後で⭐︎
⭐︎⭐︎⭐︎ 【無認遂行者】ベフェマ
わかっているの。ここで悪いのはわたしで、過去のことを拗らせてヴェイガーに気を遣わせているのもわかっているーの。けど、わかっていてもやっぱりアレルギーのように拒絶反応が出てしまう。蛇だからまだ表情がわからないことが救いだったと言うことなのね。
……ふぅ。わたしが熱くなるのはダメなのね。こうやって感情に任せてさっきを撒き散らすのはオールさんでいい。わたしがやっても碌なことにならない。わたしは、オールさんを抑える方が性に合っているの。
「………いいだろう。俺は、お前と、オールを、優先、しよう」
苦笑が漏れそうになって、それを抑える。ここで笑ってもきっと凄みを与えてしまうだけだ。わたしは気を使う立場であるべきなのであって、気を遣われるのはダメなーの。
『いいの、問題無いーの。荒っぽくなってしまってごめんなさいなーの。冷静さを欠いても良いことはないって知ってるはずなんだけどね、なーの』
「……そうか」
あぁ、これはまだ疑われているのーね。仕方ないーの。うーん。もう発作みたいな拒絶反応は収まっているのだけれど、信用が足りてないのね。だから、わたしがもう大丈夫と言う証拠を見せないといけないのだけれど……。
『まぁ、怒っちゃったお詫びもあるし……軽くわたしがハンターを嫌いな理由を教えてあげるーの。まぁまぁ、そんな強張らないでーの。わたしが学生だった時のことなんだけど……』
⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム
「ここは、どこなんだろうね?随分と近未来的な構造をしている」
『Q?』
遠くにあった城の影は、随分と明確にその細かい部分が見えるようになってきた。城の周りは……これは、城下町なのかな?それにしてはなんだかとてもミスマッチな感じだなぁ。
最初に言ったように、この都市は近未来的だ。都市の至る所には何か金属製の棒……レールかな?それが都市全体を放射状に広がっており、上から見たら蜘蛛の巣のようにも見えるだろう。
「このレールは恐らく……移動手段?だったのかな?駅とかそれっぽいものもないけど、ありそうだよね。未来の世界ならこの棒を使ってびゅーんって移動する感じの手段が」
『Huh?』
「だからそれどっかの猫連想するからやめてって」
下手な口笛だね!なんですか『pーpー』って。どんな音だよ……。と言うか。
「随分芸が増えてきたね……知能上がったりしない?インテリジェンスってなんのことかわかる?」
『Huh?』
んのっ……!?
「おんどれぁそれやめろ言うてるやろがー!!」
『M゛!?Mea!Meaow!!?』
ほぅれコメカミをぐりぐりーっと……って。
「そんなことしてる場合じゃないんだって……コントなんかしてるんじゃありません!何すかその目?やるよ?私は情け容赦なくコメカミぐりぐりするよ?この私の目が無機質になると言うことはそう言うことだよ?」
よしよし良い子だ。さて探索を再開しよう。
「へー。ネオンライトが一杯だー。あれ?これ本当にネオンライトか?そもそもこの空間ってちゃんと元素存在してるの?全部イマジナリーな元素とかだったりしない?」
なんだよイマジナリー元素って。虚数とか架空の存在じゃなかったっけ?学がないからわかんないなぁ!??
「むむむ……学力がないせいで不快な気分になりました。お気持ち表明爆撃します。まぁ迷惑になるだけだしやらんしできないけど」
しっかし本当に発展してるなぁ。ネオンライトっぽいものを発行させているには一部の看板?みたいなものだけだけど、周りに多少の植物があるのにも関わらずそこら辺の外壁とかに汚れとかは一切見れない。そう言う材質って言ったらそれまでかもしれないけど、そんな万能の資材なんてないだろうしなぁ。
「ちゃんと飲食店ぽいものとかあるんだねー。あー、ガ⚪︎ト行きたいなぁ。チェーン店の味が恋しい」
これまた道路らしき整備された道を歩きながら私は周りの建物を観察していく。なんだか日本と街の配置が似ているなぁ。アメリカとかだと飲食店とか家とかは一箇所にまとめられてるらしいんだけど、この都市はどっちかって言うと色んな建物が無規則に立ち並んでる感じに近い。
「うわ、この建物高そうだなぁ……なんなんだろう?これの隣の家って……なんか、いや、この建物の用途によるけどどうなんだろうなー?まぁ建てられてるってことは需要あるってことだし良いのかな……」
やばい。楽しい。絶対ここでやるべきことは違うってわかってるのに抗えない。くっ、これがまさかこの都市のギミック……!?(言い訳)なんてことだ、ここまで強力な心理影響を与えるものがあるとは……!!
