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やんやん?(`・ω・´)

⭐︎⭐︎⭐︎ 【絶命刀】 オール・フォルタム







「二度目なのに対策行わないはずがなぁああい!!」



『……M゛』



ズドドドドドと光の閃光があちこちの壁に突き刺さる。が、それら全ては私たちの体をかすりもしない。なんでかって?対策があるからさ!!はっはっはぁあ!!



「塔のボスとは言え、天球魔法陣がやることなんてもう一通り見ているんだよなぁ!?何もしないで挑むはずがなーーい!わーはははーー!!』



『Meaow……』



周りは前回と同じ夜空のような内壁……などではない。今はドギツイピンク色のハートマークがそこら中に貼り付けられまくられて雰囲気台無しである。この塔を作った人は泣いていい。



『……』



メリー君がこちらをジト目で睨んでくる。あはは……なんで怒ってるか私は、全く、そう、何も!見覚えないなぁ!!こういうふうに背景を貼り付ければいいんじゃないかと私は、そう、助言しただけなのだから!



……決して、その、ちょっと魔が差したとかじゃないです、はい。なんか腹立つからおちょくってやろうとかじゃなくて、はい。



「……え、えへへ」



『………huuuh』



やっべ、メリーくんが頭痛そうな顔でため息吐いちゃった。別に色々考え込むタイプじゃない、要は比較的楽観視しがちなメリーくんに頭痛を覚えさせるとか私やばくない?これは戦闘面で挽回せねば。



「その戦闘でも最近メリーくんが頭角現し始めてるんだけどね……」



いい加減勘のいいガキ諸君は気づいているだろう。何故塔の神聖な内壁が一気に最低なピンク色のそれに変わっているのか。



「それは、メリーくんが新たに得た能力のおかげなのです!!」



そう、メリーくんは、数日前に私が画面を急にみせられた時、すでに二つ能力を得ていた。一つは、あり得る最悪の可能性に限った限定的な未来視。直感という形で現れるけど、悪夢としても現れるらしい。



因みに、メリーくんはなんでかこれが近眼だと感じているらしい。元々はもっとすごい能力を持っていたということなのだろうか?でも、メリー君の本体である白虎もそんな能力持ってなかったけどなぁ?



とにかく、一つはそれ。問題は、今私たちが使っているもう一つの能力の方。



一見すれば、それは幻影のようにも見える。実際、その例えは間違っていないし、このピンク色の内壁だってそれによる者だ。



メリーくんは騙し絵と言っていた。そう、これは騙し絵。ただ、この能力は騙す()()が違う。



「いくら幻影耐性が強くても、景色に幻を付け加えたのなら、関係ないよねぇ」



この騙し絵は、世界を騙す。このセラスという空間に限った者なのかは知らないし、多分恐らくここ限定だとは思うけれど、それでも十分強力なスキルだ。



世界を騙すということは、世界がそこにものがあるという風に認識するということ。それはどういうわけか、実態は伴わないのに、そのガワだけがその世界に存在するという結果になっている。



どういうことか?詰まるところ、このスキルはどれだけ看破能力が高かろうと関係なく、幻影を見せる事ができるという能力だ。



相手を騙しているわけではないから、相手の看破能力には影響されない。相手は正常な景色を見ているのだ。世界が気づかずに正常だと判断している異常な世界を。



「これは強いよね……そりゃぁこんな結果にだってなる」



そんなつよつよスキルを使った結果がこちら。



『ーーー!!』



天球魔法陣が光線を放つ。しっかりと狙いを定めて放たれたそれは非常に厄介ではあるが、景色を歪めてそこに別の私たちがいるとすれば、天球魔法陣はどちらの私たちに光線を打てばわからなくなる。



そこに私たちの姿を同時に隠せば、流れ弾とかが偶然当たるでもない限り、私たちが攻撃を受けることはなくなる。つまり、ボーナスステージということだ。




「メリー君の成長とは言え成長は成長。勝たせてもらいまっせー」



私が差し込んだ刀が核を貫く。勿論ただの物理攻撃ではない。『魂の技術』を使用して、得た技能で纏わせた魔法の効果を使えば、見えるようになった核をぶち抜くことなど造作もない!



「……ふぅ。流石に前回よりは早めに討伐できたかな。成長が感じられるね!メリーくん!」



『……』



よし、あとでゴマスリしよう。へっへっへ。お風呂入ります?



「さぁて……前回同様なら……来た」



塔が崩壊を始める。まぁ予想できていたことなので、さっさとメリーくんに記憶の欠片を回収させて、急いで塔の外に飛び降りる。途中に見えたのは……あれ?



「今……なんかいたよね?早すぎて見えなかったんだけど……」



まじかぁ……あんなに早いのいるんだ……塔の上に何かが飛んで行ったのは理解できた。でも、見えたのはそいつの痕跡だけ。恐らく白虎より早いその挙動を目で追うこともできなかった。



あれ、戦うことになるのかなぁ……無理です、制作者さん。難易度調整知ってる?



