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エントリー・ハート①


 突如として昼休みという時間を阻害される形で昨日体感した事と同じ現実に襲われる姫導ヒロ。


 姫乃ユリナとその友人たちを巻き込む形で彼と勇心トモキ、菱倉マナトは不可解な場所……ワンダーワールドと噂で呼称される場所に飛ばされるのも束の間、飛ばされたと認識して落ち着く暇もなく現れた怪物に襲われると一種の恐怖心に駆られた姫導ヒロたちをそこから救うように飛来した雷撃が怪物を撃退した。


 倒したのかどうかは定かでは無い。しかし、現時点で危機的状況、回避されたのは間違いない。


 が、それと入れ違うように雷撃の飛来してきた方から歩いて来る形で現れた騎坂アキトのその姿に姫導ヒロたちは驚きと共に困惑を抱かずにはいられなかった。


「何で、騎坂アキトがここに……?」

「あ?またフルネーム呼びになってんぞ姫導。せっかく顔見知りになったのに振り出しに戻る感じか?」


「あっ、いや……そうじゃない。その、騎坂とここで出会うと思わなかったから……」

「あぁ、そういう事か。まぁ、このワンダーワールドで顔見知りと会うなんて滅多に無いだろうからその反応されても仕方ないか」


「ワンダーワールド……て騎坂はここの事を詳しく知ってるのか!?」

「知ってるよ?それがどうかしたか?」


 騎坂アキトの口振りからここに詳しい事は読み取れた。知っているか否かの確認を姫導ヒロが尋ねる形で行われ、騎坂アキトの返事から彼がこの不可解な場所の事を知っているとハッキリすると姫導ヒロは少し安心の表情を見せた。


 が、それとは裏腹に騎坂アキトの登場に対して姫導ヒロと同じように困惑を抱いていたはずの菱倉マナトは疑いの視線を騎坂アキトに向けていた。


 その菱倉マナトの疑いの視線に気づいた騎坂アキトは姫導ヒロとの話の途中であるにもかかわらず疑いの視線を向けてくる彼へ話題を振ってしまう。


「悪人でも警戒するような目、やめてくんないか?せっかく助けたのにいい気分にならねぇんだけど」

「オレからしたら今のオマエは単に怪しい野郎でしかない。ここが何なのか、それを知ってるって時点で不審に思って警戒すんのは当たり前の事だろ」


「こんな場所の事を知ってりゃ警戒したくなるのは分かるけど、それ差し引いても今優先すべき事が何か考えてくれっか?オレとしてはこんな大勢と出会うのは初めてなんだからさ」


「大勢?」

「それってオマエが今までに何回もここに飛ばされて同じように飛ばされた人と出会ってるって事かよ?」


「まぁ、そうだけど。何で同じような内容繰り返して質問した?」

「トモキはバカだからほっとけ」


「マナト!?ひどくね!?」

「……菱倉マナト、だったか?1つ言っとくけど、オレが何か良からぬ事を企んでるとしたらオマエらを助けたりしない。オマエらを助けたのはここが危険だから、オマエらをその危険から逃れるためにやった事だと理解して欲しいもんだな」

「どうかな。オマエがオレたちを助けても何のメリットも無い気がするんだけどな」


「メリットデメリットで話をするなら……この後の展開次第ではメリットが上回るかもな」

「この後?」


「この後ってどういう事なんだ?その、それって……危険だからってのと関係あるのか?」


 騎坂アキトの発言に事ある毎に反応する菱倉マナト。状況が状況なせいか変に突っかかっている菱倉マナトだけでなく危うい空気感にならないか心配な気持ちのあった姫導ヒロも騎坂アキトの言う『この後』という点が気になったのか思わず反応してしまう。



 何かしらの意図があっての発言だなんて事は当たり前だ。ただ、姫導ヒロは騎坂アキトのこ発言よりも前に出た『ここが危険だから』という発言が大前提のものなのかどうかが気になっていたのだ。


 関係性を確認するような質問をしてしまう姫導ヒロ。そんな彼の質問に対して騎坂アキトは菱倉マナトとの間に生じたものをどうにかする事もなく後回しにして答えようとした。


 菱倉マナトに要らぬ疑いの目を向けられようとそんなのは騎坂アキトは気にしないのだろう。


 だが、そんな騎坂アキトの行動を妨げるように予想外の事が起きてしまう。


 先程、飛来してきた雷撃に吹き飛ばされ瓦礫に叩きつけられたはずの怪物が半身に火傷を負った状態でゆっくり起き上がろうと動き始め、それに気づいた騎坂アキトは舌打ちをするなり右手に強い雷撃を発現させ纏わせると素早く怪物の方へとそれを撃ち飛ばし直撃させる。


