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アンネリーゼとお義母様~ダメパパ放置します!~  作者: 渡 幸美


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15/18

15.じいじとばあばが来てくれました

「うおぉぉぉ!アンネリーゼェェェ!会いたかったぞぉぉ!」

「リーゼロッテさん、お招きありがとうございます」


私をぎゅうぎゅうに抱きしめるお祖父様の襟首をぐいっと引っ張りながら、淑女らしく挨拶をするお祖母様。

母の両親が、本日、南の辺境伯領から遊びにきてくれたのだ。


「ようこそいらっしゃいました。遠路はるばるありがとうございます」


さすがのリーゼロッテも猫又を数十匹被って挨拶をする。


まずは、和やかなスタートだ。




ーーーそもそもの事始めは、先日のお茶会でのリーゼロッテの発案で、私たちが行きたいねと話していたのだけれど、執事からダメ出しされたのだ。


『アンネリーゼお嬢様は大変しっかりとされておりますが、まだ3歳でございます』


と。


冷静に考えたらそうだった!と、3人は反省していたわ。

ここから南の辺境伯領までは馬車で片道2週間かかる。私が飽きて騒ぐような心配は少ないとはいえ、体力的には無理があった。私自身もそんな頭はすっかりなかったため、執事さんナイスフォローである。


では来てもらっちゃう?って事で、お手紙大作戦。私も頑張って書いた。ミミズにしか見えなかったけどね。頭で理解していても、やはり身体は動いてくれなかった。


それでも、じいばあは大変感激してくれたようで、「すぐ行きます!」と、返事を出したとほぼ同時にあちらを出発したらしい。


「リーゼロッテさん、ごめんなさいね。忙しくしてしまったわよね。主人はもう、せっかちでせっかちで」

「とんでもないことでございます」

「早く会いたかったのだから仕方あるまい!お前もうれしいだろうが」

「それでも、迎える側は大変なんですよ。あなたは自分でやられないから気づかないのでしょうけれど」


お祖母様の一言で、お祖父様がウッと詰まる。

ちょっと厳つくて、まだまだ現役と言っても遜色ないような風貌のお祖父様が、お母様似の儚げに見えるお祖母様に窘められて、シュンとしているのが面白い。長年連れ添っている、漫才コンビのようだ。


リーゼロッテと私は目が合って、二人でクスクスと笑い合う。

そんな私たちを見て、お祖母様が嬉しそうに微笑んだ。


「本当に、仲良しなのね。ありがとう、リーゼロッテさん」


そう言いながら涙ぐむ。

お祖母様の肩を抱きながら、お祖父様もちょっと潤んでいる。


「……お二人には、わたくしの不徳の致すところで、多大なるご心配をおかけしたと思いますわ……。本当に申し訳ございませんでした」


リーゼロッテが眉を下げて、二人に頭を下げる。

……本当に黒歴史なんだろうな……。


「いや、頭を上げてくれ。わしらも人を見る目がまだまだだったと言うことだ」

「ええ、ええ、本当に」


自分の黒歴史をしっかり認識しているリーゼロッテは、そんな二人の言葉に曖昧に微笑んでいた。

ちなみに、私はお祖父様にしっかりとホールドされたままだ。


いつまでもエントランスにいても仕方ないので、執事に案内されながらいつもの庭園へと向かう。


「まあ、お庭はそのままなのね。またここに来られるとは思っていなかったわ……」


お祖母様が、また涙ぐむ。


「エレーナ様がお好きだったお庭なのですよね。わたくしもリーゼも大好きなんですよ。ねっ、リーゼ」

「うん!」


私もお祖父様に抱っこされたまま、元気よく返事をする。


「そうかそうか。アンネリーゼも好きか」

「うん、だいしゅき。エレーナママはね、すこししかおぼえてないんだけど、おにわでね、お花をみてるとみんながママのおはなしもしてくりぇるの」

「そうか…………エレーナママは幸せ者だな」


お祖父様も目を細める。


すると、そっと優しい風が私たちを包んでくれたような気がした。何となく温かさも感じて、みんなで少しの間そのまま佇んだ。口には出さなかったが、それぞれにエレーナママを感じたようだった。


