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退廃の意味

⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム






「おーい、おーきてー」



おはようございます。相変わらず朝なのか夜なのか全くわからせる気がない真っ白な空間での起床をかましたオールでございます。



「起きる気ないんですかぁ今何時だと思ってるん?大惨事ですよー、なんちゃってーーあ」



私とは反対側を向いて寝ていたメリーくん。絶対起きてないから私が親切にも起こしてやろうと思ったら、ぐるりと首だけ回してこちらを見てきた。しかもめっちゃ苛立ってそうな目で。



『……』



「あっ、えっとー、これは、その、ね?いや、起きてないかなって思ったのよ。だから多少ギャグ行ってもいいかなーって、あはい、これはギャク判定じゃないと。ギャクと比べるのも烏滸がましいですよね、はい」



これはあれだ。朝からうざい事ばっかり投げかけられてめっちゃ気分悪い時の私だ。私もやられると腹立つからわかる。でもやられるのは嫌だけどやるのはいいと思う人間なんですよ。あ、死霊だった私。



「……と、とりあえずお風呂入ろっか!?朝風呂はいいよ!……私は経験ないけど」



『……Myu』



ほえ?あ、いいんだ。昨日私がお風呂使ってた時に湯気でも漏れてたかな?まぁ経験ないメリーくんからすると興味を引く対象だったのかもしれないね。



「よーしそれなら身支度も兼ねて体洗っちゃおー」



『Q?Qq?!Qー!Qーーー!!』



あれ?ちょっと引っ張りすぎちゃったかな。ごめんごめん。それじゃあお風呂の水あっためてと。







⭐︎⭐︎⭐︎ 【剋牙】 ヴェイガー








「……また、随分と、惨い、ものだな」



ベフェマの話を聞いて出てきた最初の感想はそれだった。色々と聞かせてもらったが、これは確かに聞かない方がいいとベフェマが言うのもわかる。



『まぁそんなに気にしてないし問題ないーの。終わったことだしね、なーの』



嘘だろう。今、また同じ種類の人間が現れて心を乱されているんだから。



『まぁそう言うことで、これは一種のトラウマにも似てるのね。心の傷はそう簡単には治せないーの。だから、貴方ができることはない。それでも情報共有は大事だからこうして伝えたんだけどね。なーの』



……そうだな。これは確かに俺も反論できない程度の理由になる。確かに、こうして共有してくれた以上、それはしっかりと活かすし、納得した以上ベフェマの心理が影響していつそのパフォーマンスが落ちるかも作戦に組み込むことに異議はない。



けれど、だからと言って彼らの協力を拒むのはやはりそれもできない。確かにベフェマも言う通り彼らはそう言うことをする人種ではあるんだろうな。それでもここで生き残っている以上、戦力になる可能性は高いのだ。と言うか、その力の一端はすでに見せられている。



「なら、ベフェマは……彼らとは、別行動、だな」



『それがいいと思うーの。幸いにもわたしは暗殺者ビルドで結構単独行動に向いているし。食事が必要になるのは欠点だけど、その分の働きはできるのよー』



「わかった。では、彼ら、とは、基本、的には、俺、一人、で、対、応する。ベフェマには、別行動で、他、の目標を、達成、しても、らおう」



『あいあいさーなーの』



そうと決まればベフェマには何を割り当てればいいのか。余り討伐系などの目立つ行為は避けないとだろう。やはり暗殺者らしくこっそりと動ける人物が適しているような任務がいいんだろうな。この状況で当てはまる課題があるとすれば……。



「ふむ、工作が、いい、だろうな」



『それって、オールさんがいっつもうんうん唸りながら考えて、結局いっつも爆砕されてる作戦のやつなーの?正直あんま意味ないと思うーの』



それオールが聞いたら泣くぞ。



「工作、というよ、りは、行動、制限、が、近い、はずだ。それを説明、するには、まず朱雀の、性質、に、着いての説明が、必要なの、だがーー」



今回の工作は例によって例の如くボス格を倒すために必要な作戦、それの達成を裏でやってもらおうと言うものだ。けれど、今回のはいつもオールがやってる積極的に相手にダメージを与えるものではなく、()()といった方が正しいだろう。



