立ち向う戦闘者
( ):へへっ、私、この執筆を終えたらパフェ食べるんだ……仕事の疲れを、癒してやる……
(裏):……(暗黒微笑)
⭐︎⭐︎⭐︎ 【短剣士】 ヴェイガー
急速に思考が回転する。走馬灯ではないと思いたい。まだこんなところで終わるつもりはないのだから。そして、それを決めるのは運命ではなく、俺自身の行動だ。であるならば。
「諦めなどっ……ないだろう!?」
いくつもの視線が突き刺さる。数多の殺気が俺を貫く。悪意ではない。それは純粋な欲だ。純粋な、そう本能に従った食欲。だが。
「考えのない、欲に、知性ある欲が、負けるはず、ない!」
自分でも何を言っているかはわからない。わからないが、自分を鼓舞できて、少しでもこの数秒後に訪れるだろう死を覆せるのならば、なんだってしよう。っ!もう、石化が!どうする?俺に今この状況でできるのはなんだ!?
攻撃?ない!多勢に無勢、数秒でこいつら倒せない!
変形?な、くない!やるな俺!いける、融通の効かない水の体でも、これなら……!よし、きた、石化が来て……覆えているな!?後ろも前も、石化済み!胴体、ほぼ完全に!ならば後は……。
埋まりゆく視界の中で、しかしトカゲどもを見つめる俺の目には、諦めなんてありはしない。眩しい存在に、なってみたい。そんなちっぽけな原動力でいい。そのちっぽけな欲が、お前らの食欲を超えるのだから。その余裕も、すぐに崩してやる。
そうして、俺の体は完全に石化して……。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム
やけにスローモーションで上から木の槍が降ってくる。ん?今誰かにそんなまさかって、呆れられたような……?んー、気のせいか。いやそうじゃないかもだけど今は後。
「……なるほど」
頭上から降ってくる槍は、まさに千に届くほどの数。ありえない、って思いたいけど、目の前の巨木がそれをやっているんだから受け入れる動向の問題以前に、これを凌ぐことが先でしょう。
さて、まぁこれを乗り切ることは無理だろう。だから体の幾つかは敢えて貫かせよう。ただ、代わりにその後の攻撃は確実に先手を取らせて……ぁ。
『---』
なんてことはない。ただ、少しこの弾幕に、とある存在を重ねたもので。重ねられたもので。
もし、この状況で、こんな風に沢山の弾幕攻撃をあいつが、あの白い虎ができたのなら、その時の私は、どうするのだろうか?きっと、白虎はこの弾幕を使ってくる。なにせ、あんな規模の光を操れるんだ。しかも、その光は一つ一つが今の槍だとよりもよほど高威力の。
もし、もしだ。ここで、私が肉を切らせて骨を断つ作戦を使ったら……白虎戦で、無意識だろうが意図的だろうが……動くんじゃないか?私の体は、以前できたからと言う、根拠の無い理由で、繰り返すんじゃないか?そして、それは、もしかしたら、致命傷にもなるんじゃ無いか……?
そう、所詮は仮定。私は自分がそんな無根拠での行動なんてしないって信じてるし、自負もある。でも、世の中想定通りのことなんて少ないものだ。そして、そんなことよりも……。
「白虎の範囲攻撃くらい、この攻撃の上位互換くらいっ、避けれなくて、戦える訳ないでしょうガァァア!!」
『-----!?』
そう、これは単純な仮定の話だ。もし、白虎がこんな攻撃を使ってきたらという。
それでも。そうだとしても。重ねてしまったのだ。ありえると、思ってしまったのだ。ならば、きっとあの虎は予想を超えて、更なる悪辣な攻撃をしてくるだろう。そう、勘がいっている。ならば、これくらい、耐えれなければ……!
「全部、避けちゃるわぁあ!!」
防御、はダメ!だから回避!そして、体の動かし方で私に勝るものなんてっ、そうそういないんだよっ!!
『--』
敢えて動かない。トレントの槍がこちらを貫く……直前が攻撃直撃箇所の把握に最適!だからこそ、今っ、ここで……肉体変成を起動!
小さくなるだけならば、丸くなるだけならば。複雑さはいらない。ただただ小さく、この槍の隙間を抜けさえすれば、後は動かなくてもどうとでもなる!
「くぉっ、のっ……!」
どこに槍が降るかわかった直後にはもう私の体には槍が触れている。それ程度の時間しかないから、掠るだけならば仕方がないっ、掠って、僅かに軌道が逸れて……その軌道が戻るまでの小さな隙間の時間で、変形は完成する……!
