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エントリー・ハート④


 場所を戻して……




 騎坂アキトの説明から菱倉マナトがまず気づき、遅れる形で姫導ヒロと咲宮サクラがアーミーズと呼称されるワンダーモンスターを統治しているのが人間だと明らかになる。


 その事実が勇心トモキ、守上ダイキ、姫乃ユリナたちを驚かせる一方で麗月レイラは怪訝な表情を見せながら姫導ヒロたちに自身の疑問を伝えていく。


「気になったんだけど、その人は何でワンダーモンスターってのに襲われないの?ワンダーモンスターっていうのは本能的な部分で動いてるだけなんでしょ?なら、誰が偉いかとか分かるものなの?」

「てか、それ言い始めたら複数体いるワンダーモンスターをまとめて指揮してるとかおかしいじゃん!!」


「はぁ……そこの彼女はともかく、勇心のその発言は呑気としか言えないな」

「何!?」


「私の発言はともかく……てどういう事?」

「アンタの言いたい事は分かる。実際、オレが初めてアーミーズが群れを成してその人間のもとに現れた時は少なくとも1体はそいつを襲うと思っていた。でも……そいつはアーミーズを生み出す糧になる負のエネルギーを調整して自分が絶対的な立場になるよう仕向けてたんだ」


「えっと……サクラか姫導くん、今の分かった?」


「ごめんなさい、レイラ。私は分からなかったわ」

「オレも……ごめん。けど、騎坂の言い方からアーミーズってのが特殊な形で生まれて出てるってのは分かった」



「そもそも、何故ワンダーモンスターなるものは生まれるんだ?オレたちは彼から負のエネルギーってものを糧にして生まれると聞かされたが、何故生まれるのかは聞かされていないぞ?」

「それは順番に話してくれてるからじゃないかな?」

「あっ、そういう事か。教えてくれてありがとう、姫乃さん」


「守上には悪いがオレはあえて話さなかっただけだ。今回のアーミーズはワンダーモンスターと総称される怪物共の中で特殊……1人の人間が生み出したワンダーモンスターが異常を起こす形でこの世界に集合体として発現させられたワンダーモンスターだ」


「そういえばさっきからアーミーズってのを特別扱いする言い方してるけど、騎坂はアレが普通じゃないって断言出来る情報を持ってんだな?」

「そういう事になるな、菱倉。そう、だな……そこを話す方が分かりやすいか」


 疑問が疑問を呼び寄せる、アーミーズというワンダーモンスターを統治する人間の存在に驚愕させられるもその一方でワンダーモンスターが統治しているとはいえその人間を襲わないものなのかという疑問と話の流れからして騎坂アキトが意図的に特別扱いする言い方をしている点が彼に向けられる。


 順を追って話す、その上で出来たと解釈可能な現状に対して騎坂アキトはワンダーモンスターが《普通に》生まれる過程を話す方が分かりやすいだろうとしてそこに触れる説明を始めた。


「ワンダーモンスターは負のエネルギーを糧にし、その負のエネルギーを発した感情や思考を本能的な部分に組み込むが、そもそもワンダーモンスターは簡単に生まれるような存在じゃない。ワンダーモンスターは負のエネルギーがある一定の濃度まで蓄積された場合に自然な出生という定義のもとで生まれるってまずは解釈してくれ」


「そ、そうか……オレたちがワンダーモンスターを見て恐怖心を感じたとして、それがきっかけで生まれるなんて事になればワンダーワールドにはワンダーモンスターだらけになってしまうな」

「まぁ、そういう事になるな。さっきのアーミーズの襲撃に恐怖心を抱かなかった人間はまずいない。姫導でさえ危機的状況だと危機感を抱いたはずだ。そんな人間が集まった状況で新たなワンダーモンスターが生まれていないってのはそういう事だ」


「でも、それだと……ワンダーモンスターって生まれにくくない?だって、さっきの私たちが怖いとか思った気持ちで生まれないなら……相当大きいエネルギーがいるんじゃないの?」


 ワンダーモンスターが《普通》に生まれる過程を説明し、その説明をした上で守上ダイキが疑問に抱いた部分について補足を行う事で先程姫導ヒロたちの置かれた状況でワンダーモンスターが生まれなかったのは必然であり自然的に生まれる条件を満たしていなかったのだと語った。


 が、彼の語った内容に対して先程姫導ヒロたちとワンダーモンスターの襲撃を目の当たりにして恐怖を体感した天川アマネは自身が先程体感したあの恐怖でワンダーモンスターが生まれないならばワンダーモンスターを生み出すのは相当なエネルギーが必要では無いのかと疑問を向けてしまう。


 天川アマネが向けた疑問は当然のものなのかもしれないが、そもそもを辿るならばワンダーモンスターというものが生まれるというだけでそれは異常な事だ。その異常を起こし生まれるワンダーモンスターが生まれる過程として語られた今の内容が普通のものとして扱われるのはそれ以前に不自然な事なのでは無いのかと姫導ヒロは感じずにいられなかった。