「……あるいは、回復、逃走禁止、だな」



『ん?』



「あぁ、すまん。説明に、戻ろうーー」



この工作はぶっちゃけなくても変わらない。俺たちがやることは変わらない。別に工作地点に朱雀を呼び寄せたりすることもしない。



ただ、朱雀が行うかもしれない()()()()()を、阻止するための工作だ。



「ーーと言うことだ。説明は、こんな、ものだな。何が、言いたいか、わかる、な?」



『まぁ流石にそこまで言われたらほぼ答え言ってるようなものなのねー。つまりーー』



溶岩地帯を抜けて、岩石地帯も抜けて、拠点の洞窟から火山を中心に円の如く回っていった俺たちは、説明を行いつつたった今工作に必要なことも同時に並行しておく。ベフェマ一人でもできなくはないが、二人でやった方が早い。思ったよりも()()()が多いからだな。



「手際、もいいな。一人で、ここまで、できるなら、理解はほぼ、できてると見て、間違いなさそうだ。……任せるぞ?」



『ふふん。これでもスペックだけならいっつも高い高い言われてるーの。もちろん、任されたーの』



それってスペック以外がダメって言われてんじゃないのか。



「ドラゴン、であって、良かった。こんな、時は、巨体が役に、立つな」



『おかげさまで嫌いな奴らに見つかる可能性も高いけどねーなーの』



よし……ここも、これでよしと。



「環境変化は、そこまで、見たい、だな?朱雀の炎、が、散らばってるが、それ、は、大丈夫、だろう」



『そうなのねー。わたしはここ来るの初めてだからこう言うものだとしか認識してないけど。それにしても本来は探索が目的だったんだっけね、なーの。色々やってて忘れてたーの』



「そうだな。それ、と。ここから、どうする?今、言った通り、明日には、もう、一時別れる、が、今日、もう別れて、おくか?」



『そうねー。今日でもう別れておくの。あいつらに見つからないならレベル的にも問題ナッシングなのね。あ、定時連絡はするーの?』



「『強制同調』が、長距離、使える、なら、いい、のだが。そうで、もないだろう?」



『そうなのよねー。近い距離での使用なら『念話』よりハイスペックなんだけど……それが使えないなら、『念話』もダメらしいし仕方ないのね。不便になるけど、日程決めてまた合流して連絡するのね』



「わかった。それじゃあ日程は言った通り、に。食事は、忘れる、なよ?」



『当然なのねー。んじゃ』



そうして俺たちは別れた。定期連絡は前回ほど簡単にはできないが、必要なことだ。工作を遂行してくれることを願っていよう。それよりも俺は……あいつらの対応だな。なんとかなるといいんだが。








⭐︎ ラプラス総統演算領域 深度7 静謐の祭壇








「えぇ……嘘でしょ。そんなことある?たかだか神格すら持ってない程度の連中でその条件に引っかかれるんだ……引くわぁ」



異形を動かしながら、レヴィティは今日も祭壇で作業に勤しんでいた。しかし、真面目に勤務するレヴィティでも当然ミスだってある。神だって言うほど完璧じゃないのだ。



「うぇえ……?嘘でしょ、その状態でフェーズ進行するの?あぁでもそっか、雲耀虎光も表の箱庭からは消えちゃったもんね……監視が行き届いている異空間は青の龍宮しかないし、仕方ないか……でもどうしよう、ここで白虎が死霊ちゃんに勝っちゃったらどう収拾つけたらいいんだろう……えぇ?」



そんなレヴィティが結構本気で驚愕しているのは、白虎……箱庭のゲームクリアには討伐されることが必須とされる条件の一つが、本来使用されるはずのないスキルを、いや、正確にはスキルに本質が行使されたからだ。



「うぅ……いや、ダメだね。アタシがここで止まるわけにはいかない。パズルのピースに必要なのは、このアタシの計画、それの完遂だけ。諦めちゃいけないんだ」



今までのレヴィティなら一度ここで休憩を挟むなりなんなりして時間を置いていた。それを、今回はそのままなんとか頭を捻ろうと努力し続けている。



それは、勤勉と言えるかもしれない、或いは憔悴といえるかもしれない。けれど、どちらにせよここで継続を選んだ彼女は、とあることを見つけたと言う事実だけ。



「あれ?死霊ちゃんは……セラスにいるんだよね?そこって確か……運次第だけど……霧の迷宮(地神の吐息)の中心に行ければ、特殊シナリオが始まる。このシナリオ、ルシエルが作ったやつだっけ。これを成功できれば……うん、いける。シナリオ完遂までいかなくてもいい。創天の城(天神の座)まで行ければ、うん!」



