6月本編 第4話 今日は何もしなくていい雨だよ (お姉さん系/低気圧の日/少し年上の親しい相手)
朗読使用者への簡単な設定説明
この台本は、女性VTuberが「少し年上で、相手をやさしく甘やかすお姉さん系の女性」として読むシチュエーションボイスです。
舞台は6月、低気圧で体も心も重たい雨の夜。相手は何もやる気が出ず、少し自己嫌悪になっています。
彼女は電話越しに、無理に励ますのではなく「今日は何もしなくていい」と受け止めます。
声は落ち着いて、やわらかく。雨音に合わせて、ゆっくり包み込むように読んでください。
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……もしもし。
うん。
出たよ。
……ふふ。
声、ちょっと沈んでるね。
今日は、だめな日?
……そっか。
うん。
そういう日、あるよね。
雨、ずっと降ってるし。
空も暗いし。
こういう日は、朝から体が重たいことあるもん。
頭がぼんやりして。
肩も少し張って。
何かしなきゃって思ってるのに、手が動かなくて。
そのまま時間だけ過ぎていく感じ。
……うん。
低気圧のせいにしていいよ。
本当に。
今日は、あなたが弱いから動けなかったんじゃない。
だらしないから何もできなかったんじゃない。
雨の日の空気が重たくて、体も心もそれに引っぱられただけ。
そういうことにしておこう。
……いいの。
今日は、それでいい。
ねえ。
今、どこにいるの?
……ベッド?
よかった。
ちゃんと横になれてるなら、えらい。
まだ机の前で、やらなきゃいけないものを見ながら落ち込んでいるのかと思った。
……あ、少し前までそうだったんだ。
うん。
じゃあ、移動できただけで今日は合格。
何もしてない、じゃないよ。
ちゃんと、休む場所まで自分を連れていったんだから。
それ、意外と大事。
……ふふ。
そんなことで褒めるのか、って思った?
褒めるよ。
だって、しんどい日はそれくらいのことが難しいんだもん。
立ち上がること。
電気を少し暗くすること。
水を飲むこと。
布団に入ること。
元気な日に当たり前にできることが、雨の日にはひとつひとつ重たくなる。
だから、できたら褒める。
ちゃんと。
……ねえ。
今、部屋は明るい?
……少し明るい?
じゃあ、できたら、少しだけ暗くして。
全部消さなくていいよ。
怖くならないくらいでいい。
雨の日の夜は、明るすぎると目も心も疲れるから。
……そう。
そのくらい。
うん。
声、少しやわらかくなった。
こういう日はね、無理に元気を出そうとしないほうがいい。
気合いで晴れの日みたいに動こうとすると、あとで余計に疲れるから。
雨の日には、雨の日の過ごし方があるの。
予定を全部こなせなくてもいい。
掃除ができなくてもいい。
返事が少し遅れてもいい。
やる気が出ないまま、ぼんやりしていてもいい。
今日は、何もしなくていい雨だよ。
……うん。
本当に。
あなたはたぶん、何もしない時間を怖がる人なんだと思う。
何かしていないと、置いていかれるような気がして。
何か進めていないと、自分がだめになったみたいに感じて。
休んでいるはずなのに、頭の中でずっと反省会をしてしまう。
……違う?
……ふふ。
違わない顔してる。
でもね。
休むって、何もしないことじゃないよ。
体がこれ以上疲れすぎないように、ちゃんと止まってあげること。
心がこれ以上すり減らないように、今日はもう責めないでいてあげること。
それも、ちゃんと大事なこと。
……ねえ。
今日、何もできなかったって言ったけど。
朝、起きたんでしょ?
ごはん、少しは食べた?
水は飲んだ?
こうして私に電話できた?
……ほら。
何もできてないわけじゃない。
ちゃんと今日をここまで運んできた。
それだけで十分な日もあるんだよ。
……うん。
今日は、そういう日。
雨が降ってて。
空が重くて。
体も少し重くて。
だから、いつもより少し甘く採点してあげる日。
満点じゃなくていい。
赤点じゃなければいい。
……ふふ。
そのくらい雑でいいのかって?
いいの。
雨の日の夜くらい、雑に自分を許してあげなきゃ。
毎日きっちり生きてたら、心が先に疲れちゃうよ。
あ。
布団、ちゃんとかぶってる?
……うん。
首元、冷やさないようにね。
六月って、じめっとしてるくせに、雨の夜は少し冷えることあるから。
暑いんだか寒いんだかわからなくて、体が疲れやすいの。
……そう。
ちゃんとかけて。
いい子。
……あ、今ちょっと照れた?
ふふ。
ごめんね。
でも、今日は甘やかす日だから。
あなたが自分を責めるなら、その分、私が甘やかす。
あなたが「だめだ」って言うなら、私は「大丈夫」って言う。
あなたが「何もできなかった」って言うなら、私は「ここまで来られたね」って言う。
そうやって、今日は少し釣り合いを取るの。
……ねえ。
雨の音、聞こえる?
そっちはどう?
……聞こえるんだ。
こっちも聞こえてるよ。
窓に当たって、細かく鳴ってる。
強すぎないけど、ずっと続いてる雨。
こういう音って、少し寂しくなることもあるけど。
誰かと話しながら聞くと、逆に落ち着くよね。
一人だと、部屋が広く感じる。
でも、電話越しに声があると、雨音が少しやさしくなる。
……うん。
今は、ひとりじゃないよ。
ちゃんとここにいる。
画面越しでも。
声だけでも。
私はちゃんと、あなたの夜のそばにいる。
……大丈夫。
今日できなかったことは、明日全部取り返さなくていい。
明日になってもまだ雨なら、明日も少しゆっくりでいい。
急に晴れの日の自分に戻らなくていい。
少しずつ。
本当に、少しずつでいい。
まずは眠る。
それから起きる。
顔を洗う。
水を飲む。
できたら、ひとつだけ何かする。
そのくらいでいいの。
……あ。
返事、少し眠そうになってきた。
よかった。
じゃあ、もうあまり考えなくていいよ。
今日は反省会、終了。
明日の不安も、いったん閉店。
心の中のお店、もう閉めちゃおう。
がらがらってシャッター下ろして。
「本日は雨天のため、早めに休業します」って貼り紙して。
……ふふ。
ちょっと変なたとえだった?
でも、いいでしょ。
想像したら、少し楽にならない?
……うん。
ならよかった。
ねえ。
目、閉じて。
……そう。
ゆっくり息して。
吸って。
……吐いて。
もう一回。
吸って。
……吐いて。
上手。
肩の力、少し抜けたね。
……そのまま。
今日は何もしなくていい雨だよ。
頑張れなかった自分を、責めなくていい夜だよ。
できなかったことを数えるより、ここまで来た自分を少しだけ撫でてあげる日。
……本当は、私がそばにいたら。
頭を撫でて、あったかい飲み物を渡して。
「もう寝ちゃいなさい」って言ってあげるんだけど。
今は声だけだから。
声で、そうするね。
……よしよし。
おつかれさま。
今日も、ちゃんと生きたね。
雨の中で、低気圧の中で、重たい体を抱えて、ここまで来たね。
えらいよ。
……うん。
本当に。
だからもう、眠っていい。
何もしなかった日じゃなくて、ちゃんと休みに向かった日。
そういうことにして、今日は終わりにしよう。
……おやすみ。
雨が降っているあいだは、私の声も一緒に置いておくから。
怖くなったら、雨音じゃなくて、私の声を思い出して。
今日は何もしなくていい雨だよ。
だから、安心して。
ゆっくり眠って。




