ログイン・ヒーロー⑧
昼休み……
姫導ヒロは昼飯を買いに行きたいと勇心トモキが言い出した事で彼に付き添う形で学校内にある購買に向かっていた。
購買に向かう途中、階段を下りる姫導ヒロは他の生徒と何度もすれ違う状況の中で勇心トモキに先程の授業中の騎坂アキトとの会話の中で聞いたある一言とその一言から推察出来るある可能性について話していた。
「騎坂アキトがワンダーワールドの事を……知ってるかも!?」
「知ってるかもって感じだから断言出来ないけど、多分騎坂はあの場所の事を知ってる」
「てか、ヒロ……授業中にあの場所に他の人がいたかとか考えてたとかどんだけ心配性なんだよ。オレたちは無事だったから一安心だと思ってたのに」
「ま、まぁ……自分たちが無事ってのは第一優先だとは思うけど、オレたちみたいな人があそこにいてもおかしくなかったんじゃないかってつい考えちゃうんだ」
「そっか……ヒロ、姫乃さんと考え方似てるな」
「姫乃さんと?」
「うん、1時間の終わりに少し話したんだけど姫乃さんも怪物から逃げてたのが自分と愛姫さんだけだったのかって気になってたっぽい。まぁ、いたとしても助けられなかったっ姫乃さんは諦めてたけど」
「そう、か……」
「あのさ、ヒロ……
「おい、トモキ。ヒロを困らせるな」
購買へ向かう途中での会話。階段を下り購買のある階に着いた2人は会話を続けながら廊下を歩いていた。その中で勇心トモキは姫乃ユリナが彼と似た考えを持っている事を認識させる旨の発言をしていた事と仮に居たとしても助けられなかったと諦めの言葉を口にした事を明かし伝えた。
それを聞かされた姫導ヒロは何か思う所があったらしく深く考え込むように黙ってしまい、そんな彼の考えを読んだのか勇心トモキは何やら言葉をかけようとした。
……のだが、勇心トモキの言葉を遮るように後ろから勇心トモキに注意を促すような趣旨の発言が飛んで来て会話を遮り、声のした方を2人が振り向くとそこには菱倉マナトがいた。
菱倉マナトは勇心トモキが姫導ヒロを困らせていると思っているのか冷たい眼差しを向けており、彼の冷たい眼差しに気づいた勇心トモキは思わず姫導ヒロを盾にしようと後ろに隠れてしまう。
とはいえ別に悪気も何も無い勇心トモキは勝手に冷静になって姫導ヒロの後ろに隠れるのをやめて前に出ると菱倉マナトを指さしながら強気に発言する。
「オレはヒロの相談に乗ってただけでいつもみたいに困らせてねぇつての!!」
「つまり……いつもは困らせてるって自覚あんだな?」
「あっ、違う!!全部撤回!!」
「マナト、誤解だって。トモキはオレが騎坂と話してた時の違和感について聞いてくれてたんだ」
「騎坂アキト?ヒロの授業の邪魔したアイツか」
「ホント、マナトってヒロの事になると後先考えずに動くよな」
「ヒロが真面目過ぎるからオレがブレーキになってるだけだ。それで、騎坂アキトと何話したんだ?」
「あっ、うん。実は……」
勇心トモキに対しての菱倉マナトの誤解を簡潔に解いた姫導ヒロは数学の授業中に騎坂アキトと話した内容を菱倉マナトに説明し、彼の説明を聞いた菱倉マナトは姫導ヒロの顔を見るなりため息をつくと2人を追い抜く形で先に歩いていってしまう。
どうしたのかと気になった姫導ヒロが駆け足で追い掛け、その後ろを勇心トモキも呑気に歩く中で彼は菱倉マナトに姫導ヒロの真面目さについて触れて話し始める。
「ヒロのこの真面目さは多分マナトがブレーキ役になっても止まんないと思うぞ。一応はマナトとの口約束で無理はしないだろうけど……あの場所と無縁の学校、それも授業中に他の人が居たかもって考え始めるくらいだから無理はしないの無理の範囲がマナトの想像遥か上の可能性大アリだと思うよ」
