白に統べられたリボルブランタン 其の三
(殴打跡):そうですね、お詫びは必要ですねよね。えぇ、言われるまでもなく把握しておりますとも。
(裏):うん、その顔の傷には触れないでおくね。
( ):いややったのおま、もごごっ!?
(裏):はーい詫び投稿行きまーす。これ二つめなのでまだの方はそっちからどうぞー。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム
それは、私がこの領域のギミックに気がついて少し経った頃。白虎がいるだろうと思う場所に急行しつつも、足元に残留している刃と、頭上から降ってくる刃に注意は割いてある。そのせいか、少しばかり時間がかかったけど、なんとか領域の中心だろう場所には到着した。のだけれど……。
「うーん……いないねぇ」
さっきからなんか戦闘音がしているし、十中八九白虎がヴェイガーと戦っているんだけど、どうも位置が掴めない。なんでだろう?視覚だけじゃなくて聴覚も妨げられているのかなぁ?
「でも……とりあえず、しらみつぶしに探していくしかない、よね?」
このままヴェイガーに1人白虎の相手ができるとは思えない。それは、純粋に彼我の戦闘力差が大きすぎるからだ。どれだけヴェイガーの技量に目を見張るものがあったとしても、力を伴わない技量だけでは、限界があるのだ。
「ちょっとこっちから探してみよう」
そうして半ば勘で音が鳴っていそうな方向……先ほどから妙に音が聞こえなくなっているから、より警戒しつつゆっくりと歩いていくと……。
「何もないなぁ?」
そこもやはりハズレ。地道に、けれどできるだけ早く白虎を見つけなければと考えて、警戒レベルを一気に最大まで引き上げる。
「これはっ!来た!」
膨れ上がる気配。弾丸のように一直線にぶっ飛んでくるそれに、即座に迎撃のために刀を構える。銃弾を牽制に飛ばして場所を探ろうとして……。
「はっや!?ってか何其の姿ぁ!?」
気配がさらに加速する。同時になぜか銃弾が気配をすり抜け、後方へとぶっ飛んでいった。ていうか、それに考察してる暇はない!!
「こ、こっ!!」
枯葉舞発動、お前の攻撃は失敗する!!
「わぁああドヤ顔しといて情けないぃ!?」
何これ!?超スピードの慣性が乗ってて馬鹿みたいに力が強い……!う、っく、押し切るぅ!!
「……あっ」
『グゥォオオオオオ!!』
迎撃をして至近距離で見たことによって気づいた粉塵越しでも見える白虎の姿。私はその姿を見て、目を見張る。白虎はあちこちから血を流していて、ボロボロで……そして、それよりもその傷しか生物らしさを感じられなかったから。
そして、その緩みを見逃さない白虎の最後のひと押しが、私のパリィを突破した。
「ぐぅううう!?」
刀が弾き飛ばされる。同時に前に翳した左腕……銃を持ったその腕を犠牲にして、ダメージを少しでも軽くするべく奮闘する。
「……はぁ、っっはぁあ。……馬鹿みたいな力しちゃってさぁ。なんだよその姿。腕以外、全部捨てましたってかぁ?笑えないよ、ぞの子供が作ったみたいな粘土の塊っぽいやつは」
左腕をざっくりと切り裂かれながらも、なんとか距離を取り、改めて考えを整理しつつ、明らかに異常な白虎の姿を観察する。さっきまでの黒の縞模様が入った白い虎だったその姿は、いつのまにか全身から発光した光の何かになっていた。
その体で、発光していないのは、肉体が変質していないのは傷を負った箇所だけ。傷の場所がやけにチグハグだな……なんで腹とか尻尾に傷があるんだ?やけに規則性が見えない……まるでうちから全身を貫かれたような傷を負っている白虎は、けれどそれ以外はもはやただの光の塊で。
「目も耳も鼻も消して、代わりに腕を強化したって何さそれぇ……」
今の白虎には、おおよそ生物らしい器官が見当たらない。五感のための器官も、尻尾も、その体にあったはずの縞模様も見当たらない。あるのはただ、敵を殺すためだけに発達したかのような肥大化して凶悪な凶器と化した両前脚と、明らかに不釣り合いな巨大な後ろ脚。
「……ヴェイガーは、ここまでやって、負けたのかな?来ないってことは、おそらく追えていないってことだから……独力で、なんとかするしかないか」
うーん……まぁ青龍だって全身から発光してたし、この箱庭のボス格はみんな追い詰められると発光するのか??いやそんなわけないでしょ舐めすぎだよそれは。
「1人でやるとなると……仕方ない、切り札は切らないなら意味がないからね」
念話を起動近くにいるはずのベフェマに連絡をとって……え?
