メリーくん
メモリー→メリー
(明察):天才では……!?
(裏):なんてことだ……!!
( ):ブルータス、お前もか。
(裏):出た、元ネタ知らないくせにとりあえず使うにわか。
( ):あ、いつも通りの毒舌に戻った。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム
「それでさ、メリーくん」
『M゛?』
私たちは未だ霧の中をまた彷徨う途中にいた。そこで、黙ってついていくのもなんか嫌だったので、ある程度言葉は通じるらしいメリーくんに話しかける。ちょっと気になることがあったから。
「メリーくんは私についての印象はどうなの?私のことって覚えてるの?」
メリーくんの成長体、まぁつまり白虎は、私と一度戦っている。あっただけのこととか、蹂躙されただけのことを含めれば、3回だ。その時の記憶を覚えているのかどうか。
メリーくんは、記憶を統合するために現れた、いわばシナリオのキー。だけど、そんな彼はぽっと出てきたわけだから、いまいち白虎とは結びつけがたい彼がどのような立ち位置にいるのか掴めていないのである。今の所精神的に幼くなった白虎として推測しているわけだけど、彼の記憶がどうなっているのかまるでわからないのだ。
『……Mmm』
メリーくんは私の問いに首を傾げただけだった。その後トテトテと近寄ってきて、私の膝辺りをポンと柔らかく叩く。身長的に差があったからそうなちゃだけで、もし私と同程度の身長があったら肩を叩いていたのかな?
「つまりメリーくんとしてはそこまで私が憎いわけでもないと。嫌ってはないと判断していいかな?」
『M』
ミ、と回答しつつ頷いたメリーくんを見てやはり確信する。この子はイベントのキー的存在。だから、ほとんど記憶も何も与えられていないのだと。恐らく、私と戦った白虎の記憶は今もあの培養液に浸ってる白虎の方に残ってる。
「それなら君は何なのかね?」
『Mea?』
シナリオ概要には、彼が記憶を統合し、完全体になったら白虎として私と戦闘をする、と言うふうになっている。私の解釈では、記憶を完全に取り戻したメリーくんは、培養液に浸ってる白虎とフュージョン!して元の姿に戻るのかなーって思ってるんだけど、そうなるとメリーくんは白虎の何に当たるのかな?と。
「うーん。君は……器なのかな?白虎は記憶を剥奪されたと言っていた……その抜け殻が私が戦った白虎。考えるなら割れたお皿、かな?」
私が考えるに、白虎は大部分の記憶を一度取られている。その時、記憶の器的なものも一緒に大部分が取られちゃったんじゃないのだろうか?抜け殻にそれで残ったのは少しの記憶と、箱庭での記憶、それとそれらを受け止めるために残された小さな器。お皿で言えば破片みたいなものしか残されていない。
「だから記憶と一緒に取られちゃった白虎の大部分のお皿、それが君、メリーくんってことなのかな?」
『M”〜?』
まぁ流石によくわからないか。私だってよくわからないし、脳科学とか構造からしたら「は?何言ってんの?」状態だろうしねー。海馬、だっけ?脳の記憶領域が確かそんな名前だった気がするけど、そこを肉体的に半分こ!してるわでもないだろうし、そもそも半分にしたって記憶が綺麗に半分になるわけないし……。
「まいっか!ファンタジーな世界に物理法則は通用しないのさー♩わからない同士、仲良くしようや⭐︎」
『Meaow!』
えっ、何で引っ掻くの?!あ!私と同類扱いされたのが気に入らないのか?そうなのか!?くっ、このっ、い痛い!?痛いって!!こんにゃろっ、今日という今日は!
「ふはは身長の差は偉大なりィ!」
『M、Mmmm……』
大人気ないとか言うな。勝てばよかろうなのだァア!