「だから呆れてる。目の前の怪物倒すって無我夢中になるだけなら止められたかもなのに、他人を助けるために無理するとか予想出来るわけないだろ」
「他人って……姫乃さんや愛姫さんとは昨日の件があるまで同じクラスの人くらいの関係だったんだ。他の人を助けるのだって……
「ヒロ、冷静になれ。怪物を倒せる力を手に入れてもヒロはヒロのままだ。ヒロがどんなに助けたいと思ってもその手が届かない所にいる人間までは助けられない。それが現実だ」
「だけど……」
「あっ、姫導くん!!」
菱倉マナトの言葉に言葉を詰まらせる姫導ヒロ。彼の発言に対して思うところがある姫導ヒロはそれを口にしようと考える一方で彼の発言が間違っていないという事を理解したが故にそれを捻じ曲げ覆すような真似はどうなのかと躊躇ってしまっていた。
姫導ヒロと菱倉マナトの会話の空気が重みを増す中、それを知らない姫乃ユリナがこちらへ走ってやってくると姫導ヒロに声を掛けた。
「姫導くん、お昼ご飯は食べた?」
「あっ、いや……いえ、まだです。トモキが購買に買いに行くの付き添ってるところ」
「そうなんだ。あっ、もし購買での用事終わったら私たちと一緒にご飯食べない?」
「オレたちが姫乃さんと……迷惑かけないかな?」
「えっ、迷惑なんて思わないよ!?昨日の話の続きもしたいし……それに、昨日の話で私とエレナに噂の事話してくれた子を紹介もしたいから良かったらどうかな?」
「えっと……」
「ヒロ、トモキの昼飯買いについて行くのはオレが引き受ける。ヒロは先に姫乃さんと向かっててくれ」
「ありがとうね菱倉くん。えっと、私たちは教室の近くのエントランスホールに集まってるからね」
「あぁ、分かった」
「じゃ、姫導くん行こ」
姫乃ユリナは姫導ヒロに話し掛けたはずなのに何故か菱倉マナトが代わりに答える形で話が進む。
話がまとまると姫乃ユリナは場所を菱倉マナトへ伝えて姫導ヒロの手を取り彼と共にこの場を後にし、突然の事に戸惑う姫導ヒロを見送った菱倉マナトは購買に向かおうと歩を進めようとした。
が、勇心トモキはため息をつくと菱倉マナトの前に立って行く手を塞いで彼に問う。
「さっきのヒロへの言い方、キツくなかったか?何があったのか知らないけど何であんな言い方したんだよ?」
「バカトモキ、あのくらいハッキリ言わないとヒロは止まらないって分かっててそれ言うのか? 」
「オレたちがいればヒロは無理なんてしないし危険な事もしない」
「自分を犠牲にしてでも姫乃さんたちを助けようとした……昨日の件でヒロなら躊躇わず命を捨てる可能性は示された。念押しておかないと……オレたちが後悔する事になる」
「後悔……」
「つうか早くしろ。オマエの昼飯はどうでもいいけど姫乃さんたちの話は聞き逃せない」
「はぁ!?マナトが邪魔しなかったら買えたかもしれないコロッケパン買えなかったらマナトの弁当勝手に食ってやるからな!!」
「ふざけんな、食いたいもんあるなら早く行けノロマが」
「はぁ!?あのな……」
姫導ヒロの事を友として大切に思うが故に強く告げた菱倉マナトとは対照的に自分たちがいれば大丈夫だと友を信じている事を明かす勇心トモキ。
それぞれが姫導ヒロ!対して強い思いを抱く事が確かめられるも仲の良さ故に生じる些細な言い合いと共に2人は購買へ向かおうとする。
そんな2人の事を……
物陰から1人の少年が見ていた。
「……理が乱れる前に、秩序保つための修正を施さなければ」