「うそ……繋がらない……!!?」
『グァッ』
「っ!」
思わず舌打ちをしたくなるけれど、下唇を噛んで抑えておく。まずい。それは想定していなかった。まさか繋がらないなんて……!何かあったってこと??まさか、ヴェイガーが来ないのとベフェマに連絡できないのが関係あったら最悪だぁ……!
「と、とりあえず攻めて攻めまくる!とにかく情報が第一だ!」
『『エンジェルラダー』』
くっ!?さっきから霧が晴れかけていて避けやすくはなってる!でもそれでも避けづらい!!仕方ない、これは……まだ生きてる!なら!!
『?』
一瞬で視界が移り変わる。高速で変化し続ける視界の中でも、私は私の姿が消えて困惑している白虎の姿を見逃さない。
それは、私がどっかのハッピーなー羊をいてコマした結果として得た糸を元に作った装置。ただスイッチを踏めば、そっちの方向に糸が伸縮するだけの装置も、幾つか同じ装置を別の場所に作って、連動して動くよう細工すれば……白虎でも視認できない速度で、白虎の周りを高速移動できる。
これこそが切り札の一つ。本当ならもっと決定的なタイミングで使いたかったから最善ではないけれど……確実に相手に一撃入れられるこの状況で、この後の戦闘でアドバンテージを稼げる様に!やってやる!!今、彼方側がこちらを認識できていない。ならば、その状態から繰り出される不意打ちは、奇襲攻撃として分類されるもので……。
「『致命穿』!!」
相手が如何に素早く高い反射神経を持っていようと関係ない。私自身でさえ姿勢制御で目一杯の状態から繰り広げられるその一撃は、
「此処が、一番効果が高いと踏んだァ!!」
確かに白虎の頭を貫いた。
『『神速の一閃』』
同時に、私の右足も。
「……は、っが!?」
嘘!?なんでだ!頭を貫かれているのに、攻撃の瞬間なんて、わからないはず、なのにっ!!なんで?!なんで!!
「ごぷっ……う、ぅ」
衝撃が余すことなく全身に伝わる。受け身なんてする暇ない。異動に役立っていた糸も、それを制御する装置も巻き込んで激突した木を倒し、そこで止まった私の体は、死霊という種族を加味してもよろしくない。
「……まるで、いつかの再来だね」
遠くから歩み寄ってくる白虎と、その周りに展開される白い光柱。周りからの奇襲を警戒しているのかな?そんな厳つい姿をして、随分と、慎重、じゃないか……。
「……」
あの時は、ベフェマが飛び込んできたから、腹立たしいけど逃げ道として最適だった転移陣が近くにあったから、私は生き延びることができた。
「……無様だなぁ」
今度はどうだ?策を尽くしたつもりだった。できうる限りのことはしたつもりだった。その結果がこの様だ。いつもは意識してちょっと強気に動いてる自分の素が見えた気がして……吐き気がする。
ベフェマはいない。ヴェイガーも恐らく敗北して来れない。ふふふ、我ながら王手というものだね。此処でまだ諦めようとしない私は、醜いと言われるのだろうか?まぁ、いいや。毎度毎度こうなんだ。いっつも死にかけてばかり。今度もそう。できうる限り1人にならない様に立ち回ったはずが、結局孤立してじまって。
でもさ。こんな空回りしてばかりの私が、それでもまだこんな目をすることができるのはなぜだと思う?
『……っ』
ぐらりと白虎の体が揺れる。かと思えば、そこにはいつもの白虎の姿が。流石に、無制限でその形態を使えるみたいではない様だね。まぁ、それでもこんな長時間こちらの攻撃すり抜けますでもあっちの攻撃いつもより⒈5倍ですな感じの形態をされてるのは十分チートだね。
『……『光魔法』ーー』
不快げに戻ってしまった自分を見ながらも、どうやら私のトドメは刺す様だ。そうだね。私は、打つ手がないんだよね。いっつも、これならいけると息巻いて返り討ちにされるんだもんね。
……こんな私は情けない、と思う私がいる。でも、実際できることはやったのだ。だから……私は、待ってみようと思う。奇跡なんて、陳腐で、笑い飛ばすべき確率の重なりを。この時ばかりは、ガチャの女神に祈ってみてもいいかもしれない。
あぁ、なんでだろうね?今、私は確信があるよ。
『……スタークラスーー!』
『『雷魔法』……スタン!』
白虎の上方に展開された光の塊が消え去る。同時に、見慣れた声が頭の中に響き渡る。そう、私は打つ手がない。後一歩のところで詰めが甘いんだ。だから、その後一歩を埋めてくれるのは、なんやかんで君なんだよね。
『遅くなってごめんなさいーの!でも、此処からは大丈夫!打開、してみせますーの!!』
「……ありがと」
小声で言った言葉は轟音で消え去る。でも、それでいい。直接いうのは恥ずかしいからね。『自己再生』で体を再形成する。それで消費するはずのSPはHPに肩代わりさせる。『死霊』スキルの代償変換はこういう時には役に立つ。だって死霊の強みは……
「私の散った肉片を、もう一度私の体として動かせることだから」
近くにあった元私の体を、もう一度私の体として再利用する。一度散らばって、時間が経てば制御を失いHPとして見做されなくなるその肉片も、もう一度私が触れて、私のものとすれば別だ。
「……これでよし。あとは『HP自動回復』に任せよう」
今のベフェマは、どうやらばちばち言ってる豹の様な魔物だ。またどこかで拾ってきたのだろう。なかなか優秀そうな魔物だし、苦労しただろうねー。それじゃぁ、私も参戦、を?