「まぁいいか。後のことは未来の私がなんとかしてくれる!だから今の私にできるのは……家に帰って寝るだけ!」



しーらなーい。あんなん勝てるかー。少なくとも今の私じゃ闘いの土俵に立てないので後回しでーす。念の為対策を立てられたらとは思うけど、純粋なぱぅあー、で覆されそうなのでそこそこにしておく。



「メリーくん。この近くにもう一つ塔があるけど、そっちの攻略も行っておく?流石に塔の攻略は万全な状態でやったほうがいい?」



メリー君が頷いているし、ここはやはり帰って英気を養わないとね!!だらけ?知らないなぁ。



「随分とこの体の扱いも慣れてきたなぁ。メリーくんは知らないだろうけど、最初はいちいち翼とか部位は勿論、普通に軽く肉体を変えるだけでも数秒はかかってたんだからね?今はこんなスッて出るけどさぁ。これ、私の努力の賜物なんですよ。褒めて欲しい」



ん?メリーくんが、なんか金色のテクスチャを騙し絵で貼り付けて?うんうん、メリーくんがデフォルメされて描かれてて、そこにデフォルメされた私が傅いていると。



……褒めて欲しいなら言葉使えや。回りくどいんじゃ、文句のないほどに助かってるのは事実だけど。



というわけでメリー君に要請されてヨイショを続けること数分。翼による飛翔ではなく、滑空とは言え、当然ながらそれは地上を駆けるよりも早いのだから速攻でついた拠点にてさっさとベッドに身を投げる。



「はー……ここが私の最終防衛ラインじゃー……今日はもう何もする気にならんな!うわっはっは……」



あー……久しぶりに結構疲労が溜まってたかも。やはり腐っても塔の攻略はシナリオを進める上でほぼ確実に重要ポイント。それだけ戦力は割かれてるわけだし、私だって緊張せざるを得ない。



いくら死霊だからって何度も言ってるけど、ファンタジーな創作物に出てくるように本当の意味で死霊の無尽の体力を扱うことはできない。精神が人間なんだから、仕方ないのだ。



ここ最近は……まぁ、疲労が溜まる要因なんて結構あっただろうね。この前もちょっと寝た気はするけれど、どうやらここでの生活は想像以上にストレスを私にかけるらしい。



「ま、だからってどうということもないけどねー……この程度でへばっちゃらんねぇっすよ、へっへっへ」



メリーくん、虚勢で見栄張ってるだけだから不審者を見る目でこちらを凝視しないでください。ここに警察はいないですよ。ポリスメーン、仕事だよ。場所は異世界だ。しかもその中でも更に到達条件が難しい特殊空間。地獄かな?




「あ、そもそも異世界の仕事は関係ないか。ざーんねん」



一人でも多く地獄に道連れを送ってやりたいというのに……ぐぬぬ。そんなことやってる場合じゃないか。



「はーー……益体もないこと考えてる暇ないか。さっさと体を休めて次行こう。ほら、メリーくんも寝るんだよ」



意識をコンセントの元から抜く要領で落としていく。あくびとか全くない。変わったな、私も……。







⭐︎







不可思議な人の皮を被った何かが寝た。それを確認してからほのかに輝く子虎は手入れがされていないけれど、十分に綺麗なままの窓から外の風景を眺める。



子虎はこの風景を知らない。子虎にとって、この空間であったことは、そのまま子虎にとっての全てだ。だから、何の感慨も抱かない。はずなのだが。



今は違う、と漠然と子虎は考える。



記憶を集めた。彼のものではないけれど、彼と無関係ではない記憶を。それが彼の存在意義であり、子虎にはそれ以外にすることはなかった。実際、シナリオでは正規ルートとしてそれが正しいのだろう。



記憶は色々なものを子虎に与えた。その中には、この都市に関するものだってある。だが、その大部分は未だ目の前の無防備な少女には伝えていない。



別に悪意あって隠しているわけではない。ただ単純に、彼女が聞いてこないだけだ。正直、こんな記憶、元々自分がそれらを受け止める器の役割を果たしていたとしても、小虎にとっては持て余すだけのものだった。それらから与えられた知識があったとしても、だ。



だから、なるべく早く少女との情報共有を果たしたいと考えているのだが、妙に少女は最初の一度以来あまり積極的に記憶の再生をせっついてこない。こちらからいうのは言葉を発するのが辛いので、歯痒いところである。



そこまで考えたところで、小虎の感情は、少しづつ苛立ちに傾いていく。



そもそもなんだ、何で逐一記憶の進捗を教えろと言ったのに、最初以降は何も言わないんだ。興味示してたじゃないか。というか、ここで記憶とか集めたのなら、何かしら攻略にヒントがあるとか思わないのか。



おかしいだろう。何で記憶を集めるだけ集めて攻略を先にするんだ。攻略とか、普通ヒントがあるとは思わないのだろうか?



