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20/22

ex01:マフラーの話

「そういえば、先だって話していた練習のマフラー、完成しました」


 ちゃんとした夫婦になろう、と決めて数日。

 恋愛初心者ふたりなので、歩みはとてもゆっくりだ。

 ただ、喋る場所は書斎からシルス様の私室に変わった。

 ソファに並んですわって、という、まさに恋人という状況。

 足の触手が腰を支えてくれるので、安定感も抜群だ。


「見せてくれないのかな?」


 私が手ぶらなので、シルス様はちょっと残念そう。

 いやその……と誤魔化そうとしていると、開いたままのドアからマヤの声がした。

 名実ともに夫婦になったのだから、ドアを閉めてもいいのに、義理堅いひとだ。

 ……そういうところもわりと好きだなと思う、なんて。

 シルス様が入室を許可すると、にっこり笑顔で入ってくる。


 両思いになってすぐ、シルス様はマヤに姿を見せた。

 やっぱりびっくりしていたけど、いつも私の触手萌えを聞いていたマヤは、とても腑に落ちたらしい。

 私にだけ「これが割れ鍋に綴じ蓋ですか」と言い放ったくらいだ。主への敬意はどうしたのかしら。

 ともあれ、シルス様が予想していたよりはるかにあっさり受けいれられた。

 なので今は二人でいる時も、オーゴさんだけじゃなくマヤにも頼めるので楽になっている。


 ……って、ちょっと待って。マヤが持っているのって。


「なんで使用人が勝手に持ってきているの!?」


 越権行為……じゃなくてなんだっけ、勝手すぎないかしら。

 慌てて叫ぶがマヤはどこ吹く風だ。


「だってリッサ様、シルス様を思って編んでましたでしょう? でしたら旦那様に見せるのがスジですよ」


 子供のころからのつきあいだから、マヤにはなんでも話してしまう。

 裏目に出る日がくるとは……!

 シルス様は見たい! って顔になっているし、触手たちも催促するように揺れている。

 そんなかわいく(あくまで私視点)おねだりされたら許可してしまう。


 マフラーは、地の色は青で、ところどころの段に銀と黒の糸を入れてアクセントにしている。

 言わずもがな、シルス様の色だ。

 触手用はもっと色々な挑戦をしたいが、マフラーなら無難が一番かなと思った。

 地色を黒にしようとしたら、初心者には編み目が見えなくなるからと、編物上手な使用人にアドバイスされた。


「とてもよくできていると思う」


 マフラーを受けとったシルス様はにこにことご機嫌だ。

 私はマヤに視線を送ると、これ以上余計なことは言わないでねと圧をかける。

 了承の意なのかぱちんとウインクすると、さっさと退去してしまった。

 絶対渡すタイミングを狙っていたわね。

 シルス様は感嘆しているが、それはそうだろう。

 だってこのマフラー、編み直しているのだから。


 初心者かつ素人の私だから、はじめは編み目も揃わないし、抜けもあるしさんざんだった。

 だから、練習用の毛糸を用意してもらい、まずはひたすら編みかたの練習。

 それが綺麗な目になってきたところでマフラーにとりかかり、でもやっぱりいまいちだったので、半分以上できていたがほどいてやり直した。

 おかげで、一応使える程度のデキになっている……と思う。

 でも、そこまでバラされたら恥ずかしいし、シルス様が気にしそうだから、黙っておく。


「私が使ってもいいのだろうか?」

「いいですけど……恥ずかしいので、邸の中だけにしてください」


 本職からすれば稚拙なものだ、外出につけていくのはやめてほしい。

 友人がきた時に見せびらかすのもナシでと加えると、残念そうだが納得してくれた。

 いい毛糸を使っているので暖かさは保証ずみだ。

 シルス様は嬉しそうにマフラーをしていると、他の触手がさわさわとマフラーに絡みだした。

 小さいものは余裕のあるあたりにもぐりこみ、下半身の太いものは、端をひっぱっている。

 もしかして……


「すべての触手分を編むのは時間がかかりますけど、編むつもりなので、待っていてくださいね」


 というか、そっちがメインなわけだし。

 声をかけると、触手たちは嬉しそうに跳ねた、か、かわいい……!

 じーん、と感動していると、シルス様がちょっと不服げに私の腰を引きよせた。


「編んでくれるのは嬉しいが、無理をしないように」


 なにせ本数が多いから、腱鞘炎になりそうだ。

 慣れれば大丈夫になるといいなぁ。

 触手たちもそのへんは理解しているっぽく、いたわるように小さな触手が手首にふれる。

 シルス様と触手が喧嘩をしないよう、頑張っちゃおうと思うのだった。

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