『ー……--!?』
「よぉぉおおし……回避、完了……!」
トレントの節穴みたいな目が驚愕の意を伝えてくる。そうでしょうそうでしょう……。私だって練習じゃなかったら絶対やらないし、普通に防御した方が安定している。でも、安定しているだけじゃ、いざという時に対応できないから。
「そして……三秒呆けるとか死にたいのかな?」
『-、------!?』
丸く縮めた姿から、巨大なモーニングスターへ。肉体の九割を硬度と威力に費やして、残った少しの肉体を地に繋ぐ。これで、全力でぶん回せる、から……。
『--------------!!!!!』
空間が震えるほどの大音量でトレントが絶叫する。焼け石に水程度の威力の魔法も、硬度を高めた私の鉄球部分には通じない。
見れば、モーニングスターの鉄球部分は巨木の半分ほどを吹き飛ばし、そのまま今度こそ。
『ーー、---……』
トレントがその身を横たえた。
『条件を満たしました。技能『死霊』レベルが9へ上昇しました。』
『条件を満たしました。レベル73へ上昇しました。』
⭐︎⭐︎⭐︎ 【短剣士】 ヴェイガー
パキリ、と音がする。トカゲ共が俺の体を石化した証拠だ。まぁ、完全に石化したのは表皮だけだけどな。
『……よし、動く、な』
俺の姿をした石像が側から見ればあるだろう。だが、その中では紛れもなく石化されていない俺がまだいて、そして五体満足で自分の体をチェックできていた。
どうしてそうなった?と聞きたそうだな。まぁ、軽く考えればわかることだ。俺の最も大きな強みは水の体。どこかの死霊みたく人間のそれとは思えない挙動はできないが、腕や足などならオールよりもよほど早く安定して変形することができると言う自負がある。まぁ、水なんだから当然だな。
ともかく、水だからこそ、俺は石化の侵食が始まった場所は即座に表皮だけ切り取って、石像と肉体……水体か?とにかく、肉体が触れないようにしておいた。お陰様で、石像に包まれてもこうして息ができている。……いや水なんだし呼吸してないのでは?
『……さて、と、な、る、と』
ふむ。しっかり体は動いている。ならば、もう侵食の止まり、ただの石と化した元俺の体を少し削る。体を染み込ませて、自分の体として扱えるように。感覚は鎧を着ているようなものだな。え?水なんかで石を削れるのか?いやいや……地形なんて水の流れで削れて変わっていくんだから、水でも石を削るくらいできるだろう。
そうしてできた石の鎧。普通なら心許ないそれも、目の前にまだ屯しているだろうトカゲ共相手なら心強い障壁となる。あぁでも、今削った関節から万が一にも俺の体が見られては困るからな。少し見えないように細工して……と、こんなものかな。
『さぁて、準備は整ったな。それでは……ここからは、反撃ターンだ』
『シュォガっ!?』
ズドン!と言う普段の水っぽい音とは違って、明確な質量を持った攻撃が繰り出される。視界は隠れた位置に掘って作って確保してあるから、バレさえしなければ問題はない。バレた時は……未来の俺がなんとかする。
『シュ、シュォオ?!』
『シュァハァ!』
ふむふむ。露出は最低限にしたいから聴覚などはあまり機能していないのだが……焦っているな。ならば、その心の隙を十分に突かせてもらおう。
ズドン!ドカン!
……我ながら理解できないほどの威力だな。鎧越しと言えば聞こえはいいが、石を隔てた素手で殴っているだけだぞ?こんな音するか?まぁ、一撃で葬るにはいいから、文句を言うところではないだろうな。
『条件を満たしました。レベル62へ上昇しました。』
『これでっ……全部か?』
そうして数分後には、最後の一匹を潰して殲滅が完了した。なぜか最初のトカゲとは違って、全員こちらへ向かってきたのはなぜなのか?臆病だから……と言うわけではなく、まさか他に生きれる場所がなかったのか?ふむ……確かに地下に適応しただろう姿形はしていたな。だが、こちらを襲ったのだから、仕返しされても文句はないだろう。
『……屍が多いな。嗅覚が鋭い自覚はないが、あまり長くいると嫌な臭いが漂いそうだ。早めに帰るとしよう』
そうして、穴を這い上り、洞窟の外に出て、もうすっかり日が落ち夜が到来した様子の森を見て……思い出した。
『拠点、探してたんだった……』
そうしてすごすごと引き返し、案の定嫌な匂いが漂い始めた穴の掃除を強制させられるまで、後一分。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【無認遂行者】 ベフェマ
『ちょっちょっちょちょっっっっと、待ってぇぇえええ!??』
「ガァ」
『わびゃぁああああ!??』
いやっ、やばい!やばばい!!やばばばい!!