「………あ?」
そうして私が精神的には子供相手に最低行動を連発していたその時だった。
『M!!Meeeea!!』
「記憶の欠片やんけー!!」
それは、祭壇のような場所だった。霧があるからかいつのまにか足元は石畳に移り変わっていて、その多くには洋風な祭壇と、そこにミスマッチな感じの青い鳥居が聳えていた。そして、祭壇の上に輝く記憶のかけらも。
「よーし二つ目ゲット!相変わらず取り込みは一瞬なんだね……いや、別に問題ないんだけどさ、こう、なんか演出とかないの?あれだよ?記憶喪失系主人公ものなら重要展開なんだよ??」
『Q゛』
んぉ?新しい声出てきたな。また随分と可愛らしい声ですこと。いいなぁ、私も前世でペット飼えてたらな……私わんちゃん派なんだけど、メリーくん見てると猫もありだよねーって思えてくる。まぁどっちにしろもう私には飼えないし、私自身ペットの飼育には向いていない性格してるなぁとは思ってるんだけど。
「夢を見るぐらいいいよねー……あ、そういえば」
記憶を新しく手に入れてご満悦なメリーくんに、私はふと思ったことをぶつけてみる。
「メリーくんってさ、記憶どんどん手に入れてるじゃん?それって私が見たりはできないの?」
そういう時、メリーくんは如何にも「何言ってんの?」というような顔を見せた。それは、できもしないことに呆れている、と言うよりは……。
「え、もしかしてできたりする?」
『M゛』
こう言う展開でならそこまで珍しくもないストーリー考察の手助けを、私は見事に見落としていたと言うわけだ。なんてことだ、私はバカだった?はいそこ、今笑ったな?その心、笑ってるね??あれ、このネタ、通じるかな……はっ!一体私は誰に向かって話しているんだ。やべーやつにはならないよう細心の注意を払っていると言うのに……。
「と、とにかく!見れるのならちょっと共有して欲しいんだけど、いいかな?」
なんかヴェイガー達がやべーやつに絡まれてる気がするのだけど、幻覚なので無視する。エラー?叩けば治るだろ!残念ながら私は昔のビデオじゃないんだよなぁ……昔の人は何で叩けば治ると信じてたんだろ?パワータイプが多かったのかな?筋肉ムキムキマン?
「ムキムキ〜。あ、すみません、何でもないです、はい、始めてもらって」
どこか呆れた雰囲気を漂わせるメリーくんに催促されて、改めて私はメリーくんと目を合わせた。すると、メリーくんの体から光が漂い、淡く全身が青白く光る。これは……
「これって、白虎の『光明ーー」
⭐︎⭐︎⭐︎ 【無認遂行者】 ベフェマ
『……それでは、また、3日後に』
「はぁい⭐︎それじゃ、またねー⭐︎」
知っている空気を纏った彼らが、洞窟を出ていく。彼らの姿が見えなくなったところで、『強制同調』を開始。よかった、これくらいの損傷ならちゃんと使える。時間が経ちすぎると多分『強制同調』は使えないからちょっと不安だったけど、結果的に大きな戦闘能力を手に入れられたんだし、むしろプラスだね。
『……それで、これからどうするーの?』
『それは……』
そこまでいいかけて、何を考えたのか念話からヴェイガーは肉声での会話に変化させる。
「いや、こちらに変えた方がいいか。すまないな、いきなりあんなことになってしまって。元はと言えば俺の慢心が原因だ」
『……どう言う腹積もりなーの?折角いきなり変わった念話口調にも反応しないでずっと対応してたのに……どう言う条件で肉声で喋るーの?ちょっと知りたい』
これは本当。正直、そんなことより聞きたいことがあるんだけど、今それを問いかけてもきっと鋭い口調になってしまうの。ヴェイガーの方も、罪悪感の方はあるらしいのね。まぁ、そう思ってくれるのは嬉しいし、ちゃんと環境に慣れるための素体は持ってきてくれたからそこまで怒る必要はないししちゃダメなんだけど。
ヴェイガーもどうやら頭を冷やして冷静に考えるための時間が欲しいようなの。利害が一致しているからスラスラと時間稼ぎの別の話が出てきた。それにしても随分と饒舌なのね。普段ならもっと辿々しいものなのに。念話じゃなくても引き継がれる性質のはずだけど、何でなのかしら?