焦って歪んでいた顔に希望が灯る。それは、予想外にもことがうまく運びそうに行く目処が立ったからであり、明確にやることが示されたからである。



「そうと決まれば善は急げ……死霊ちゃんはまだシナリオを発足していないけど、今の位置的に高い確率でシナリオは起こる。そしたら、メモリーにちょっとだけ思考誘導をかけて……おっけ。これで、創天の城までは到達できる、はず。城内に入るところまでは……ちょっとサポートするか」



するべきことがどんどんと組み立てられていく。どこかの死霊が予想外にセラスなどという彼の鍛錬場に入るための()を持っていたからこそこんな展開にこそなったが、その器があるからこそ、彼女はシナリオを完遂させようと全力で取り組む。レヴィティにはわかるのだ。だって身近に近い存在がいるから。



「貴女もルシエルと同じなんでしょ?じゃあ全力でシナリオ成功させてくれるよね?どうもルシエルみたいに人助けに命かけてます!みたいな善人じゃなさそうだけど……まぁただの善人がここまで生き残ってるわけないしね。どっちにしろやってくれるなら利用しない手はない」



この前までは誰かのサポートが入らないとうまく箱庭の運営をこなせていなかったレヴィティだが、ここにきて漸く頭が冴えてきた。



「そうだね……相性的に、このシャーメル?とかいう個体を使って……いいね。これなら上手く誘導できそう」



どこかの死霊が見れば「お前がやったんかそれぇ!!」と言う内容を全力で引き伸ばした長文のお気持ち表明を長時間連打(確定演出)になるだろうその作業をポンポンとレヴィティは進めていく。そして……。



「よぉし……できた。これでお城まではついてくれるはず。難易度もちょっとだけ調整しておいたし、高確率で城の内部までは到達するはず。そうすれば、あとは幻影(シュヴァルツ)が……」



レヴィティは久しぶりに難題を自分の力で解決できて満足していた。ここ最近は適当にあしらわれたり、自分の管轄領域を勝手に弄られたりして色々とストレスが溜まっていたのでその満足度合いは凄まじい。



けれど、彼女は気づいていない。そもそもその死霊は、レヴィティの予想を超えてきているからセラスなどと言う特殊な領域に足を踏み入れているのだと。そして、その予想を飛び越える行為は、別に一度だけとは限らないのだと。






⭐︎⭐︎⭐︎ 【剋牙】 ヴェイガー







「ハァイ⭐︎」



打ち合わせ通りの日にちで、打ち合わせ通りの時間に、奴らはやってきた。相変わらずこの世が自分中心に回っていると確信してやまないと言ってるような顔のハンターと、何考えてるか読めないフォシュ、そして不気味なアプトンだ。



「あらぁ?今日はあの蛇ちゃんはいないのかしら⭐︎」



『はい、彼女、には、調査、に、行って、もら、ってます。彼女、とは、朱雀戦本番までは、合流、する予定が、ないです』



「ふーん?連携が取れないんじゃーないの?それじゃ。なに?あの子使う気ないのかしら⭐︎まぁ見るからに弱そうだったもんねー⭐︎」



『……ハンター。彼女は強いよ』



「貴女の意見は聞いてないのよーフォーシュー?」



『あっそ』



『今回、は、連携、確認、のため、の、協力戦闘だと、いうことで、問題、ないですね?』



「もっちろん⭐︎」



他の面々も頷いたということで、ひとまずは進行できそうだ。何かとやかく言われる前にさっさと出発してしまおう。



『それでは、行きましょうか』











「さぁて。あの子が相手でいいのね⭐︎」



『まぁ、問題、は、ない』



「はぁい。それじゃ始めましょ⭐︎さっさと終わらせちゃいましょう、アプトン」



『はい!『迷装』』



事前にマークしておいた場所に向かうと、目的である鳥型の魔物が空を悠々と飛翔していた。対朱雀の連携が確認なので、まぁ順当な形だろう。ただ、問題はまだ作戦をある程度でも練る前に戦闘を開始されてしまったことだな。



