逃避と逃走
( ):サブタイ作るの難しい……。
・:*+.\(( °ω° ))/.:+頭爆発しそう
(裏):ハッピーになる前に執筆しろ。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【剋牙】 ヴェイガー
『ぴゃわぁああああああ!?』
ガクガク揺さぶられながらベフェマが叫び続ける。お陰様でスライムのヘイトが一向に途切れない。いや別に叫んでなくてもどうせ追ってくるだろうしベフェマも揺れ続けてるから辛いのは理解できなくもないが……正直ちょっとうるさい。
『……対策。オールほど即興では、作れないん、だが』
オールに任せられたのだから、まぁやるしかないのだろう。それに、これが最善というのなら、これくらい乗り越えられなければこの先やっていけないというものだ。だが……俺はオールのように自分のステータスを見れないので考えついた作戦よりもいいものがあるかもしれない。そこに関してはもうどうしようもないだろう。
『さて……まとまったなら、核を穿つのがいいに決まってる』
スライムという系統の魔物と戦闘こそいたことはないが、俺自身がスライムに近しい存在だからこそ言えることがある。
即ち、エネルギー系の魔法とかでもない限り、物理では明確な弱点をつかないと液体系の魔物は倒せないということだ。
その点、白虎は俺を呆れるほどの大出力のエネルギーで俺を蒸発させたからな。一部とはいえ、戦慄したぞあれは。まぁそんな奴もオールと一緒にどこかへ消えてしまったし。どこへ行ったか考えたくもあるが、それより先に今のこと、だな。
『【剋牙】の所以、見せてやろう』
『……い、や、ちょっ!!逃げるんじゃないーのぉ?!』
『アイツ、が一、つの、個体、に、変化し、たからな。倒せる、今なら』
まぁそこが怪しくはあるんだが。わからない以上警戒するに留まるだろう。それでは……行動開始だ。
『えっ、ヴェイガーさん、んんんんん!!?』
空高く打ち上げられたベフェマ。驚愕と困惑がはちゃめちゃに混ざった顔が爬虫類ということを加味してもありありと顔に表れている。すまんな、説明している時間はないんだ。
そして、ベフェマが空に滞空している間に片をつける……とまではいかないが、無視できない程度のダメージは与えたい。ある程度の損傷があれば、少しは警戒するか、まぁないだろうが行動が鈍ることもあるかもしれない。
でも、ベフェマがいくら軽くても精々が五秒程度しか時間はない。流石にベフェマを頭から地面と熱い抱擁を交わさせるわけにはいかないので、その数秒で一撃加えるしかないのだが、それは難しいのではないか?そう思う人間だっているだろうが、こと【剋牙】においてはその問題を解決できる。
『行くぞ、『空夢の顎』!』
【剋牙】。四級称号【短剣士】の所持と称号のレベルカンスト。そしてランクが上の敵を一定数撃破することが条件の三級称号だ。ジャイアントキリングなんてあの劣悪な火山地帯で生き残ってるやつらは皆んな俺より強かったから条件は結構俺にとっては簡単だった。
【短剣士】という称号系統は状態異常攻撃に適性があるらしい。まぁリーチは短いし、ベフェマも副称号に選んでいるように短剣は奇襲の一撃とかの方が適しているが、だからこそその一撃に特化しているようだ。
因みにこれらの話は全てオールから聞いたし、この話自体推測であるらしい。じゃあ意味ないじゃん。
『----ー!!』
スライム(集合体)が絶叫する。叫び声は空気を震わせ、まだ落ちるまで少しありそうなベフェマがビクッとしていた。オール辺りなら急いで駆け寄りそうだな。
さて、それでは先ほどの話を踏まえると【剋牙】という称号はどういう効果を持ったスキルを得られるのか?答えは、格上用の一撃必殺技を覚えるというものだな。防御力が高すぎる?条件を満たさないと干渉自体できない?よろしい、ならば全て打ち破ってくれる。
スライムがなんで格上かどうか分かるの?と思った人間もいるだろう。俺がスライムを格上と判断した理由もまた、実をいえばここに原因がある。