因みにわたしは知らないことだけど、ヴェイガーはこの時やべーやつらとの対話が終わって内心すごくホッとしてたらしい。要は相対的にわたしとのコミュニケーションのストレスが大幅に減ってたからスラスラ喋れたらしい、とのことなの。
「それはだな……まぁ、アイツらを警戒してのことだ。アイツらの手の内を俺は全く、と言うわけではないが、ほぼほぼ暴いていない。そして、アイツらが生存者である以上、特典という形で何らかの特殊能力を保持している可能性が高い」
『それで?それがどういう……あ』
「そうだ。『念話』というものが残っている生存者全員に配られたものである以上、それに干渉して念話の内容を傍受できるものがいるかもしれない。所持しているスキルと同じスキルに対して干渉できる、といったようなスキルがある可能性も見て会話によるコミュニケーションを優先した」
『……単純に聴覚強めるスキル持っててこの会話も遠くから聞こえてるかもしれないよ?なーの』
「それは問題ない。もう水による結界は張ってある。音をなるべく遮断するようにカスタマイズしておいた。素人なりの改造だから効果のほどはわからないが……それが無意味だとしても、彼らは恐らく聴覚強化などのスキルは取得していないと考えられる」
『……実験してたのね。オールさんには叶わない〜みたいなこと言ってるけど、十分策士なの』
そんなわかりやすく目を見開いていいのかなーの?言うとなるべく遮断するようにするから、ヴェイガーにもオールさんにも黙っているけど、わたしの『強制同調』は本来相手の心の内を合わせることなーの。心の内容を共有するんだから相手の考えてることだって読めるのね。
と言うかそもそも『強制同調』使っての会話自体心を読んでるようなものなんだけどねー、なーの。『念話』とか言う似たものが出てきてるから都合よく伝えたいことだけ伝わると二人とも思ってるーの。オールさんには昔このことは話した気がするんだけどな……?もしかしてオールさん、素で忘れてる?
「……それ、というか、そんなこと、言って、たか?」
『さぁ?寝言を聞いただけかもしれないのね。もしくは趣味の鍛錬中にでも漏れただけだと思うーの』
寝言は嘘だけど、鍛錬中はあり得るんじゃないかとは思う。何せ、このヴェイガーという虎はすごく真面目なのだ。わたしのように特殊なスキルがあるわけでも、オールさんのように突出した技術があるわけでもない。いや、技術という面ではあるかもしれないのね。
『確か……生存の技術?だったのね?あんなハードなことやってたらまぁ口も滑ると思うーの。別のことに集中してたら普通は速攻体が滑って死ぬの』
戦っていて特殊な動きをするわけではない。奇抜な動きも、意表を突くようなユニーク性もない。けれど、戦いが終わるとなぜか負けている。一つ一つは堅実だ。けれど、戦闘全体を俯瞰した上で改めて観察すると、非常に異常。
「まぁ、正直自分でも崖の上を命綱なしの糸走りとかは異常だと思うが……」
『そこじゃないの。バンジージャンプ(紐なし)とかしてる時点でただの自殺志願者なの。普通は』
わたしはこのヴェイガーという虎と出会ってからそろそろ二週間程度にはなる気がするが、この鍛錬を見るたびに背筋に寒いものが走る。蛇の背骨って全身通ってないっけ?あれ?じゃあ全身?まぁいいや。とにかく、彼の鍛錬とやらは思わず仙人かな?と思うほどの鬼畜トレーニングなの。
『崖からバンジー(紐なし)、そこから途中で壁面着地、崖のもう片面と両方使って壁ジャンプ連続で崖上まで到達……普通に考えてタダのバカなの。しかもそれを毎日五回とか……聞いてあきれるの。バカなのアホなの死ぬの?』
「俺はなぜこんなに責められているんだろう……?」
わたしの心の安寧のためなの。
「ま、まぁ、俺の鍛錬についてはまた今度話そう。場合によってはベフェマもトレーニングに興味が沸くかもだしーー」
『ないの』
「えっいやで」
『ないの』
「即答……」と言いつつorzするヴェイガーを横目に嘆息する。あんな地獄、わたしがやっても死ぬだけなの。わたしは別のやり方でやるだけ。そして、場合によってはそのやり方を通すためにあの三人組の処遇を考えなくてはいけない。
『さて、それじゃあそろそろ話してもらうの。あの人たち、どうするつもりなーの?火山で助けてもらったらしいけど……はっきり言って、まともじゃないの』