ふと、目の前に大きな水玉が落ちてきた。パシャリと音をたてて地面に広がるそれは、一見なんの関係もなくただ落ちてきた水の様でいて……。
「まぁそんなことはないかぁ!?」
急に鋭く変化した水の刃を避ける。どうやらスライムの様だね、一瞬で終わらせたる。
「……あれ?本当に一瞬で終わっちゃった」
なんか核っぽいものが水の中にあったから銃で撃ったら、あっさり砕けて……そのまま水玉は動かなくなってしまった。……なんだったんだ?
とにかく戦線復帰だ!と思ったその時。
『条件を満たしました。レベルMAXへ上昇しました。』
『条件を満たしました。進化が可能です。複数候補の中から選んでください。』
「……はぁ?」
思わず、間の抜けた声が出てしまった。でも、本当に意味わからないんだもん。進化?このスライムだけで?なんでですか……??
「……え」
『……』
ふと、視線があった。それは、戦線で1人奮闘しているベフェマのものであり、今こちらを向いている余裕などないはずの豹の視線であり……なぜか、『強制同調』も使ってないのに意味を、ベフェマが訴えていることを読み取れる視線だった。
「……まさか」
上を見上げる。乱立する木の中で、スライムが落ちてきたのはちょうど……。
「……本当に、私なんかよりずっとすごいなぁ」
そこには、あまり目立たない、そうと知らなければ見逃してしまいそうなくらいの、痕があった。木に焼き付けられているそれは、まるで何かを槍で縫い留めたかのような痕で……ベフェマの用意周到さに、少しばかり笑ってしまった。
「そっか、そうか……なら、早く決めるしかないんだよね」
種族候補を決めよう。説明文かもん!
ーー
種族:ウィッシュ・ホープ:精霊系統特異個体の死霊が、希少な適性である「星」の適性を持つことで、候補として選択可能になる種族。それは、願いの象徴。か細く、小さな願い。そんなささやかで、けれど願わずにはいられない、そんな願いを叶える存在。確率を歪め、予測不能の攻撃を繰り出し相手を翻弄する。
種族:ウルデッド・エレメンタル:精霊系統種族の存在かつ、希少適性である「魂」の適性を持つことで、候補として選択可能になる種族。僅かとはいえ魂に干渉し、何者も防御することを許さない特殊な攻撃を繰り出す。
ーー
「決めた」
選ぶのはウィッシュ・ホープで。今私が持っている魂の力で通用しないのなら、別のアプローチから出なければ、この白虎は倒せやしないだろうから。だから。
「私に、確率を頂戴」
『進化を開始します。』
そうして私の意識は落ちた。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【無認遂行者】 ベフェマ
……眠ったのね。これで、あとは耐久戦。
正直、オールさんが此処で進化ができるかは半ば賭けだった。オールさんがもうすぐ進化できる!とは言っていたけれど、今進化していないのだから、まだレベルアップして進化可能になるまでもっと経験値が必要になる可能性だってあった。
それでも、わたしは賭けに勝った。意外と、こういう確率系のはわたしに相性いいみたい。……何故か歯軋りする音が聞こえたーの。誰の音なーの?