「油断していたよ……ッ!」
『……Quu』
隣を歩いているだろうメリーくんの方は見ない。なんかもう諦められたようなため息吐かれてる気がするけど気にしたら負けだ。えぇい!人生は楽しんでなんぼなんだよ!!やることは未来の私がやるの!!だから今の私は楽しむの!
「うわぁ!すごい、なにこれ!遊園地!?街の中に遊園地あるの!??おぉおジェットコースターだ!!動くかな!?動くかな!!」
『………………………』
⬜︎
やってくれたな過去の私。まさか観光に丸一日費やすとは思わなかったぞ。お前は最低だな。もう少し先を見た行動というものができないのか!!先を見越さないと乗り越えられるものも越えられないんだぞ!!
『……………』
「あ、あー。め、メリーくん?いやですね?私もまさかこんなかかるなんて思ってなくてですね?いやでもほら、たまには息抜きしないとパフォーマンス落ちるから!これも意味あるんだって!!そうだよ、全部意味がある行動なんだ!私悪くな、あいえ、なんでもないです。すみませんでした」
『……モウ、寝ル』
「あ、もぉちろんでございます!!実は私いい場所を知ってましてですね、あっちの建物なんですけどホテルがあるんですよ!これがもうアパ⚪︎テルみたいな構造して……あ、とりあえず見てから判断するタイプ?いやいやいや文句なんてございませんともへっへっへ……」
やっばい。めちゃんこ怒ってる。やっぱり欲望に任せた動き良くないね。三下ムーブで誤魔化してるけどこれでも結構気まずかったりする。明日はなるべく、って言うか完全に探索フェーズに移行しないといけないかな。あれで色々とメリーくんにはお世話になってるんだし。
「……うん、やっぱりちゃんと謝っておくよ。ごめんね」
『……M゛』
どうしたメリーくん、理解できない化け物を見たような顔をして。私は死霊だけど幽霊ではないんだよ?心霊現象ではないんだから。
「私が謝るような真面目な根性してないってね、うん、あはははははは」
『……Myu、M』
「私が極悪非道の悪霊って言いたいんかコラーっ!やんのかオラーっ!それとこれとは別だぞオラーーっ!」
『違ウ!違ウ!』
「あっそうなの。じゃぁいいや」
『………』
「私がそんな素直な霊な訳ないって思ったりしてない?いや私も真面目にごめんとは思ってるの。冗談じゃないんだからっ!悪かったね性根捻じ曲がってて!」
『……Meaow』
まだ納得はしてないみたいだけど、理解はしてくれたみたい。それならひとまず落着といこう。どちらにせよ今日はもう探索をするには疲れちゃった。遊び疲れただろうが疲労は疲労なんだよね。そこ、遊んだくせに楽するなとか言わない。私だって常に周りに注意を払うのはストレス溜まるんだから。
「たまには、ね?」
『M゛?』
「あ、なんでもないです」
今日は頭が上がらないなぁ……お、ついた。
「うん、ここだね。外は植物が張り付きまくってるからあんまり綺麗には見えないだろうけど、昼見た時にはすごく内装が良かったんだよね。エレベーターっぽいのはあったから使えないけど、高いところの方がいいから階段使って上行こう」
ミッ!とメリーくんが返事をし、先にホテルに入っていく。それを見て後ろから私もホテルに入る直前、何かがキラリと光った。
「……」
咄嗟にメリーくんをホテルに押し込み、外全体を警戒する。けれど、なにも起こりはしない。幻覚?いや、一瞬だけど、あれだけ大きく光れば私だって錯覚とは思わない。それに何より、ここにきて反応が鈍いはずの『気配感知』にも反応があった。鈍くなってるそれでも気づくと言うことはそれだけ大きな変化、気配が動いたということ。
「ここで『気のせいかー』なんて鈍感系主人公みたいな真似はしない。こちとらか弱い子猫がいるんだぞ。容赦なく攻撃してきたらあれだよ。世論が許さないよ、ここに世論の目があるとは思わないけど」
適当なことを言っているのはなにも呆けているわけではない。少しでもメリーくんのストレスを減らしてリラックスさせる目的もある。これは今までの戦闘とは違う。こちらから仕掛ける側でも、真正面から戦うものでもない私が戦ったことのないタイプ。
「暗殺者タイプねぇ……ベフェマにもっと弱点聞いとけばよかった。もっとみんなのビルドの長所短所知っておくべきだなぁ。それはそれとして今は君の相手だね。わざわざこちらが気づくように手間かけたんだ。狙いがあるんでしょう?」
暗殺者。『気配感知』がうまく機能しないこの空間では特に厄介な手合い。
「さて、どう調理しようか……」
またキラリと光る。さっき見た光より強い!これは、勘だけど近いってこと!!ならば!