白虎さんが唐突に上から降ってきてから約三十秒。うん、よく覚えてないけどまだそれくらいしか経ってない時間でこの有様。やっぱり青龍に勝てたのって偶然では?と思うほどの光の多重攻撃に近くに乱立していた虹色の林は即座に壊滅した。
まだ、こちらには気づかれていない。と言うよりは、いることは勘づかれているけど、正確な位置が掴めない、といったところなのね。それでもこの範囲攻撃は洒落にならないくらいやばい。どれくらいやばいかと言うと、攻撃が着弾する場所を攻撃の予兆が見えた時点で完全に把握して、退避しないと三手程度で詰まされるくらいやばい。
『ぅう、っくぅ!?』
実を言えば、わたしは死んでも大丈夫だ。でも、きっと死ねばその対価は思ったよりも大きい形で降りかかってくるだろうから、どちらにせよこの場では死ねない。考えながらも、今もまた放たれた極光線を回避して、次の行動を予測する。
間違いなく今一番ピンチなのはわたしだ。なんでオールさんの方にいってくれないのだろうか?絶対その方が丸く収まるのに……わたしじゃこいつから逃げ切るなんてできっこないよ……。
『いっや、泣き言はぁ……あとっ!なーのっ!』
「ガァ」
『びゃぁぁあああああ!??』
やっぱ泣きたい!無理っ!1人で逃げるとかぁ……無理ぃ!?
『……はっ!』
近くに見えたちょうど良い、そう、同調するには丁度いいものを見つけ、考えるまでもなくわたしはそこへ飛び込み、身を隠す。
「……グゥア」
真後ろに白虎がいるのにも関わらず。
『ッッッッッッ!!!?』
『ーー『エンジェルラダー』』
直後、わたしが滑り込んだ岩石の上から落ちてきた光の柱が、今もわたしたちを白虎の狩場に留めている光の柱が、岩石と、近くの木々を巻き込んで蒸発させた。
⭐︎
「……」
先程までそこそこ大きな岩石があったその場所には、代わりにクレーターが今も煙を燻りながらできていた。
『エンジェルラダー』。またの名を、天使の梯子。天と地を繋げる梯子こそがこの技能の本質であり、副作用としてエンジェルラダーが展開される場所の近くでは、地と地の繋がりが消える。……言い換えれば、エンジェルラダーの近くでは、地面は存在こそするが、それを踏み締めることはできないという、よくわからない状況が起こる。
だが、それだけがその技能の本質ではない。このエンジェルラダーは、天へと生命を誘うが、その梯子としての性質を使うためには梯子が行う選別を乗り越える必要がある。
それこそがこの超高温の熱量を伴った光の柱。生半可な耐性を持つ存在では、抵抗叶わず全てが蒸発させられる。光という超高速かつエネルギーで構成された梯子だからこそ、エンジェルラダーはその性質を用いて攻撃へと転用することができるのだ。
「ガァ」
そんな本来攻撃用とも言えない技能を用いた白虎は、しかしその威力を知っているがゆえに、当たれば己でさえもタダでは済まないが故に、確実に仕留めるよう命令されているターゲットをまず一つ殺したと、無感動に考え、そのままどこかへと去っていった。
『……』
白虎が去った後、エンジェルラダーによってクレーターができ上がり、ついでのようにできあがった空き地のその奥で。煤に塗れた灰色の蛇……ベフェマは、毛についた煤をげんなりとしながら対処方法を考え……ひとまず置いといて、生存した事実を噛み締めた。
『……もう2度と会いたくないーの』
残念ながら数日後には否が応でも立ち向かうことになるのだが、それは言わぬが花というものだろう。
『とりあえず、今日は寝るなーの。流石に疲れたーの』
そう呟いて、ベフェマはちらりと今さっき出てきた比較的綺麗な遺体……少々自らの姿と似通っている蛇のそれを見て嘆息する。ベフェマは、度重なる先頭によって、まだ『強制同調』を使用可能になってから日も浅いにもかかわらず、どの程度の距離ならば自分が『強制同調』を成功できるかを把握していた。
わざと逃げる角度を変えて、岩に吸い込まれるように錯覚させたのもベフェマの策だ。逃げている時に、遠くにまだ熱を持つ、しかし明らかに生物にしては低すぎる温度の、生物の形をしたそれをいち早く察知していた彼女は、どうやって遺体に取り憑けばいいかを考え、そこで大きな岩を見つけたことで今回の策を思いついたのである。
