ログイン・ヒーロー⑤
しばらくして姫導ヒロたちはファミレスを後にした。
もしもに備えて、そんな理由で姫乃ユリナと愛姫エレナとの連絡先交換をした姫導ヒロたちは帰宅路が別方向の2人とはファミレスで別れ、姫導ヒロたちは少し前までの下校風景の状態となって帰路を歩いていた。
その中で姫導ヒロの抱いた疑問について菱倉マナトは彼の疑問を解決するため力になろうと知恵を貸そうと話し掛けていた。
「ヒロ、あの2人が怪物に襲われてた事が気掛かりなのか?」
「気掛かり、ていうか気になるんだ。どうしてあの2人が襲われてたのか……どうしてオレたちのところには怪物が現れなかったのか……って」
「考え過ぎだろ。ヒロが考えてる通りならオレたちがあの場所に飛ばされた段階で別の怪物が出て来て2体になってたはずって事だろ?」
「あぁ、うん。そんな感じ」
「なら聞くけど……あの場所に飛ばされた段階で怪物が出てくるってのは誰情報?」
「あっ……」
「そういや誰もそんな事言ってなかったな」
「ヒロはともかくトモキもか……あのな2人とも、2人が誤解してるそれはあこ2人があの場所に飛ばされた後に怪物が出たって事実に対して自分たちが方にも怪物が現れてたかもって不安がそう思い込ませてただけの話だ。今考えるのはそこじゃないから忘れた方がいい」
「ご、ごめん……」
「わ、わりぃ……」
「だけど、いい着眼点だとは思うよ。何であの2人が狙われたのか、何でオレたちがあの場所に飛ばされたのかって所は考えなきゃいけないだろうからな」
「2人が狙われたのってやっぱりか弱そうだからなのかな?それか2人に何か秘密があったとか?」
「か弱いという理由なら許されんな……!!あのような危険な場所に飛ばして不安を煽り襲うなど……男として許せん!!」
「ダイキも落ち着け。許せないとか言った所で相手はそういう正義感が通用しないような場所にいる怪物、オレたちには手出し出来ない」
「だがヒロは倒せるぞ?」
「たしかにヒロなら倒せる……というかあの姿になった時のあの光が次同じような状況になっても出てくんのかハッキリしないから大丈夫って言い切れないな。それに……オレはヒロ1人が戦うような状況になるのはごめんだ」
「あっ……」
「そう、なるのか……」
「大丈夫だ2人とも、オレは平気だから」
「見てるだけしか出来ないオレはごめんだ。次怪物が出てきたら……オレはヒロを連れて逃げるつもりだ」
「マナト……」
あの場所に飛ばされ怪物が現れても姫導ヒロなら倒せる、そんな風に楽観的な言葉を口にした守上ダイキの発言に対して指摘した上で自分なら大丈夫と話す姫導ヒロに対して見てるしか出来なかった立場だった菱倉マナトはもし同じ事が起きたら連れて逃げると言い返してしまう。
姫導ヒロとしては別に悪気など無く心配をかけまいと彼らに対して大丈夫だと伝えたかっただけで彼らの不安な気持ちを理解していない訳では無い。
ただ、菱倉マナトの言い分も間違ってはいない。姫導ヒロが怪物と戦うという事が何を意味するのか、その結果としてもたらされるものが常に今回のような怪物の撃破と限らない。万が一にも怪物の撃破とは異なる結果……彼らの目の前で大切なものを失うような結果が待ち構えている可能性だってありえるのだ。
その最悪の結果と可能性に至ったからこそ菱倉マナトは姫導ヒロの言葉に言い返したのだ。
その事を姫導ヒロは理解している。が、そんなつもりの無かった姫導ヒロにとって菱倉マナトのこの反論はどんな風に言葉を返していいのかと躊躇いを生じさせてしまっていた。
不安を感じさせたくなかった姫導ヒロとは裏腹に既に不安を感じている菱倉マナト、2人の間に不穏な空気が漂い始める。そんな時だった……
「よしっ、ならばオレが強くなろう!!」
不穏な空気が姫導ヒロと菱倉マナトの間に生まれ周囲の空気に気まずさを起こす中、守上ダイキは何やら閃いたらしく大きな声で発言し、考えがあるのかどうか怪しく思える発言をした守上ダイキのその発言の真意が気になった勇心トモキは気まずい空気感の中で恐る恐る尋ねた。
「ダイキィ……強くなるってどやって?」
「もちろん特訓だ!!筋トレ、筋トレ……とにかく筋トレだ!!」
「ダメだ!!脳筋思考だった!!」
「それで解決するなら苦労しないっての……」
守上ダイキの突拍子の無い発言、明確な根拠など無い解決策を語る守上ダイキに勇心トモキと菱倉マナトが呆れて頭を抱える中で姫導ヒロは軽く息を吐いて心を落ち着かせると菱倉マナトに対してまずは謝罪した。
「ごめん、マナト。オレは別に不安にさせるつもりは無かった……けど、少しでも不安に感じさせたならオレが間違ってた」
「少しってか、ある程度は不安だったんだけどな」
「……だから、もし同じような状況になったら逃げる事も視野に入れるようにする。本当に戦わないといけないような状況になったら戦う方選ぶかもだけど……」
「だろうな。ヒロはそういう……
「だから、もしやばいと思ったらマナトが全力で止めて連れてってくれ」
「……え?」
「今はオレが倒すしかないかもだけど……ダイキの言うような特訓して皆で怪物倒せるようになったらその時は助け合おう。だから、今はマナトのその冷静な判断力でオレを止めて欲しい」
「……要するに無理はするだろうからブレーキになれって事か。投げやり過ぎだろ」
「ははっ……ごめん」
「いいよ。ヒロの性格は分かってるし……下手に止めるよりある程度好きにさせた方が言う事聞くってのも昔から知ってるからいいよ」
「うん、ありがとう」
「その代わり、オレが止めたら絶対聞けよ?」
「分かってるよ」
「ったく、本当に分かってんのかよ……」
「ならオレが最初にヒロと戦えるくらい強くなるぜ!!」
「は?トモキじゃ無理だ。オレがブレーキ役として最初に強くなんだよ」
どこか上手く言いくるめられたような気もする菱倉マナトだったが、姫導ヒロが1人でどうにかしようとせずに自分に頼ろうとした事、いつかは助け合い共に戦おうと言ってくれた彼の言葉が嬉しかったのか少し気恥しそうに返しながら自身が止めた時には必ず聞けと念押ししてしまう。
菱倉マナトの言葉に優しく返し、そして優しく微笑む姫導ヒロ。優しく微笑んでくる姫導ヒロに対して僅かであれど心配を隠せない菱倉マナトのそれを吹き飛ばすように勇心トモキは自身が最初に強くなると宣言し、勇心トモキの言葉に触発されたのか菱倉マナトは自分が先だと譲らぬ意思を示そうとした。
些細な事のように思える事で対抗心を向け合う勇心トモキと菱倉マナト、その2人の対抗心を仲の良さから来るものだとでも思っていそうな姫導ヒロはどこか嬉しそうに笑っていた。
だが、この時……
誰よりも最初に特訓して強くなるという案を出したはずの守上ダイキは何やら複雑な表情を浮かべて彼らの事を見ていた。
彼の浮かべる表情、それに何の秘密があるのか……