「ショットガン!」
散弾銃を一帯にばら撒く!連発してやらぁー!!
「!!掠った!そこかぁ!!」
即座に刀を変成、ショットガンを撃ったから反動でちょっと動きづらいけど『姿勢完全制御』でそのまま疾走!一直線に「違和感」へチャーーージッ!!
『ーー!』
「ハッ!シャーメルのじゃない、それも『光魔法』ですら光弾なんて捌くの余裕ゥー!」
あ、掠っ……私は肉を断たせて骨を断つ戦法の死霊だからこれは予想の範疇!つまり無問題!
「この私に想定外の文字はなぁあぁぁあい!!」
さぁあその光学迷彩剥ぎ取った後にはなにが残るってのかなァ!?カメレオンか?!割とグロい系の魔物とかでもモーマンターー
『『光魔法』ーートゥインクル』
ハァイ。オ元気、デスカ?シャーメル、サン。
「(゜ω゜)」
『Σ(゜д゜lll)』
あっ、全身が光って……もしかして自爆攻撃?
「うぉおお今が最高の好機ィ!そしてこれを逃せば自爆直撃ィッ!!」
見よ!これが私渾身の背⭐︎水!
「短期決戦だから使えるスキルないけどなんとか通れーーー!!昇気ィ!!」
説明しよう!昇気とは!下段からにっくきこんにゃろーを袈裟斬りにする技のことです!
「つまりくたばれふぁ⚪︎きゅー!!」
『Meaooooow!!!』
お!?なんか、体に白い雷みたいなやつがバチバチと付いて?
あら、気づけば天使さんのマネキン顔がドアップに。
「アイエエエ!?ナンデ、の前に兎に角スパコーーン!!」
発光が更に増す。光がいよいよ膨張して爆発しそうになって……その光が霧散した。
『条件を満たしました。レベル78へ上昇しました。』
『条件を満たしました。『風水刀然』レベルMAXへ上昇しました。』
『条件を満たしました。『刀術』レベルMAXへ上昇しました。』
『条件を満たしました。技能『刀術』及び技能『風水刀然』に統合進化が可能です、複数候補が存在します。選択してください。』
「はぁ〜〜〜……つ、っかれたーー!」
勝負の時間で言えばそんなに長くない。精々が数十秒程度の戦闘。けど、『高速整理』スキルも相まって随分と長々と思考していた私からすれば緊張でストレスもマッハだった。顔も真っ青だよ。まぁ私はもう血通ってないから常時青々しいけどね。表現おかしくない?
「それにしても……ふふふ。くふふ」
よーーーやく勝てた!愚かなりシャーメル、距離を詰めたらこちらの方が強いんだよ!きさーまが勝ててるのは距離をとった上で馬鹿力の魔法を連発するからなのだー!!
