6月本編 第1話 雨の日でも、おはようは少しやさしい (清純派/梅雨入りの朝/同級生)
朗読使用者への簡単な設定説明
この台本は、女性VTuberが「清純派で、やわらかく相手に寄り添う同級生」として読むシチュエーションボイスです。
舞台は6月、梅雨入りした朝の昇降口。雨で少し気分が沈んでいる相手に、彼女が静かに声をかけます。
恋愛感情はまだ強く言い切らず、雨の日の憂うつさを和らげる“やさしい距離感”を大切にしてください。
声は明るすぎず、しっとりと。雨音に溶けるような落ち着いたテンポが合います。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
……おはようございます。
あ、すみません。
急に声をかけてしまって。
でも、今ちょうど目が合ったので。
それに、なんだか少しだけ……元気がなさそうに見えたから。
……ふふ。
やっぱり、雨のせいですか?
今日は朝からずっと降っていますね。
傘を差して歩いていると、いつもの通学路なのに少し遠く感じます。
靴も少し濡れるし、鞄も気になるし。
傘の端から落ちる雨粒ばかり見ていると、なんとなく気持ちまで下を向いてしまうというか。
……はい。
私も、少しだけ眠かったです。
雨の日の朝って、布団から出るのがいつもより難しくないですか?
外が薄暗いから、まだ夜の続きみたいで。
目覚ましが鳴っても、もう少しだけ、と言いたくなってしまって。
でも、ちゃんと来ましたね。
あなたも、私も。
……それだけで、今日は少し偉いと思います。
ふふ。
大げさですか?
でも本当に。
晴れの日なら当たり前にできることが、雨の日には少し重くなるでしょう?
起きることも、着替えることも、靴を履いて外に出ることも。
だから、こうしてちゃんと学校まで来たなら、もう朝の最初の試練は越えたんじゃないかなって。
……あ。
傘、少し濡れていますね。
ここに置くとき、気をつけてください。
他の傘と触れると、あとで持ったときに手が濡れてしまうから。
……はい。
その向きなら大丈夫だと思います。
私の傘も、少し水が溜まっていました。
雨粒って、小さいのに集まると結構重いですね。
傘を閉じるとき、ぱたぱたって音がして。
ああ、今日は本当に雨なんだなって、そこで改めて思いました。
……昇降口も、いつもより静かですね。
みんな傘をたたんだり、靴を履き替えたりするのに少し時間がかかるからでしょうか。
声も、いつもより少し低い気がします。
雨音があると、人の声って自然と小さくなるのかもしれません。
……でも、私はこの感じ、少し好きです。
もちろん、雨で濡れるのは苦手ですし、髪も少し広がってしまうし。
晴れているほうが楽だなって思うこともあります。
でも、雨の日の学校って、少しだけ別の場所みたいに見えるでしょう?
廊下の音も、窓の景色も、教室の空気も。
いつもより静かで、少しゆっくりで。
そういう日は、無理に元気を出さなくても許される気がするんです。
……あなたも、今日は無理に明るくしなくていいと思います。
朝から雨で、空も重くて、足元も濡れていて。
そんな日に、晴れの日と同じ顔をしようとすると、少し疲れてしまうから。
今日は、雨の日の顔でいいんじゃないでしょうか。
……雨の日の顔?
えっと……。
少し眠そうで、少し静かで、でもちゃんとここにいる顔、です。
……ふふ。
今のあなたみたいな。
あ、いえ。
悪い意味ではありませんよ。
むしろ、少し安心します。
あなたもちゃんと雨の日の朝に巻き込まれているんだなって。
私だけじゃないんだなって思えるので。
……そういう朝に、おはようって言える相手がいるのは、いいですね。
雨音の中で聞く「おはよう」は、晴れの日より少しやさしく聞こえる気がします。
声が雨に包まれて、角が取れるのかもしれません。
……あ。
今、少し笑いましたね。
よかった。
その笑い方、雨の日に似合います。
大きく笑うのではなくて、少しだけ口元が緩む感じ。
それだけで、さっきより昇降口が明るくなった気がします。
……あの。
もしよければ、教室まで一緒に行きませんか?
雨の日の朝って、ひとりで廊下を歩くと少し静かすぎるので。
誰かと並んで歩くくらいが、ちょうどいい気がして。
……ありがとうございます。
では、行きましょうか。
あ、床、少し滑りやすいので気をつけてください。
ほら、そこのところ。
傘の水が落ちているみたいです。
……大丈夫ですか?
よかった。
ふふ。
私、少し心配しすぎでしょうか。
でも、雨の日って、いつもなら気にならないことが少し気になります。
足元とか、濡れた肩とか、鞄についた雨粒とか。
それから、隣を歩いている人がちゃんと寒くないか、とか。
……あ。
肩、少し濡れていますね。
傘からはみ出していたんでしょうか。
ハンカチ、使いますか?
……遠慮しなくていいですよ。
予備もありますから。
はい。
……そのままだと、制服が少し冷たくなってしまいます。
梅雨の雨って、暑いのか寒いのかよくわからないところがありますよね。
外はじめっとしているのに、濡れたところだけひんやりして。
……はい。
そうやって軽く押さえるくらいで大丈夫だと思います。
ふふ。
なんだか、こうしていると本当に梅雨が始まったんだなって感じますね。
四月は桜で、五月は新緑で。
六月は、傘と雨音。
季節ごとに、近づく理由が少しずつ変わっていくのが不思議です。
……春は、桜を見るために立ち止まって。
五月は、風が気持ちいいから少し遠回りして。
六月は、雨に濡れないように少し近く歩く。
……あ。
今の、少し恥ずかしいことを言いましたね。
でも、雨の日ってそういうところがあります。
普段より距離が近くなるのに、雨のせいにできるというか。
傘があったり、床が濡れていたり、風が冷たかったり。
そういう理由があるから、少しだけ人の近くにいても不自然じゃない。
……私は、それが少しだけ嬉しいです。
……あ、すみません。
また言いすぎました。
でも、今日は雨なので。
少しくらい、素直でもいいことにしてください。
……教室、もうすぐですね。
さっきより、少しだけ顔がやわらかくなりました。
……本当です。
昇降口で会ったときより、雨に負けていない顔をしています。
もちろん、まだ眠そうですけど。
それは私も同じなので、お互い様です。
今日は一日、雨かもしれませんね。
窓の外も暗いし、休み時間も少し静かかもしれません。
でも、朝にこうして少し話せたから、私はそんなに嫌な日じゃない気がしてきました。
……あなたは?
……少しだけ、ましになった?
ふふ。
それならよかったです。
雨の日でも、おはようは少しやさしい。
そう思えたら、今日の朝はもう十分かもしれません。
……では、入りましょうか。
教室の中でも、もし少し気分が重くなったら。
雨のせいにして、少しだけ力を抜いてください。
私もそうします。
そして、もし目が合ったら。
また、小さくおはようって言うみたいに、少しだけ笑いましょう。
それだけで、雨の日も少し歩きやすくなる気がするので。
……はい。
今日も、よろしくお願いします。
梅雨入りの朝を、あなたと一緒に始められてよかったです。




