ジューンブライド番外 第5話 六月の花嫁になれないなら、せめて君の一番でいさせて
(ヤンデレ系/結婚できない悔しさと独占欲/強く執着している相手)
朗読使用者への簡単な設定説明
この台本は、女性VTuberが「静かに重い愛情を抱えたヤンデレ寄りの女性」として読むシチュエーションボイスです。
6月、結婚式場の前やブライダル広告を見たことで、「今の自分はまだ花嫁になれない」「相手を完全に自分のものにできない」という悔しさがにじむ場面です。
ただし、危険な言葉や強すぎる脅しではなく、優しい声の中に独占欲が混ざる方向で読んでください。
声は穏やかに、ゆっくり。感情を荒げず、静かな言葉ほど重く聞こえるようにすると雰囲気が出ます。
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……ねえ。
少しだけ、立ち止まってもいい?
……うん。
あそこの式場。
今日は誰かの結婚式だったのかな。
入口のところ、白い花が飾ってある。
リボンも、まだ揺れてる。
……きれいだね。
六月って、街の中にこういう白が増えるよね。
ドレス。
ブーケ。
教会の広告。
幸せそうな写真。
どれも明るくて、やさしくて、綺麗で。
なのに、見ていると少しだけ胸が痛くなる。
……変かな。
私は、ああいうものが嫌いなわけじゃないよ。
むしろ好き。
白いドレスも、花嫁も、誰かに選ばれる日も。
すごく、好き。
だからこそ、少し苦しいの。
……だって、あそこに立てる人は、ちゃんと選ばれた人でしょう?
たくさんの人の中から、
「この人と一緒にいたい」
「この人の隣で生きていきたい」
って、そう思ってもらえた人。
約束してもらえた人。
未来の中に、名前を書いてもらえた人。
……私は、まだそこに立てない。
六月の花嫁には、まだなれない。
……ねえ。
それって、思っていたより悔しいね。
自分でも、驚いた。
結婚なんて、今すぐどうこうする話じゃないってわかっているのに。
まだ早いって、ちゃんとわかっているのに。
それでも、白いドレスを見ると考えてしまう。
もし私があそこに立つなら、隣にいるのは誰だろうって。
……ううん。
違うね。
本当は、誰だろう、なんて思ってない。
最初から、君の顔しか浮かばなかった。
……ふふ。
困った顔。
大丈夫。
今すぐ答えを聞こうとしてるわけじゃないよ。
そんなことをしたら、君が少しだけ逃げたくなるって、わかってるから。
私はね。
君が逃げたくなるような言い方は、したくないの。
本当は。
できるだけ。
……でも、少しだけ聞いて。
私、悔しいの。
君の隣に立つ未来を、まだちゃんと約束してもらえていないことが。
君の一番近い場所に、まだ名前を置けていないことが。
誰かに取られるかもしれない未来を、笑って見過ごさなきゃいけないことが。
すごく、悔しい。
……ねえ。
君はさ。
私が、こういうことを考える女だって知ってた?
普段は、ちゃんと普通の顔をしてるつもり。
重くなりすぎないように、ちゃんと笑うし。
君が困らないように、言葉も選ぶ。
でも、本当はね。
君が誰と話していたのか、少し気になる。
君が誰に笑ったのか、少し覚えてしまう。
君の未来の中に、私以外の誰かが入り込む想像をすると、胸の奥が冷たくなる。
……少しだけ、だよ。
少しだけ。
……そう言えば、可愛く聞こえるかなって思ったの。
でも本当は、少しだけじゃないかもしれないね。
……あ。
今、離れようとした?
