行かんね?」
「チョコバナナか……美味しそうだね」
「やろ。早よ行くばい!」
チョコバナナおいしゅうございました。
一緒に売っていたバナナチップスは午後からのおやつに取っておこう。
ふたたび教室で音楽を聞いていると、
『よっしー! よっしー!』
!!!
『ポーラか? どうしたんだ、そんなに慌てて?』
『緊急事態発生! 学園にゾンビが入り込んでいる。殲滅するので逃がさないように応援頼む!』
『ゾンビが!?』
僕の背中に嫌な汗が流れる。
10年前に起こったダンジョン災害。
その中でも池袋を襲った、アンデッドのスタンピードは有名だった。
しかし、その現象にはダンジョンの発生が絡んでいたはず。
なんの予兆もないのにアンデッドだけが現れるというのは、そもそもおかしな話なのだ。
『よっしー、助けてくれ! ゾンビどもに囲まれた。このマシンガンだけでは間に合わないんだ!』
『…………』
ん、マシンガン?
『うわっ、やられた――――っ! グレネードも装備しておくんだった――――』
『…………』
『クソー、もう一度だ。今度こそ一体残らず殲滅してやる!』
なるほど。ゲーム研究会が出しているアクションゲームをやっていたのか。
ゲームに熱中するあまり、心の叫びが念話として伝わってしまったということかな?
ふう、ほんと人騒がせな。
僕はいつでもお菊を呼べるようにと額に当てていた指を下ろし、集めていた魔力を霧散させた。
「あ、いたいた! なんだ林教室にいるし。探したじゃん!」
「え、僕を? なにか用事があったの?」
「うぃうぃ。ちょっといいとこ見つけたから一緒に行ってみない?」
半ば強引に引っ張り出された僕は、佐々木さんに腕をとられたまま廊下を一緒に進んでいく。
ちょっ、佐々木さん近いです。これは近過ぎます!
僕の心の叫びも届かず、やってきたのは3年生の教室が並ぶ階。
「うわっ、すご!」
廊下はたくさんの人で溢れていた。
その中には客引きをしているギャルメイドがいたり、看板を持っているミイラ男がいたりとなかなかのカオス状態。
「あった。ココ! ココ!」
指差している佐々木さんの前には『ポンドロ屋』と書かれた大きな看板。
「あーしも今シール集めてるんだよねぇ」
ラインストーンで彩られたシール帳を自慢げに見せてくる佐々木さん。
さすがギャル。流行にはめちゃ敏感だよね。
それにしても、模擬店が出るほどのブームだったんだ。
ボンドロ屋は今流行のシールをくじ引きでゲットできるというものだった。
教室後方ではシール交換会ができるよういくつもの席が設けられており、
無料のお茶付きということもあってか、なかなかの盛況ぶりだった。
「来年はあたしが東京カステラば作っちゃーけん!」
とは、可藤さんが発した言葉なんだけど。
東京カステラ???
それはどんなものかと聞いてみたところ、
縁日などで売っている一口サイズのベビーカステラ(鈴カステラ)。
これを福岡の方では『東京カステラ』と呼んでいるらしい。
ちなみに、チラッと目に入ったギャルメイド喫茶には今回足を運ぶことができませんでした。
ごめんなさい。
来年、同じような店があれば突撃したいと思います。( ̄^ ̄)ゞ
とはいっても、肝心な時に邪魔が入ったりするんだよねぇ。
なんとか認識阻害系のスキルが手に入らないかなぁ。
お読み頂きましてありがとうございます。
次回をお楽しみに!