『牙を剥く先』。俺よりもランクが上の相手に対してのみ反応する高精度な感知スキルだ。これがさっきスライムが合体してからすごい主張しているため、俺はこいつが俺よりも強い存在だと確信を持って言えるのだ。
まぁとにかく、今行ったスキルも含めて、そんな脳筋共の発想を体現したようなスキルが多いこの称号で得られるスキルのうち一つが、今行った『空夢の顎』。効果はご覧の通り。
『ーー、----!??』
一点だ。一点だけ、スライムの体に風穴が空いていた。その風穴は見事なまでにスライムの中心に座す水色の結晶を貫いており、それによってスライムは絶叫しつつもその体を崩壊していった。
そう、『空夢の顎』はどんな格上にも一撃だけ攻撃を与えるスキル。もし相手がある条件下で絶対的な防御能力を持っていようとも、そんなものは関係ないと言わんばかりに一撃だけ全て突破し相手へ貫通攻撃を可能とする。
この一撃で、俺は今スライムの核を貫き、結果としてスライムはこうしてただの液体に……。
『ならないか』
『ヴェイガーさん!??いきなり投げるのやめませんなーの!??』
『む……それは、そう、だな。今度、から、は、先に、言う』
『いや、そう言う問題じゃないくて?!』
『そんなことより』
『そんなことより!?』
落ちてきたベフェマをキャッチしたら、色々怒られてしまった。まぁ確かに悪いのは俺だな。まだ何か言いたげなベフェマだったが、目の前に広がる光景を見てさすがに気を引き締めたようだ。少し筋肉が痙攣していることも含めて、意外とこう言う経験はないようだ。グロいのは弱いのか。
『ーーOoOOoOOOO』
それは、煮え立っていた。地面にぶち撒けられた水色の液体は沸騰し、ぶくぶくと浅く地面に広がる水溜りは何処からか丸い何かを大量にその表面に浮かばせる。
キラキラと光っているように見えなくもないそれは、点滅しながらぐるぐると回り……此方を見たかのような位置とともに、静止した。同時に、走った極大の悪寒が俺に回避の一手を考えるより先に選択させた。
『こう、いう、意図か!!』
スライムの集合。なんで悪手であるそれを行ったのか、核を貫いた後もわからなかったが……そうか、この形態に変化するのは恐らく合体をしないと体積が足りないのだろう。なんせさっきまでと明らかに体積の量が違っている。具体的には四メートル級の饅頭スライムが、一メートル級の普通っぽいスライムに変わったといえば分かるだろうか。
だが、そんな見る人が見れば可愛いと言うべきスライムのチャーミングポイントを消し飛ばす様なキモい点が一つ。
『O,oooo』
なんかこいつ、凄く目がいっぱいある。それぞれ違うところを向いてるし、ぎょろぎょろしてて正直今すぐ逃げたい。でも勝算を見つけたから相手との距離が縮まるのを許容したのであって、今から逃げたらただ単に体力と距離のアドバンテージを失っただけになる。流石にそれは避けねば。
『……『水鉄砲』』
水の弾丸を飛ばすだけの簡単かつ、消費も少ないスキルで一先ずの牽制と偵察を図る。さて、どう出る……?
それに対して、スライムが行った行動は単純だった。ただ、回り続ける目の一つを水鉄砲と照準を合わせて目を光らせる様な動きをしただけ。
『……はぁ?』
それだけなのに、仮にも己の一部である弾丸を撃ち飛ばすという、相手に制御権を奪われるなんてあり得ない状況で、スライムは水鉄砲の弾丸をまるで反射したかの様に直角に水鉄砲のベクトルを変えて攻撃をパリィしてしまった。
『……これ、控えめ、に言っ、て、どう、すれば、いいんだ?』
これには困った。なんせ相手は格上だ。格下の攻撃に限り攻撃を全反射みたいなスキルを持っていてもおかしくない。これが俺とスライムが同格の状況なら同格以上にも通じるタイプの全反射スキルなんてないから何か条件があるのだろうと察せられる。
けれど、今回は此方が下だ。自分よりも弱い奴にしか効かないチートスキルなんて俺は今まで前世(小説)でいくつも見てきたぞ。