だめ。
……ううん。
ごめん。
だめ、なんて言い方、よくないよね。
でも、もう少しだけここにいて。
この白い花の前で。
六月の空の下で。
私が、君の未来のことを考えてしまったこの場所で。
もう少しだけ、隣にいて。
……ありがとう。
君は優しいね。
そうやって、私が少し重いことを言っても、すぐには振り払わない。
困った顔をしても、ちゃんと聞いてくれる。
だから私は、また少し欲張りになる。
……ねえ。
もし今、君の一番になれないなら。
せめて、君が一番思い出す人でいたい。
雨の日に、傘を見たら私を思い出してほしい。
白い花を見たら、私のことを考えてほしい。
六月の結婚式の写真を見たら、ほんの少しだけでいいから、私が白いドレスを着ているところを想像してほしい。
……変?
でも、そうしてほしいの。
君の毎日の中に、少しずつ私を残したい。
気づかないくらい自然に。
でも、消えないくらい深く。
君が誰かと話していても。
別の誰かに笑いかけていても。
夜になったら、ふっと私の声を思い出してほしい。
……そうしたら、少し安心できるから。
今はまだ、花嫁にはなれない。
約束もない。
指輪もない。
白いドレスもない。
でも、君の心の中に私の場所があるなら。
私は、少しだけ待てる気がする。
……少しだけ、ね。
ふふ。
怖い?
……怖くない?
……そっか。
それなら、もう少しだけ本音を言ってもいい?
私、六月の花嫁が羨ましい。
あんなふうに、誰かの隣に立って。
たくさんの人の前で、ちゃんと特別だって認められて。
「この人です」って示してもらえることが。
羨ましくて、悔しくて。
胸の奥が、ちくちくする。
私はまだ、君の何なんだろうって。
親しい人?
大事な人?
特別な人?
……ねえ。
どれなら、君の中で一番近い?
私は、できれば全部がいい。
わがままだね。
でも、君のことになると、わがままになる。
他のものなら我慢できるのに。
君の隣だけは、誰かに譲りたくない。
……君の一番近くにいたい。
君が疲れたときに思い出す声も。
嬉しいことがあったときに一番に伝えたくなる相手も。
寂しい夜に会いたくなる人も。
全部、私がいい。
……言いすぎた?
でも、もう隠すのは少し疲れた。
六月って、ずるいね。
白いドレスや結婚式場や花束が、私の中の欲張りな部分を起こしてしまう。
普段なら、もっと静かにできるのに。
今日はだめ。
君の未来に、私がいないかもしれないって思ったら。
そんなの嫌だって、心が勝手に言ってしまう。
……ねえ。
今すぐ花嫁にして、なんて言わない。
そんなこと言ったら困るでしょう?
だから、今日はひとつだけ。
君の一番でいさせて。
今夜だけでもいい。
明日になったら、また普通の顔をするから。
いつもみたいに笑って、重くならないように気をつけるから。
でも今夜だけは。
六月の花嫁になれない私を、君の一番近くに置いて。
……だめ?
……。
ありがとう。
そういう小さな返事だけで、私は少し救われる。
……本当はね。
いつか、ちゃんと聞きたい。
私を選んでくれる?
私を隣に置いてくれる?
私の白いドレスを、君は見たいと思ってくれる?
でも、それは今じゃない。
今じゃないから、私は待つ。
待つけど。
待っている間も、君の中で消えたくない。
……だから、覚えていて。
今日、式場の前で私が少しだけ黙ったこと。
白い花を見て、胸が痛くなったこと。
そして、君にこう言ったこと。
六月の花嫁になれないなら、せめて君の一番でいさせて。
……ふふ。
言ってしまったね。
でも、後悔はしてない。
私は、君の一番になりたい。
たぶん、それだけは本当だから。
……さあ、行こうか。
あまりここにいると、私、もっと欲張りなことを言ってしまいそう。
でも、最後にひとつだけ。
次に白いドレスを見たとき。
私のこと、思い出してね。
忘れたら……少しだけ、拗ねるから。
……ううん。
たくさん、拗ねるかも。
ふふ。
だから、忘れないで。
君の未来に、私が入りたいって言った六月の夜のことを。