『……さて、それじゃあそれまではわたしがお相手いたしましょう、なーの』
眼前の白虎を見据える。体格は、今は普段より大きい豹の姿とはいえ、なれないし、どちらにせよ彼方の方が大きいからあまり攻勢には出れない。雷魔法だって、わたしが普段から使えるものではないから扱いが難しい。……そういえば、なんでわたしのMPは0なのに、今魔法が使えているのかな、なーの。
『今はいいか』
『『エンジェルラダー』』
上から奇襲じみたタイミングで放つならばともかく、今ある光の柱を流用するならどこを狙っているかは案外わかりやすい。白虎の周りに展開されていたそれらをかわしきり、そのまま開いた胴体へ爪をかける。
『……』
まずは一撃。浅いけれど、着実にダメージは入った。即座に離脱。この体に慣れてない以上、慎重に動かないと。
『ぞういえば、今はさっきまでの姿を使わないのね』
今はいつも通りの白い虎。でも、先程までは光の塊の様な姿で、オールさんを追い詰めていた。正直、オールさんだから凌げていたけどわたしは勿論、ヴェイガーさんでもあの速さと理不尽性はまともに抵抗できないと思うーの。
『使わないではなくて使えないのだろうけど……ヴェイガーさんがいれば、もう少し楽になるのに』
どこ行ってるんだろうあの人?多分ヴェイガーさんらしき傷が白虎の体にいくつかあるから、恐らくは先にヴェイガーが離脱した、ということなんだろうけど……まさか死んだりはしてないのね?
『一度死んだわたしがいうことではないのね……』
正確には二度だけれど、誰が聞いているかわからない以上、聞いても大丈夫なことしか言わないでおきましょう。それにしても白虎の体はどうにも鈍い。やはり、あの姿はよほど消費が激しいと見えるーの。
『となれば、もう少し攻勢に出ても……』
『……ア』
『んぇ?』
なんか今言わなかった?この場にいるのはわたしと白虎だけだから確実に言葉を発したのなら白虎しかない。でも、青龍と違ってそもそも白虎には自我というものが見えない。だから、巧みな動きをしていた青龍と比べれば、機械的で付け入る隙があった白虎の動きの理由はそういうものだと思っていたけど……。
『……まさか、自我があるーの?いや、自我が此処にきて復活してきているってことなーの?なんで?いや、そうじゃなくて、此処で隙を減らされると困るーの、一度一気に攻勢に出て相手のーー』
『ソノ、気配』
『!!』
『ワカル。ソレハ、我ラヲ滅シタ者ノ気配。貴様、今更何ヲ、シニキタ?』
どういうこと?気配?もしかして、わたしの何か……それこそ魂とかよくわからないけど、そういうのが誰かのと似てるってこと?いやいやいや!!だとしたらとばっちりも過ぎるでしょう!否定、そう否定して……。
『契約ノ悪魔メガ……』
……。
『どうやら、わたしの何かを知っている様なのね。でも、それを此処で出されるのは不都合なの。疾く、黙りなさい』
『貴様如キニ、従ウ義理ナド、アリハシナイ!『光明転身』!!』
目の前の虎は、間違いなく何かを知っている。それは、恐らくはわたしがオールさんと見た青龍の記憶にあった……でも、それを聞き出す余裕はないでしょう。だから、考察は余計なものとする。今は、あいつを足止めするのみーー!
『『神速の一閃』ッ!!』
『なっ、はやっ!?』
これは!避けられない!
『いっ……たぁああ……』
思わず歯を噛み締める程の痛み。見れば、右側の胴体に大きく傷跡が付けられている。前脚からお腹を通してそれはもう長く、大きな裂傷ができていた。肉弾戦なんてできないわたしには、普通なら絶対耐えられない大怪我だ。
……まるで見えなかった。この時点でわたしにもう勝ち目はない。元々あるなんて思ってなかったけど、此処からはとにかく時間稼ぎをするしかない。
『……『雷魔法』』
わたしがこの豹の姿を借りている間は使える魔法。雷だから、結構強いはずなんだけど……持ち味の速度が、白虎相手だと霞んでしまうから、不意打ちか牽制にしか放てない。
『ディスチャージ』
わたしの中の何かが減っていき、同時に周囲に電気が走る。放電だから、広範囲かつそこそこの威力を見込めるんだけど……まぁ、避けられているか。はぁ、思わずため息を吐きそうになる。吐くとしたら吐血でしょうけどね。
今のうちに何か行動を起こさねば。精々が十数秒しかこれでは稼げない。ならば……。
『あ……』
ふと目に入ったそれは、偶然だろうか。必然であったのならば……。
『……よし』
戦闘能力は劣るわたしでも、頭の回転でまで2人に負けてはいない。証明してやる。わたしも、奇襲だけが全てではないのだと。
( ):以上、ヴェイガーさんがお休みの間に起こったこと。
(裏):それはそうだが、なんというか、青龍戦後からのこれまでのスパン短すぎだろ……
( ):何をおっしゃるか。箱庭の運営係がそんなおっそい動きしかしないわけないでしょう。仕事できる人なんですから。
(裏):じゃあ君は?
( ):……っすぅー。えっとぉ……今は、その、私の話、関係なくなくなくないですか?
(裏):じゃああるじゃん。
( ):くぉお……(悪霊退散の音)