わたしは、あの人間を知っている。正確には、あの人間自体ではなく、あの人間が為すことを知っている。他でもない、前世でのわたしの敵意への第六感を鍛え上げた張本人も、そのタイプだったから。
「うむ……そう、だな。ひとまずは協力するしかないと思う。あそこで協定路線になっていなかったら、恐らく俺たちはあの時点で何か要求されていただろう。それに比べたら、こちらも朱雀戦に備えて戦力を増やせる分、メリットは大きい」
『爆弾抱え込んだようなもんだけどね、なーの』
「それに関しては何も言えないな。すまない」
まぁ、仕方ないことだろうとは察しがつくのね。このドラゴン、確かに結構強い。一人で凌ぎ切れるかと言われたら。中々厳しいものがあると思うの。そこを助けてもらったんだから、ひとまずの性格は置いておいて、ある程度は従うべきなのよねー。
『まぁ、わかったのね。方針は理解したの。だけど、さっきも話してた通り、常に一緒に動くわけではにのね?』
「その通りだ。共に行動すればよりリスクは高まるし、連携を高めることは大事だが、その連携に慣れてしまうとオールが帰ってきた後の動き方で支障が出る」
『朱雀はそんな簡単に倒せはしないだろうし。できることはやっておいた方がいいかもしれないのよ?』
「わかってていうんじゃない。そんなことは織り込み済みだ。それでもなるべく今まで通りの動きで行動するべきだと思ったからそうしただけだ」
『ふーん』
まぁ、同意なのね。
『オッケー、わかったーの。それなら、万が一のために、それと朱雀戦のためにもさっさと戦力増強を行うのね。こっちの環境はヴェイガーの方が詳しいだろうから案内して欲しいーの』
「まぁそれはそうだが……白虎が消えて以来、箱庭の段階はまた進行しただろう?それのせいだとは思うが魔物が全然見当たらない。俺の知ってる環境とは別物と思った方がいいくらいなんだ」
『……げ。じゃあ帰ってくるまで時間がかかったのもそれのせいってことなのね?』
「まぁ、そうなる」
『……はぁ、仕方ないーの。長期戦になるってことなのね。期限は……3日後だったのね。なら、尚更早く出かけるのね』
「ああ。ただ、あいつらも外にいる可能性は否めない。別にあったからって今のところ特に問題が起きるとは思えないが……ベフェマのその体と、アイツらが魔法を使ってたことを鑑みて今は接触は控えるべきだ」
『まぁ、わたしがこの姿で移動してたらスキルの内容をバラすヒントになっちゃゃうし、それはわかるーの。でも、魔法って……そんなこと聞いてないのね』
魔法、ね。わたしもオールさんも、そしてヴェイガーもMPは 0だった。魔法を使うために必要なのは恐らくMP。だからわたしたちは魔法を使えないと思ってるし、実際使えない。けど、それは残る転生者も同じだと思ってた。何の理由によるものかは知らないけど、わたしたち全員MP 0とか偶然にしては出来すぎているから。
「そうだな。ならば軽く説明しておこう。あのアプトンというカメレオンは魔法を使う。他に使えないとも限らないが、少なくとも『風魔法』は使っていた。魔法は俺たちにとっては未知の領域だからな。そういうわけで接触を控えようというわけだ」
わたしたちでは使えないだろう魔法を使うのか……正直、オールさんのスキルに魔法を使えるようにするスキルがあった気もするけど。よく覚えてないし、また会う時までそれはお預けなのね。だからアプトンとやらが魔法を使うための補助スキルを持っているか……。
『アプトンだけがMPを持っているとか、なんかきな臭いのねー』
「そうだ、それはまた会って探りを入れるまではわからないままだから、今は放置しておくということだ。さぁ、行くぞ。これ以上長話をするのは流石に時間の無駄になってしまう。移動しながらでも知ってることは教えるから、ひとまず出発はするぞ」
『……は。い、なーの』
そろそろ暑さも耐えられるようになってきた。この体に馴染んできた証拠なのね。ここまでいい素体をもらったんだから、まぁその分だけの活躍はしてみせるのね。
「あ、そうだ。この環境は俺にとっても相性が悪い。常時スリップダメージを受けてるようなものだから、戦闘はお前に任せるぞ」
『お前言うなーの。と言うか、暗殺者ビルドのわたしに戦闘任せるとか……切羽詰まってる証拠なのねー……』
はぁ、暑さ以外にもだるい要因ができてしまったの。オールさん、わたし頑張るから帰ったらこの虎締め上げてなのね。
Tips:『光明転身』
( ):なにも白虎の見せたスキル全てがそれだけの効果とは限らない。