それに、色々能力は得てきたが、普通にこの少女は自分を扱き使いすぎである。何でピンクのテクスチャなんだ。自分はそんなつもりなかったのに、何でわざわざピンク色のオーダーで騙し絵を使っているんだ。



これで小虎は頑張っているのに、少女は小虎を庇護対象としてしか見てくれない。頑張ってるのだから、もっと褒めて欲しいと小虎は考えている。



そして何よりも小虎がイライラするのは、少女は賢いように見えて、結構脳筋であるところなのだ。最初クレバーな感じでかっこいいと思った自分の感想を返して欲しい。



小虎は与えられた記憶を元にある程度の知性はすでに持っているが、小虎からすれば何で楽な道が近くにあるのにわざわざ難しい方にふざけながら突っ走っていくのか理解し難いのである。後ホテルに何でそこまで執着してるのか意味わからない。




小虎はそこまで高度な思考はできない。だが、言語化をうまくできたのならば、そのようなものに意訳されるだろう。



オールはこれで慎重策をとっているつもりなのだが、それでもメモリーとして生まれた小虎からすれば、まだまだ経験が浅く、仲間である蛇や虎にも時々頭おかしい言われてるオールの行動は全くもって理解できないのである。



『……Meaow』



小さく漏れた鳴き声がか細く暗い部屋に消える。薄暗いとは言え、それは室内だからというだけで、外は変わらず白い空間、白い霧が蔓延しており、更には小虎自体が薄らと発行しているので、暗闇は問題ないのだが。



『……』



チラリと少女を見て、小虎は考える。自分はどうするべきかと。記憶はそこそこ集まっている。恐らく、もう半分程度は集まっているはずだ。それで得られた記憶は、この場所がどのような都市で、どうしてこの状態の、いわば退廃した状態での都市が再現されているかの理由も教えてくれている。



『……Quu』



チラリと目を伏せて考える。少女は自分にとっては保護者のような存在だ。あるいは後見人か。よくはわからないが、言葉にすればそのような感じだろう。その彼女に、本当に記憶を伝えるべきか迷っている。



彼女は素っ気ないように見えて、意外と面倒見がいい。記憶の内容を知ればきっと、この件の関しても、要らないのに首を突っ込むのだろう。そして小虎に、これくらい余裕だよ、とボロボロになりながらいうのだろう。



ちょっと悔しいという気持ちはある。けれど、小虎はこの世界において弱者だ。それを庇護してもらっているだけにすぎない。できるだけ戦闘のサポートはしているが、これ以上は逆に足を引っ張るだけだろう。



それに……と、小虎はメモリーとして考える。己が集めてきた記憶のお陰で、自分は今いくつかの能力が行使可能となっている。その一つが教えているのだ。



自分は、遠からず動くこともままならない状態になる、と。




予知と言うほど高度なものではない。ただ漠然と、そんな予感がしただけ。けれどきっと、それは間違いではない。なぜならそれは、紛れもない一つの能力に由来しているのだから。



このことに関しては、もうすでに少女も画面という視覚情報も併せた上で確認している。一度それについて話したこともある。



けど……どうしようもないのだ。結論としては、このまま進むのであれば、必ず小虎は囚われる。そうなれば後はどうなるかもわからない。



そして、囚われたくないのであれば先に進むのは止めなければいけない。けれど、小虎は本当は知っている。きっと、少女は何が何でも進むのだろうと。



『……ソレでモ』



小虎ではない。メリーくんなどという適当な形でつけられたこの魂は、けれどその名前をすでに受け入れ、そしてだからこそ同時にオールの在り様を完全ではないが受け入れている。



そして、それに憧れるからこそ、メリーくんとしても、メモリーとしても、小虎は覚悟を決めるのだ。生まれたばかりで、ただ目の前を導いてくれた人をついてきただけ。



今まではそれだった。けれど、ここからも同じわけにはいかないのだ。稚拙なものではあれど、メリーは覚悟を決めた。記憶を伝えるにせよ、伝えないにせよ、オールはきっと前に進む。



ならば、自分はそれを補助しなければ。今まで以上に頑張って、自分が囚われたとしても、それが永久的なものであったとしても、先に進むオールのためにこの身を張ろう。



それに、案外メリー自身はなぜか心配していないのだ。不安を覚えないのだ。その理由は、簡単だ。だって、もし自分がオールと離れて、身動きが取れない状態になったのならば……その時はきっと。



彼女は助けに来てくれる。いつも通り飄々としているけれど、騙し絵なんて大道芸ができる人材を見逃すはずもないなんて、適当な理由でもつけて、心配しながら救ってくれるのだろう。



『……Meaow』



甘えだって言ってくれても構わない。でも、いつになっても、どうなったとしても、きっとメリーにとってオールは、なんだかんだで保護者で、メリーを一番理解してくれる姉なのだから。



少々眠気が出てきた頭を振って、メリーくんはそのまま眠りにつく。睡眠の場所はいつもの定位置。ぐーぐー寝ているオールの横である。ちょっとだけ頭をオールに押し付けて、そのまま丸くなって寝始めた。

( ):メリーくんはあんまりうまく言語化することはできないので、彼が思ってることを文章化したらこうなります。

(裏):なんか思ったのと違う……。

( ):あくまで言語化しただけなので、メリーくん自体はなんかむかーってなる。とか、くやしー。みたいな風にしか思えていないという風に解釈してください。知能レベルは五歳程度です。

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