小辰の夢 いち
こたつちゃんは呟いた。
やっぱり。
とりの、えいようが。
たりないのかな。
まいにち。
たまごをたべてるのに。
こたつちゃんはため息をついて、
うずら卵燻製の袋を閉じた。
さんたは真夜中に目覚めた。
かすかな物音を聞いたような気がした。
ぼんやりと揺れている、
明かりのほうに行くと。
こたつちゃんの声が聞こえてきた。
うまく。
たおれない。
もういっかい。
さんたは、かげからのぞいた。
こたつちゃんの後ろ姿が見えて、
ぐいっと何かを引いたようだった。
小さな背中の向こうで。
ザルを支えていた棒が倒れ。
ザルは床に被さるように伏せた。
よし!
せいこうだ!
あいつなら。
えさはやっぱり。
うずらたまごかな。
こたつちゃんは。
小さな羽をぱたぱたさせながら、
テグスを軽快に巻き取った。
あいつ。
とは?
さんたはそそくさと戻り、
寝たふりをした。
次の日。
かささぎ先生は、さんたに尋ねた。
さんたくん。
毎日暑いけど。
よく眠れていますか?
え?
それが。
あんまり。
眠れなくて。
目の下に。
くまができているから。
ちょっと心配になって、
聞いてみました。
目立つかな、
くま。
大丈夫。
おんなじ色だから、
あんまり分からないと思います。
何か心配事がある?
カクカクシカジカ
と、いう事があって。
そのうえ。
こたつが時々。
おれの羽を引き抜こうとするんです。
なぜだろう?
自分サイズの、
羽の服を作る!
って。
この前の着ぐるみに、
貼りつけたいらしくて。
あいつ。
からすになれると信じているのに。
なかなかなれないっていう。
ストレスかな。
そうか。
こたつちゃんは、
追い込まれているのかも知れないね。
何か対策を考えないと。
まずは。
さんたくんから。
今夜から。
リラックス効果があると言われている、
この黄色のふわふわとした、
寝袋に入って眠ってください。
足は出るから不自由ないと思います。
羽は、羽が入る位置にしっかり収めて、
守ってください。
念のため。
タイツもね。
オレンジ色で、
可愛いでしょう。
同じ色の。
くちばしカバーもありますよ。
先生。
ありがとう。
これなら。
ゆっくり眠れそう。
さんたは一式を身につけると、
黄色い柔らかなお腹を撫でながら、
嬉しそうに言った。
とてもよく似合ってますよ!
記念に一緒に写りましょう!
いきますよー!
かー!
らー!
すっ!
ぱしゃ。
はしゃぎ回る、さんたと、かささぎ先生を。
むったは遠目に眺めながら。
卵の殻をぶち破って飛び出してきた、
育ち過ぎのヒヨコを思った。
かささぎ先生はひとりになると、
考えこんだ。
こたつちゃんは。
まず間違いなく。
誰かを。
捕獲しようと、している。
いったい、誰を?
何のために?
つづく
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