 ただでさえワンダーワールドという異世界に飛ばされる異常事態の中で怪物が生まれ現れるという異常現象に対して普通という解釈が用いられるのはあまりにもおかしい、そう考えた姫導ヒロは自らの中である考えをまとめると天川アマネの疑問について騎坂アキトが答える前に話題を変えてしまうと分かりながら新たな可能性を開くための質問を彼に向けた。


「騎坂、教えて欲しい。今の説明の通りなら自然にワンダーモンスターが生まれるのは難しいって事になる。それって……さっき話してくれたアーミーズって集合体の中心に立つ人間が関係してるのか?」

「ここまで話せば流石に姫導も気づけるか……さっきの説明の通りなら新たなワンダーモンスターが生まれる可能性は確率的に低い。けど、その可能性を意図的に高めさせる術を持つやつらがいる。そいつらはさっき話してたアーミーズを統治する人間と深い関わりがある人間だ」


「そいつら……って、事はもしかしてオレらは何かしらの組織に巻き込まれてるって事なのか!?」

「ワンダーワールドでワンダーモンスターを生み出し悪事を働く組織……アニメとかゲームみたいなのでよくある流れになってないか、これ?」


「だが、実際にオレはアーミーズを従えてる人間とワンダーモンスターを意図的に生み出す術を持つ人間複数人が居合わせてるのを目撃してる。組織的なものだとしてその規模までは分からないが……このワンダーワールドの仕組みを理解してるだろうやつらだ、ある程度の規模はあるだろうな」


「でも、騎坂くん。意図的に生み出せると話してくれたけど、それがどうやってなのかは分かっているのかしら?」

「あぁ、もちろん。意図的に生み出す方法についてオレが把握してるのは2つだ。1つは何かしらの道具を用いて負のエネルギーを急激に増幅させて生み出す方法だ。これについては何度か目撃してるけどコインのような道具が用いられているという事しか把握出来ていない」


「なんか……ソシャゲとかのガチャみたいな感じだな」

「イメージとしてはしっくりくるな、うん」


「そういう解釈は個人差があるだろうから否定も肯定も何もしないが……もう1つの方法はアーミーズを生み出してる統治する人間が新しいアーミーズを生み出す際に用いていた方法だ。左手の甲に黒い紋様みたいなのを浮かばせて周囲の負のエネルギーを取り込む形で生み出していた」


「左手の甲に黒い紋様……って、昨日のアレに似てないか?」

「だよな、トモキ。ヒロの手に出てきてたあの光る痣みたいなのにニュアンスは似てるかもな」


「光る痣……右手の甲の上に出てきたのか?」

「え?あ、あぁ……うん。王冠の形をした光る痣が右手の甲の上に出てきた後、オレに何かの力が宿って怪物を倒せたんだ。でも、今は消えてるんだ」


「そうか……姫導がまさかの光の痣の発現者だったとは驚きだな」

「光の痣の発現者……?」


「てか、光の痣って名前まんまなのな」

「ワンダーワールドにいる怪物でワンダーモンスターって呼び方する時点で安直だけどな」


「そ、それで騎坂……オレの右手の甲の上に現れた光の痣って何なんだ?もしかして、何か知ってるのか?」


 昨日、ワンダーモンスターを撃破する力を発揮出来たのは光の痣が出現したからだと認識している姫導ヒロはあの時の力が何なのか、そしてあの痣が何を意味してのものなのかが不可解で仕方なかった。


 もし騎坂アキトが何かしらの情報を知ってるなら、そんな期待を姫導ヒロは抱いていた。


 そんな姫導ヒロの質問に騎坂アキトは彼が思っていたものとは異なる言葉を答えとして返してしまう。


「オレが知ってるのは光の痣を持つ人間を発現者と呼ぶって事とその発現者が黒い紋様……闇の刻印を持つ人間に対抗出来る力を肉体に宿すって事くらいだ。それ以上の事はオレには分からない……というか、オレにワンダーワールドの情報をくれた男が右手の甲に爪の形の光の痣を持っててそれについてオレが聞いたから軽く教えられただけだ」



「爪の形……」


「て事は……ヒロ以外にも光る痣を持つやつがどっかにいるのかよ」

「まぁ、そういう言い方をしたんだけどな。それより姫導、オマエはその力……」


 光の痣、昨日姫導ヒロの右手の甲に現れたそれを指す言葉に関しての情報を大して持ち合わせていないと返す騎坂アキトだったが、彼の口から姫導ヒロ以外にも光の痣を持つ者がいると聞かされ勇心トモキや菱倉マナトは《爪の形の光の痣》を持った人物で存在が気になってしまう。


 どこかにいる、それは間違いない。勇心トモキや菱倉マナトがその人物について気になっていようと関係無しに騎坂アキトは姫導ヒロから光の痣の事を聞き出そうとした……のだが、か騎坂アキトの言葉を遮るように建物の外で鐘の音が鳴り響く。


 突然鳴り響いてくる鐘の音、このワンダーワールドの中で聞かされると思わなかった音に全員が困惑する中で来アキトに舌打ちをすると急に外に向かおうと走り出してしまう。


「騎坂!?」

「姫導、オマエはここでそいつらを頼む!!外の害虫は……オレに任せてくれ!!」


 何かに気づいたからこそ外に出るべく走り出した騎坂アキト。彼にこの場を託された姫導ヒロだが、そんな彼は……


 

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