「マグレだろうがなんだろうが勝ったのは事実。これを糧としておこう」
『Q』
「あー……それにしても危なかったのは事実だなぁ。あそこまで近づかれてもまだ自爆魔法発動寸前まで行くんだから困るよねぇ」
『Q!Meaow!!』
「ん?どした?」
『モウ、ヤッ!ヤーーッ!!』
えぇ?ちいかわかな?それともきんに君?いややだなメリーくんが筋肉ムキムキとか。ここは可愛いしちいかわか。いやそうじゃない。メリーくんが癇癪起こしちゃった。流石に一日中私のつまんない観光に付き合って、そのあと寝る間際にトラウマの再来。控えめに言って地獄かな?残念、場所的に天国の方が正しいんだよなぁ。この天国世紀末すぎでしょ。
「わかった、わかったから。ほら、角部屋広いからそこ行こう。水道通ってるか知らないけど早く行こう。ほら、私が抱えてあげるから」
ぐずるメリーくんを両手で抱えてよしよししながら階段へ向かう。子供かな?子供だったわ。しかも待遇的にぐずって当然のものだわ。
「ほーら、着いたよー」
階段をメリーくんの重さも加えてヒーヒー言いながら登り切って、これまたヒーヒー言いながら遠すぎる角部屋に向かうことしばし。このホテル大きすぎでしょ……なんでこんな広いの?何?観光地なの?そう言えば私も今日ほぼ観光しかしてなかったわ。あんだけ魅力が多いなら当然だねこの広さも。
「現代人ならぬ現代霊であるこの私が華麗に自動ロック式ドアを開けて……むっ、これ、腕だけじゃ、開かな、っ、このっ!おんどれぁ!!」
おっと失礼。仮にも成人女性として出してはいけない声でした。あれ?そう言えばこの叫び何回も言ってない?戦闘中だしセーフ判定にしておこう。
「はーっ……はーっ。お?おお!!見てみてメリーくん!!これ本当に綺麗だよ!」
『Quu?M゛!?Mea!!』
ここマジで観光地用ホテルだったのかな!?
そこには、霧に覆われていてもなおその存在感を大いに主張する和風の城と、それを囲むように広がる金属のレール達。そしてその更に更に先を囲む巨大な都市。幾つかは光っていて、それだけでも特有の美しさがある。
「すごいなぁ……退廃した都市って特有の綺麗なものがあるんだねぇ……」
『Mea……』
「わぁ綺麗……あ、じゃなくて。ほら、メリーくんもう寝る時間でしょ?良い子良い子ほら永眠しな、ってあ、ごめん!嘘です!メリーくんは大人ですっ!」
いたぁい……頭引っ掻くのは違うじゃん。でも寝るって言ったのそっちじゃん。
「まだこっちみておく?私お風呂とか機能するかみてみたいんだよねぇ」
今見てみたら、このお風呂とかトイレとかは、普通の人間用のやつだった。見覚えあるやつで安心した反面、この都市が人間によるものなのかいまいち自信が持てないしなんか怪しさすら感じるものがある。
「まぁ今はそこらへん後だよね。久しぶりに寝れるんだし、お風呂とか使えるなら万々歳だよね」
さて、水道とかは……お?え!?嘘、マジか!使えるなんてことあるの!?絶対使えないと思ってたのに!!退廃してるのに都市機能とかは使えるって少々ご都合主義すぎませんこと?え、でも、本当に?マジ良いの?
「ぅぅうう……やったーー!!」
おーふろ!おーふーろ!!わぁい水出る!わぁいお水あったかい!!
「血塗れのワンピースも洗えるなぁ……」
まぁここは血飛沫の代わりに光が散るだけなんですけどね!赤い液体どころか赤色のものすら何もない!白と光の黄色だけ!
「改めて考えると随分と面白味のない世界だなぁ……私はここ見つけられて良かったと言うべきか」
チラリとお風呂に入る前にメリーくんを見る。本当はお風呂に入れてあげようかとも思ったけど、猫科動物ってそんな水好きじゃないらしいし。それにどう言う原理なのかメリーくんは常に発光してるしその光が一瞬強まったかと思うと汚れが全部消えているのだ。
「あれって白虎が使ってた『貴き光』なのかなぁ……?」
お風呂に浸かりながらゆっくり考える。メリーくんのこと。でも久しぶりのお風呂だとなんかポカポカしてきて色々考えるのがだるくなってきたし、やっぱりそう言うのやめてぼーっとすることにした。
「ふぃー……気分がだいぶ良くなったわー」
やっぱお風呂って偉大なんだなーって思いながら部屋に戻ると相変わらず部屋は暗くて、そんなんだからかメリーくんはもう寝ていた。
「流石に連日あんま寝ないなんて死霊でもないなら無理だよねぇ……お疲れ様」
ベッドでぐっすり寝てるメリーくんをちょっと撫でてから私も横になった。死霊だから寝なくてもパフォーマンスは常に最大を維持できるようになってきたけど、それでも寝れるならやっぱり寝たい。
「今日だけ、ね?」
そんなふうに言い訳して、私も久しぶりのまどろみに身を任せた。




