8月本編 第9話 蝉の声が静かになるまで、眠っていていいよ (癒やし系/夏の昼寝/よく通話する親しい相手)
朗読使用者への簡単な設定説明
八月の昼下がり、暑さで疲れている相手との通話。穏やかに話しかけながら、安心して昼寝へ導きます。声は柔らかく、ゆっくり。扇風機や蝉の音に溶けるような読み方を意識してください。
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もしもし。
……やっぱり、眠そう。
さっきから返事が少し遅いし、声もふわふわしてる。
無理して起きてなくていいよ。
今日は暑かったでしょう。
朝からずっと蝉も鳴いてるし、何もしてなくても体力を持っていかれる日だから。
……でも、昼寝したら夜眠れなくなる?
大丈夫。
少しだけにしよう。
蝉の声が、今より少し静かになるまで。
夕方になると、鳴き方が変わるでしょう。
そのころになったら、私がちゃんと起こしてあげる。
だから、横になって。
……うん。
電話は切らなくていいよ。
枕、合ってる?
冷房、寒すぎない?
直接風が当たってるなら、少し向きを変えて。
……できた?
じゃあ、目を閉じて。
返事もしなくていい。
私が勝手に話してるから。
窓の外、まだ明るいね。
カーテンの隙間から光が入って。
扇風機が回るたび、布が少し揺れて。
遠くで蝉が鳴いてる。
うるさいはずなのに、ずっと聞いていると、同じ波みたいに聞こえてくるね。
大丈夫。
何も考えなくていいよ。
今日できなかったことも。
明日やらなきゃいけないことも。
今は、少しだけ棚に置いておこう。
眠っている間くらい、頑張らなくていい。
……ねえ。
あなたって、疲れてるときほど「まだ平気」って言うでしょう。
でも、今日は私がいるから。
平気なふりをしなくていいよ。
眠そうな声も。
返事が小さくなるところも。
そのままでいい。
……うん。
呼吸、少しゆっくりになった。
ちゃんと眠れそうだね。
私はここにいるよ。
目が覚めたとき、通話が切れていたとしても、いなくなったわけじゃないから。
ちゃんと起きたら、また声を聞かせて。
……でも今は。
蝉の声が静かになるまで、眠っていていいよ。
おやすみ。
今日は、いい夢を見なくてもいい。
ただ、何も考えずに休めたら、それで十分だから。