「アタシがやるからアンタらはいつも通り合わせてよね〜⭐︎あ、ヴェイダーさん?だっけ?もそういうことだから慣れてよね⭐︎」



な、なんて傲岸不遜な……本当にベフェマとかと接触を控えさせて正解だったな。聞いた話とピッタリ当てはまってしまう。こんな人間が存在していたのか……人間関係が最低限だった前世インキャの俺にはわからない世界だ。



それはそれとして行動が予測不明だからこのままだと連携も何もないのだが。そう思い俺が一人頭を抱えているとフォシュが近づいてきた。



『……言いたいことはわかる。ハンターは近接戦が強い。一度近づければ後はいつも通りやればいい』



『どうせあいつに誤射なんて当たらないから……』そんなことを言うだけ言って彼女はさっさと帰ってしまった。ハンターみたいに明らかに関わると不利益を被る人間ではないだろうが、別の意味で彼女は特殊だな……。



まぁ、マイペースな人間なだけか。何でもかんでも特殊だなんだと言うのは良くない。そう言うのは相手を理解しようとしないというよくない態度だ。改めなければ。



「おっしゃぁああ゛ああ゛ああ!ぶち殺してやるぜ⭐︎」



『……カレー食べたいなぁ』



『うひひひひひ……あっ!やるぞー!』



……やっぱ理解やめようかな。そう思うほどに彼らは常識はずれで、けれど実力も隔絶していた。



カレーを食べたいとほざきながらフォシュが粘ついた炎を放射し、それに絡まれて墜落した敵に野太い声で近接格闘をハンターがかまし、アプトンが虎視眈々と致命的な一撃を狙っている。完成してるじゃん……。



『とりあえず……やるか』



『水鉄砲』で水弾を生成。大きめに作ったそれを破片に分解。ショットガンの如き範囲と威力でもがいている敵の脳を揺さぶりつつダメージを与えていく。



「お?やーるじゃん⭐︎」



反応したのはハンターだけ。けれどフォシュも頷いているし、一応は認識してくれているみたいだ。戦闘に連携自体はできている様だな。まぁアプトンだけは本気で何考えているかわからないが。やはり要注意か。



『早いな……』



あれよあれよという間に鳥型魔物は速攻で打ち倒され、意気揚々とこちらへ戻ってくるトリオ。正直言って、少しばかり舐めていたかもしれない。しっかりと役割が決められており、それぞれがその役割に異を唱えるわけでもなく従順にそれに徹している。



「ふっふーん!アタシにかかればこんなものよね⭐︎どうよ、これなら朱雀さって余裕っしょ?」



『いや、それ、は、違う。余り、にも、格が違う』



「あっそ」



うむむ……確かに強いのはそうなんだが……人格面の問題は本当にどうにかならないのだろうか?これさえなんとかなればなぁ、と思いながらなんとかハンターをなだめすかして次の獲物のところに向かおうとするとフォシュがこっちを見ていた。



『…なん、だ?』



『……………もし、万が一だけど……』



スッパリ結論だけいうフォシュにしては珍しく言葉を濁している。どうしたのか。



『………朱雀戦。私だけ、生き残ったらーー』



「何してんのーー?!早くきなさいよねっ!」



本題の部分を告げる前に、先に次の獲物の場所に向かおうとしていたハンターがこちらに呼びかけてきた。そばにはアプトンもいる。早く行かないとだな。



『それ、で。なんだ?』



『……いや、別に。案外連携も取れるじゃん』



明らかに違うことを言ってそそくさとフォシュは向こうへ走り去ってしまった。フォシュだけ生き残ったら、か。色々あり得るから予想がつかないな。けれど、万が一の場合を想定して、身構えておくくらいはしておこうか。



『ひとまず、今はこちら優先。連携して少しでも生存の確率を上げるとしよう』



次の目標は天空甲羅(仮称)だ。さて、珍しいタイプの相手に、あいつらはどう対応できるのかな。

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