「さ、お座りになってくださいませ!本日は、エレーナ様がお好きだったお菓子と、お二人のお好きなものを準備致しましたの。喜んで頂けたら嬉しいですわ」

「まあ!リエームのパイ!」

「お前は本当にそのパイが好きだよなあ」


わいわいと、お茶会が始まる。


話は恥ずかしいくらい私のことばかりで。

主にリーゼロッテが賢さを誉め称え(前世アドバンテージなのを知ってるくせに!親バカすぎる)、話を振られたマリアンとエリーも可愛らしさを讃えてくれる。

そりゃあヒロインだしね?エレーナママ譲りの美人ですけどね?それでも心がもにょもにょする。う、嬉しいけどさっ。


そんな周りのデレっぷりに、お祖父様とお祖母様もウンウンと相好を崩しっぱなしだ。


「ああ、何て楽しいのかしら。実はね、これでも二人から手紙をもらってから、少し躊躇したのよ。……アーロンへね、エレーナが亡くなってから何度か手紙を出したのだけれど。変わりないの一点張りで、仕事仕事で構えないとアンネリーゼにも会いに来ることも承知してくれなくて。今回リーゼロッテさんに迷惑をかけないかしらと心配だったのだけれど……。思い切って来て良かったわ。ね?あなた」

「そうだな」


ああ、ダメおやじは、エレーナママに関する全ての過去を拒絶してしまっていたのか。本当に本当に辛かったのだろう。今も、かもしれない。でも、お二人のこのようやく安心したような顔を見ていると、ダメおやじのそれは、やっぱりダメだろ、と思う。


「……亡くした事を認めたくないのでしょうね、旦那様は。きっと、お二人やリーゼを見ていると、そこにいるはずのエレーナ様がいない事実を突きつけられるようで、耐えられないのかもしれません。それは理解できますし、すぐに忘れなければとも思いません。でも、ご自身が生きていることを忘れてしまうのはいけないと、思うのです」


リーゼロッテは静かに話しながら、そっと私の頬を撫でる。


「何より、ご自身の傷が深いからと、周りを蔑ろにしてもいい理由にはなりませんわ」


リーゼロッテの真っ直ぐな眼差しに、お祖父様が深く頷く。お祖母様も眉を下げてそっと頷く。


「リーゼロッテさんの言う通り、最もだとわしも思う。思うが……あいつは、早くに両親を亡くしてな。元々感情を出さない子だったが、それから更に侮れまいと一人奮闘していてな。そしてようやく手に入れた安寧をまた失くしてしまったのだ。それを思うとわしらも強く言い出せなんだ。いや、今の立場のリーゼロッテさんに対して、ただの言い訳になってしまうがな」

「わたくしはいいのです。蔑ろにされようと何だろうと。結婚前にご迷惑をかけたことを考えましても、わたくしに好意を持つことは難しいと、自分でも思いますもの」


一斉に、侍女ズを含めた皆が遠い空に目線を泳がせた。そんなにやらかしていたのか、リーゼロッテ。


「コホン。ですからわたくしは諦めておりますし、求めもしませんわ。ただ、リーゼに関しては別です」

「りじゅまま、わたち、だいじょぶだよ」

「そうよね、無理強いはしないよ。ただ」

「奴は……アーロンはアンネリーゼに無体を働いておるのか?そういえば今日は何をしておる?」


お祖父様の低く鋭い声に、みんなの動きが止まる。


「じいじ!ちあうの!パパはいちゅもぶっちょーづらで、おうちにいないだけにゃの」

「……ほう?」

「ちなみに、本日はまだ魔の森近くに遠征中のはずですわ。お戻りは……」


リーゼロッテがダメおやじの予定を思い出しながら話していると。


「ち、義父上!義母上!」


ダメおやじ(いるはずのない人)が、転がるように飛び込んで来た。



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