こうなったら逃走するしかないか……?そう思っていた時に意外にも選択肢を提示したのはベフェマだった。正直、彼女の唯一の遠距離攻撃である『強制同調』が使えないので彼女にできることはないと思っていたのだが。まぁスライムに感覚共有したって此方がデメリットを被るだけと言う話だったし、別のアプローチからなのかと思ったら。
『今なら、あいつの視覚に対して影響を及ぼせるーの。アイツはわたしと同じ様に二つの目でしか物事を捉えられなくなるし、わたしはあいつと同じく視覚を経由して大量に情報を与えられるだろうからキャパオーバーで動けなくなるけど、あいつのアドバンテージは消せるはずなーの』
なんてこった、そんなことまでできたのか。正直あまり詳しく『強制同調』に関してはわかっていなかったが、さっきまでの集合体スライムは感覚共有してもどちらも特に感覚に変化はないから特に意味はなかったらしいけれど、今のお目目一杯スライムなら視覚を二つに絞ると言うデバフを与えられるらしい。
これはオールがチートというだけあるな。ベフェマの能力を説明した後に、なんか何も言ってないのに「勿論私のほうが強いけどね!」とか言ってたけど、オールでも負ける可能性があると言うことがそこから察せられる。
『……ならば、早めに、お願い、し、よう、か』
『了解!それじゃあ『強制同調』!』
ベフェマの宣言を聞き終えないうちにお目目スライムへ走り出す。俺の主な攻撃手段が牙と爪なのでベフェマは後ろで待機である。万が一の場合には護衛に回らないといけないのが歯痒いところだが、貢献をしてくれているのだ、此方が何か口出すことなどできるはずもないな。
『大盤振る舞いだ……『十人我色』、『点針濫満』、『無防蛮雄』!』
白虎との戦いは、言われてみれば当然で、けれど言われるまではまるで気づかなかった事実を教えてくれた。技術の複合。考えてみればできて当然だ。極論をいえば走りながら地面に落ちてる鞄を取ることだって技術の複合と言えなくもないだろう。どういう例だよ。
まぁとにかく、スキルは今まで別個に発動するのが当然と思っていた俺は、無意識のうちに自分の戦力を低下させていたということで……それを踏まえての今の攻撃こそが実験含めた俺の必殺技、になりうるかもしれない技。
スプリットとスレイスティンガーは何度か発動したことがあるから手慣れている。分身をして、分かれた十体の俺から一斉に伸ばした爪を相手に突き刺し、内側から爆散させる。
これだけならこの攻撃は今までの範疇、つまり予測できる程度の威力に収まっただろうが、今回はそれに加えて俺が得た称号に付随したスキルがある。
名を、『無防蛮雄』。効果は相手と俺のVITをゼロにする。まさに脳筋らしい攻撃だな。しかし、いくら俺自身も効果の範疇内にあるとは言え、相手が格上なら、効果が完全に通るとは限らない。ものによっては精々が一割程度しか削れないものだってある。
『だが、それがいい!』
今のアイちゃんスライム(意訳:気持ち悪いギョロ目系粘体生物)は、ベフェマのおかげで一時的に動けていない。いずれ解けるとしても、少なくとも今は問題ない。ならば、ここで多少隙を晒そうとも大打撃を与えるべし。ないよりはマシだ、どれくらいVITが減ってるかは知らんが、攻撃が入るならば上出来だ。
『芸術はァア……爆発、ダァッッ!!!』
十体の俺から同時に放たれた両腕の刺突が、合計二十という数の必殺技がスライムにブッ刺さる。そして同時に、爆散。さっきの白虎戦でも使ったけれど、本当に爆発って偉大。そう言えば白虎には『無防蛮雄』使わないで爆散させたけどあれって今思えば結構奇跡だったんだな。
あれは白虎の分体だったから通じたわけで、本体には通じなかっただろうし、なんなら不知火朱雀?なるそいつも、エネルギー体みたいな体だったからできた芸当だろうし……今思えば粗が多すぎるな、俺は。
『……次から、頑張ろう。うん、今回は、できたし』
爆散したスライムを見て、ポツリとそう呟く。幸い、ベフェマとは距離があったので聞かれてはいないようだ。まぁ、だが……まだ警戒するには、早いか?
