ジューンブライド番外 第1話 白いドレスを見て、少しだけ未来を考えました
(清純派/ジューンブライドへの憧れ/友達以上恋人未満)
朗読使用者への簡単な設定説明
この台本は、女性VTuberが「控えめで清純な女の子」として読むシチュエーションボイスです。
6月の街で、ショーウィンドウに飾られたウェディングドレスを相手と一緒に見つけます。
まだ恋人ではない、あるいは恋人未満の曖昧な関係。だからこそ、“結婚”という未来を口にするには少し早く、でも憧れは隠しきれません。
声はやわらかく、少し照れながら。焦りや悔しさは激しく出さず、「今はまだ届かない未来を見てしまった切なさ」を大切に読んでください。
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……あ。
見てください。
あのお店のショーウィンドウ。
……ウェディングドレス、ですね。
きれい……。
六月だからでしょうか。
街のあちこちで、こういう飾りを見かけるようになりましたよね。
白い花とか、レースのリボンとか、教会みたいな小物とか。
普段なら通り過ぎてしまうお店まで、なんだか少し特別に見えてしまいます。
……あ、ごめんなさい。
急に立ち止まってしまって。
でも、あまりにもきれいだったから。
少しだけ、見ていたくなってしまいました。
……ふふ。
本当に、白いんですね。
当たり前ですけど。
でも、ただ白いだけじゃなくて、光の当たり方で少しずつ違って見える。
胸元の刺繍とか、スカートの重なった布とか。
近くで見たら、きっともっと細かいんでしょうね。
……ああいうドレスって、着る人のためだけじゃなくて、見守る人の記憶にも残る服なんだと思います。
写真にも残るし。
言葉にも残るし。
たぶん、その日の空気ごと、ずっと残る。
……なんて。
私、少し大げさですね。
でも、ジューンブライドって、やっぱり憧れます。
六月の花嫁は幸せになれる、なんて。
本当にそうなのかはわからないけれど、そう信じたくなるくらい、響きがきれいです。
六月って、雨も多いし、空も重たい日が多いのに。
その中で白いドレスを着るって、なんだか少し不思議です。
曇り空の下でも、雨音の中でも、その人だけはちゃんと明るく見えるような気がして。
……もし雨だったとしても、きっと悪くないですよね。
傘の音がして、空気が少ししっとりしていて。
花の匂いも、いつもより近く感じて。
そういう結婚式も、静かできれいだと思います。
……あ。
すみません。
また一人で話してしまいました。
でも、あなたが何も言わずに聞いてくれるから。
つい、考えていたことをそのまま言ってしまいます。
……え?
似合いそう、ですか?
……っ。
あ、あの。
それは、その……ドレスが、ですか?
私に?
……もう。
そんなふうに普通の顔で言わないでください。
急に言われると、どう返せばいいのかわからなくなります。
……でも。
ありがとうございます。
嬉しいです。
たぶん、すごく。
……ああいう服を着る日って、どんな気持ちなんでしょうね。
朝から緊張して、手が少し冷たくなって。
でも、誰かが隣にいてくれたら、少しだけ安心できて。
扉が開く前に、深呼吸をして。
その先に、自分を待ってくれている人がいる。
……そう考えると、すごいことですね。
誰かに選ばれるって。
たくさんの人がいる中で、この人と一緒に生きていきたいって思ってもらえることって。
きっと、とても幸せで、少し怖くて、でも逃げたくないくらい大切なことなんだと思います。
……私は、まだ。
まだ、そういう場所には立てません。
当たり前ですよね。
急に何を言っているんだって、自分でも思います。
でも、あの白いドレスを見ていたら、少しだけ考えてしまったんです。
いつか私も、誰かにそう思ってもらえる日が来るのかなって。
……それで。
その“誰か”の顔を考えようとしたら。
……あなたの顔が、浮かびました。
……ごめんなさい。
困らせましたよね。
今のは、聞かなかったことにしてもいいです。
ううん。
やっぱり、全部なかったことにはしたくないです。
だって、嘘ではないから。
今すぐ何かを答えてほしいわけではありません。
そんなつもりで言ったんじゃないんです。
ただ、六月の街で、白いドレスを見て。
少しだけ、未来のことを考えて。
その未来の隣に、あなたがいたらいいなって……思ってしまっただけで。
……ずるいですね。
“だけ”なんて言い方をしても、全然軽くならないのに。
でも、本当に今すぐじゃなくていいんです。
今の私たちは、まだその前のずっと手前にいる気がします。
一緒に歩いて、時々話して、こうして立ち止まって。
少しずつ、知らなかった表情を知っていく途中。
それなのに、あんな白いドレスを見てしまうと、急に遠い未来が近く見えてしまう。
だから少し、焦るんです。
自分だけが、こんなことを考えているのかなって。
あなたはただ一緒に歩いているだけなのに、私だけが勝手に胸を高鳴らせているのかなって。
それが、少しだけ悔しいです。
……ふふ。
変ですよね。
まだ何も始まっていないのに、もう届かないみたいな気持ちになるなんて。
でも、女の子って、たぶんそういうところがあるんです。
きれいなドレスを見ただけで。
指輪の広告を見ただけで。
誰かの結婚式の写真を見ただけで。
自分の未来まで、少しだけ揺れてしまう。
……あなたは、どうですか。
いつか、そういう未来のことを考えたりしますか?
……いえ。
答えにくかったら、今は大丈夫です。
むしろ、すぐに答えられないくらいが自然なのかもしれません。
結婚なんて、軽く言えることではないですから。
でも。
もし、いつか。
本当にいつかでいいんです。
あなたが誰かと一緒に歩いていく未来を考える日が来たら。
そのとき、ほんの少しでも、私のことを思い出してくれたら嬉しいです。
今日、ショーウィンドウの前で立ち止まって。
白いドレスを見て、少しだけ照れていた私のことを。
……あ。
また、重いことを言ってしまいました。
でも今日は、六月だから。
ジューンブライドだから。
少しだけ、許してください。
普段なら言えないことも、季節のせいにすれば、少しだけ口にできる気がするんです。
……ねえ。
今はまだ、憧れのままでいいです。
白いドレスも。
六月の花嫁も。
あなたの隣で未来を考えることも。
全部、今はまだ遠いままでいい。
でも、いつか。
もしその未来に少しずつ近づけるなら。
そのときは、私。
ちゃんとあなたの隣に立てる人になりたいです。
……なんて。
言ってしまいました。
恥ずかしいですね。
でも、不思議です。
言ってしまったら、少しだけ胸が軽くなりました。
……あの。
もう少しだけ、このドレスを見ていてもいいですか?
きっと、今日のことを覚えておきたいので。
六月の少し湿った空気とか。
ガラス越しの白いドレスとか。
あなたが隣で、何も急かさずにいてくれたこととか。
そういう全部を、ちゃんと。
……ありがとうございます。
今日はまだ、憧れのままでいいです。
でも、いつか。
いつか、こういう白い未来を考えるとき。
あなたが隣にいてくれたら……私は、きっと嬉しいです。