 突然の騎坂アキトの行動、加えて彼の右手に現れた雷撃に姫導ヒロたち全員が驚かされるが、彼らの驚きの反応を気にするつもりの無い騎坂アキトは少し深刻そうな表情で彼らにここから離れる旨を伝えようとするが、その際に彼の口から出た言葉に姫導ヒロたちは今置かれている状況が如何に危険なものかという事実を突きつけられてしまう。


「説明は後回し、今はここから離れる。でなきゃオレもオマエらも全員連れてかれる」

「連れてかれる……って連れていかれるって事か!?誘拐されるって意味か!?」


「そういうニュアンスで言った。少し黙っててくれおバカさん」

「誰がおバカさんだ!!オレは……

「トモキ、ストップ!!騎坂、簡単にだけ説明して欲しい」


「いいよ、そのつもりだし。とりあえず……こっちついてきて来んね?」


 何か知っているだろうという点に関して思う所はあれど今は彼を信じるべきだと判断した姫導ヒロは軽率とも取れる発言に対しての勇心トモキの怒りを理解しながらもそれを宥めて騎坂アキトからの説明を優先させ、そのつもりだと返した騎坂アキトはひとまず姫導ヒロたちをここから離れさせようとどこかに導くように自分が来た道を引き返すように走っていく。


 完全に怪物が起き上がる前に離れなければ、そう考えた姫導ヒロは怪物が最悪の行動を取った場合を想定してか姫乃ユリナや愛姫エレナと2人の友人を先に行かせ、姫乃ユリナたちが騎坂アキトの行った方へ向かうと続けて彼は菱倉マナトと勇心トモキを引き連れその場を走り去っていく……





 ******



 姫導ヒロが2人と共に暫く走ると半壊している程度の不気味な建物の中から騎坂アキトが姿を見せ、彼はこっちだと伝えるように手招きをする。


 それに誘われるように姫導ヒロは2人と共にその建物の中へ入るが、そこには……



「ヒロ、無事だったか!!」


 そこには何と現在の行方が分からない状態だった守上ダイキの姿があった。守上ダイキだけでは無い、彼の他にも女子生徒がいた。


 彼の姿を目にした事で姫導ヒロはもちろんの事、勇心トモキも無事だった事を確認出来た事による安心感を抱くが、菱倉マナトは守上ダイキが何故騎坂アキトの案内した建物の中に居たのか疑問を抱かずには居られなかった。


「ダイキ、オマエが何でここに居るんだ?」

「オレはヒロたちがどこに行ったのかを探していたんだが鐘の音が聞こえてきてここに飛ばされていたんだ。鐘の音を聞いた時にこの2人も同じように音を聞いて飛ばされたから、オレはひとまずヒロたちも居ると信じて怪物から逃げようとしたんだ。その時に騎坂アキトに助けられたんだ」


「騎坂アキトが……?」

「初めは驚いたが騎坂アキトはこれまでに似たような被害者を怪物から助けていたとの事だ。それを聞いてオレは騎坂アキトに頼ることにしたんだ」


「はぁ……姫導に続いて守上までフルネーム呼びか。まぁ、そこまで親しくないから仕方ねぇって割り切るか」


「あっ、すまない騎坂!!」

「気にすんなって。それよか……揃った事だし話してやるか」


「話すって……さっき言ってた連れていかれるって言葉の事だよな?」

「そうだ」


「その……連れていかれるってのは……言葉通りの意味なんだよな?」

「言葉通りの意味、誘拐とかのニュアンスで捉えて構わない。あの怪物……ワンダーモンスターは替えのきく兵隊の1つ、それを統率してるやつの所に連れていかれんだよ」


「ワンダーモンスター……それがあの怪物の名前なのか?」

「ワンダーモンスターってのは総称……てか、そうか。オマエらまだ何も知らないんだったな。とりあえず、順に話すか……」


 先程の怪物の事を《ワンダーモンスター》と呼び、その名が総称とされている事を口にした騎坂アキトは今の姫導ヒロたちがまだ何も知らないと思い出したように言うと順を追って話す旨を伝えて建物内のちょうど座れそうな場所を見つけて腰を下ろす。


 何が語られるのか、騎坂アキトの口から何が話されるのかと姫導ヒロたちの視線と注目が向けられ、それが同時に姫導ヒロたちの中に緊張感を与えている状態の中で騎坂アキトは語り始める。


「まず、このワンダーワールドは……」


 

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