爆発四散と言う言葉の例として辞書に乗せられそうな有様だが、スライムと言うやつは本当に倒し方が難しい。核があるなら話は早いのだが。ないとなると、俺だってどうすればいいかわからない。
『……大丈夫、そうだな』
『条件を満たしました。レベル23へ上昇しました。』
『条件を満たしました。称号【剋牙】レベル2へ上昇しました。』
『条件を満たしました。『点針濫満』レベル3へ上昇しました。』
『条件を満たしました。『牙を剥く先』レベル2へ上昇しました。』
『……はぁ、終わったか』
アナウンスというのは急に来るのでびっくりするが、こうして終わりを明確に告げてくれるから助かる。逆に言えばアナウンスがなかったら終わっている戦いでも終わっていない可能性があると身構えるしかないのだが。
『わぁ、終わったーの!お疲れ様なーの!』
『……応』
なんとかなったか、といい思いはそこそこに、ベフェマと合流する。正直、結構疲労がすごいので今ここでだらけてしまいたいところだが、ここに居座ればまた何か危険な魔物が来るかもしれない。それなら先に火山地帯に引っ越してからの方がいいというものだ。さっさと行こう。
『それじゃあ、行くぞ』
『はいなーの!……きっとオールさんもすぐ来るーの』
最後に小さく溢された言葉には何も反応しないことにした。オールは最善といった。けれど、なんとなく、オールが帰ってくるとは、俺は確信を持って言えなかったのだ。あからさまなほどに自信を持って合流しようといったあの姿が、やけに空元気な様に見えたからなのだろうか。
「……何かあったら、ベフェマのことは任せておけ」
ベフェマに気づかれない様に、まだ此方にゆっくり歩み寄ってくるベフェマを見据えながら、誰にも聞こえない様に少しの決意を吐いておいた。不安は……ない方がいいだろうから。
◆ 白に濡れる夢と天
「……へー」
真っ白な空、真っ白な地平線、真っ白なタイルと思しき床。幻想的とも言える光景を前に、一つ白に染まっていない死霊、オールは実に間の抜けた声を出した。秩序の具現とも言える全てが同じというある意味では悍ましいそれをわかっているはずなのに、オールという思考には微塵の揺らぎもない。
なぜここまで落ち着いているのかと問われれば、オールは「知っているから」と答えるだろう。それはそうだ、こうなるのが最善と彼女の◼︎◼︎に値する金髪の記録者は断言したのだから。
『今のあなたならきっと、白虎の天使の梯子を使えるでしょうね。なんのことかはわかるでしょう?それを使えば、自分ごとになるけれど、白虎を一時的に封印することができるわ。その間、貴女は箱庭から一時的に消えるけれど、其方は貴女の仲間に任せておきなさい』
『そうね……彼らについては、知らない方が良くってよ。……ふふ、情報を出し渋るものが嫌われる?だったかしら。知りすぎると、要らぬことまで考え込むのよ。少なくとも貴女はそうね。だから、今は私に従っておきなさい。悪いようにはしないから』
『貴女が気にするべきは梯子の先で、どうするかではなくって?……機嫌が良いから、教えるといったのは此方よ。私にも利益になるだろうから言っているのよ。さて、余り時間を取りすぎても良くないでしょうね。とりあえず、あちらに着いたらまず探索してみなさい』
『あそこで必要になるのは精神力でよ。それさえどうにかなるなら、後は強くなってリベンジをするだけね。言ったでしょう?白虎は貴女諸共に封印されると。但し、その時は自分一人で戦うことね。策を弄してもあのタイプはアドリブでそれを崩すものだから』
機嫌が良いという気まぐれな理由で教えてくれた割には、随分と詳細だった説明に、少しオールは苦笑する。なんだかんだで、世話焼きではあるのだな、と。
「いや、もしかしてあそこまで全部予測していたのかもね……」
一人苦笑しながらも、オールは現実逃避はやめ、周りを改めて見渡す。真っ白に染まった世界を。色を失った空間は、なぜかオールに不完全という印象を抱かせた。物理的にかけているわけではない。元々のこの場所がどの様な場所だったかも知らない。けれど、
「なんとなく違うって気がするんだよなぁ」
それを知るために。それが、彼らについてより深く知ることになるとして、だとしてもきっと知ったところでもうどうしようもないのだとしても。
「”私”が気に食わないって思ったんだ。もう終わった物語だとしても、それで諦めるようなら私は私じゃないのさ」
だから笑って、刀を向ける。銃口を突き付ける。
「非効率こそが人生だ。面倒なことが私を彩るんだ。それを忘れた君たちに、もう一度それを刻んであげるよ」
いつの間にか背後に現れた白い何かに、オールは戦闘を開始した。
( ):設定を上手くチラ見せするのが難しい……あともっとコメディ要素入れたい。
(裏):努力するので見放さないで欲しな。
Tips:白に濡れる夢と天
白虎が作り出す仮想空間。青龍が作り出す『代行権限』の仮想空間とは別の原理で成り立っている。青龍のそれが神の力によるものなら、白虎のそれは努力によるものだ。神ならば空間は操る程度できなければ神たり得ないが、白虎は神になる前から自力で空間を一部操ることができていた。確かに性能は『代行権限』のそれに少し劣るかもしれないが、これは充分に偉業に値するのである。その能力は……。