『できれば暗色の……背景と同化できるだろう灰色の場所、ないかなぁ、なーの。……まぁ、洞窟しかないのね。なんでこんなに洞窟ばかりわたしは宿泊するのなーの』
どんよりと陰鬱な雰囲気を醸し出したベフェマは、しかし今は逃げることが最優先と思い出し、いそいそと行動を開始した。……側から見れば歩いているのと同じ速度で。
⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム
「あー、マイクテス、マイクテス」
『こちらベフェマ、念話にマイクなんてないーの』
『そも、そも、ノイズ、とか、ある、か?』
「まー、あるんじゃない?緊急時とか念話がうまく繋がらなくてノイズばっかりー、とか。まぁ通信遮断結界みたいなのなんてあるだろうし、そん時のために覚悟しとこうやー」
『りょ』
「さてぇ、それじゃぁ定期連絡やっておこう。みんな大丈夫?なんかさっき馬鹿みたいに大きな爆音したんだけど?後絶対白虎のだろう光柱が降ってたんだけど?はーい、やらかした人手ーあげて」
『手なんて持ってる人が少ないなーの。少なくともこの中では』
『……俺、は、やっ、てな、い』
「おんやー?ベフェマは?違う?それなら別のやべー奴が生きてたってことになるけど……」
『あぁいや、白虎の襲撃自体はわたしが遭遇したーの』
「はい戦犯確定」
『……死にたがり』
『ちっちがうーの!?称号が進化したから、実験しないとって思って、そしたら急に上から降ってきただけなーのー!?』
「はぁ、言い訳をする奴はみんなそういうんだ。人のせいにしてはいけませんっ!」
『……人?』
『いやいやいや、どう考えてもただの運なーのぉっ!信用!信用イズどこ!?』
「それじゃあ次はヴェイガー。なんかあった?」
『え?追及もう終わりなーの?』
「ツンデレ乙」
『……?????』
「ごめん、今音声通話だけだから顔芸されても見れないわ」
『……ツンデレ?なん、だそれ?と、にか、く、報告、するな?』
「あ、いいよー」
『り。こちらは、石化、トカゲ、と、交戦。死にかけた、が、生きてる』
「やるねぇ。ふむふむ、オッケー。レベルは死にかけた方が上がるからなぁ。無理しろとは言わないけど、順調そうだね、とだけ言っておく」
『……他人事、だからと』
「あ、ベフェマは称号進化したんだって?やるじゃん、でもヴェイガーの方が今のところ頑張ってるからまだもふもふはお預けね?」
『誰もして欲しいなんていってないーの!?というかそれただのオールさんのご褒美!!』
「それはそれとして後で白虎の戦闘報告よろしくね。ベフェマの報告には白虎戦での戦況を左右できる価値があるんだよ。よく頑張ったね」
『……。ま、まぁ!これくらい、問題ないなーの!それより、さっさとオールさんの報告するーの!それでさっさと終わりにするーの』
「はいはい、私は一番まともだよ。b +程度の木の魔物を討伐しておいた。強さ的には、まぁ基礎能力値だけの話だけど私たちと同格だったからちょっと苦労した程度。特に問題はないよ」
『……意外なーの。オールさんが一番まともとか』
「天誅」
『ほびょびょびょびょ!?』
「念話越しに怪電波送っといたからベフェマはこれでノックダウン。こちらも称号はゲットしておいたから、できればヴェイガーも称号進化してくれると嬉しい。まぁ最優先は種族進化だけどね。それじゃぁ、今日の連絡はおしまい。じゃぁね」
『……、……り』
( ):ふぅうううう!今日の仕事おーわり!!今宵のデザートタイムが今始ま
(裏):はいこれ
( ):……………………え、これ……なに。
(裏):仕事です。
( ):……???
(裏):仕事です。
( ):え、だって、言われたものは全部提出して……
(裏):新しい、仕事です。
ヽ(´▽`)/よぉしパフェ食べよーっt
ガシッ。
( ):あ“
(裏):仕事は、無限大⭐︎
(気絶):……(返事がない、ただの屍のようだ)




