付け焼刃の演技が通じる相手は限られているようだ
本日2回目の投稿です。
街道を馬車だったり、徒歩だったりで行き交う人をちらほろ見かけるが、敢えて森に姿を隠しながら街へ向かう。
人さらいなんかがいるかもしれないし、お節介な人に出会うのも面倒。だから人がいなくなったところを見計らって門に近づいた。
「お嬢ちゃん、こんなところに一人でどうしたんだ?親はいないのか?」
おぉー、一番聞かれたくない部分なのに!
「魔物に追われてはぐれちゃったの」
うるうるした瞳でがたいの良い門番を見上げる。
瞬きを我慢してうるうる瞳にしておいたのが早速役立つ。
「そりゃ大変だったな。この町の通行証とか持っていれば通してやれるが。それか、この町に親戚でもいないか?」
「たぶん、いないと思う。お兄さん、通行証はいくらかかるの?」
30代、いや40代でもおかしくなさそうな門番を「お兄さん」呼ばわりしてみる。嬉しかったようで、もっさりとした髭面がほころんだ。
「あー、お兄さんも協力してやりたいが、通行料はまけられないんだよな」
「おい、どこのどいつがお兄さんだって!?気持ちわりぃこと言ってんじゃねぇよ!」
脇にある詰め所から同僚らしき男が出てきてからかう。
髭面ではないが、こっちも同レベルでもっさい。
この世界の男には身だしなみを調えるという概念はないのか!?
「あ、あの、通行料は?」
いつまでもじゃれ合っているので催促してみた。
「お前くらいのガキなら1000ルークだな」
後からやってきた男は口が悪いらしい。
「スライムの核が何個あれば足りる?」
「えっと、スライム1個の売値が20ルークだから、50個だな」
お、通行料は無理なく払えそうだな。
「お兄さんありがと。あと、大きな袋とスライムの核を交換してくれないかな?」
首を可愛らしくちょこんと傾げてみる。
「袋ね、袋、袋…あっ、ちょうどいいのがあるからそこで待ってな!お兄さんがいいのを持ってきてやるからなー」
髭面の門番はにへらと笑うと駆け足で詰め所の奥に飛んで行った。
「おめぇ、ガキのくせに、なんだかあざといな。演技か?」
悔しいが、この人には通じないらしい。研究の余地あり、だな。
「子供が一人で生きていくためには必要なこと、だよ?」
ダメ押しで、反対方向に傾げてみる。
「確かにそうだな。ガキらしくないが嫌いじゃないぜ!」
そう言ってガハハと笑うこの人は、案外いい奴なのかもしれない。
「おじさん名前なんて言うの?」
「ゴードンだ。お前は?」
ここに着くまでに考えておいた名前を告げる。
「ヒカリ」
「ヒカリか、よろしくな!」
ゴードンと握手を交わしたところで、髭面の門番が戻ってきた。
見た目はボロボロだが、穴など開いていない、生地のしっかりとした背負い袋を2つ持って。
「買い替えたんだけど捨てるに忍びなくてとっておいたんだ。これでよければお嬢ちゃんにあげるよ」
タダで良いと言われたけれど、お礼の気持ちにとスライムの核を5つほど渡し、昼過ぎにもう一度出直すと言って門を離れた。
思わぬ収穫にスキップをしながら森へ再び向かう。
門番の2人がいつまでも手を振ってくれたのがたまらなく嬉しかった。




