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女性VTuber向け 朗読しやすい3分シチュエーションボイス台本集 〜季節イベント対応〜(無料・使用許諾不要)  作者: 常陸之介寛浩 本能寺から始める信長との天下統一
5月に合わせた台本集

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風、ぬるい。だから少しだけここにいて (クーデレ/窓開けっぱなしの教室/隣の席)

……まだいたんだ。


いや。

別に、悪いって言ってない。


ただ、みんな帰ったあとも残ってるの、少し意外だっただけ。

君、こういうとき、わりとすぐ帰る人だと思ってたから。


……忘れ物?


ああ、ノート。

机の中?


……ふうん。


じゃあ、取ったら帰るんだ。


……そう。


……。


窓、開けっぱなしだったんだね。

誰だろ。

最後に閉め忘れたの。


風、入ってきてる。


……ぬるい。


四月の風とは、もう違うね。

あのころは、まだ少し冷たかった。

窓際にいると、袖の中にすっと入ってきて、ちょっと肩が縮む感じがあったけど。

今は、そういうのがない。


ぬるくて、やわらかくて。

でも、少しだけ重い。


五月の風って、なんか……眠くなる。


……なに。

急にそういうこと言うの、珍しい?


そうかもね。


でも、放課後の教室って、少しだけ変になるから。

昼間はあんなにうるさかったのに、人がいなくなった途端、机と椅子だけが残って。

風の音とか、カーテンの揺れる音が、やけに大きく聞こえる。


こういうときは、余計なことも少し考える。


……君も?


……そっか。


じゃあ、少しだけ座れば。

ノート、もう見つかったんでしょ。

すぐ帰らなくてもいいと思う。


……別に引き止めてない。

ただ、今出ると風でプリント飛びそうだし。

あと、廊下、まだ部活の人で少し騒がしいから。

ここにいるほうが静か。


……言い訳っぽい?


……うるさい。


いいから、座れば。


……そこじゃなくて。


隣。


……いや、変な意味はない。

席、近いんだから自然でしょ。

わざわざ離れて座られるほうが、逆に気になる。


……そう。

そこ。


……近いね。


……いや、今のは私が呼んだんだった。

忘れて。


……。


やっぱり、風、ぬるい。


カーテン、さっきからずっと揺れてる。

白い布がゆっくり膨らんで、また戻って。

見てると少し眠くなる。


……君も、眠そう。


連休明けからずっと、少しだけ顔がだるそうだった。

授業中も、ペン持ったまま止まってることあったし。

ノート、ちゃんと取れてた?


……取れてる?


本当に?


……見せて。


……うん。

意外とちゃんとしてる。


でも、字。

後半ちょっと眠い。

ここ、線がふにゃってなってる。


……ふふ。


なに。

笑うの珍しいって顔しないで。

たまには笑う。


君の字、眠気が出てて面白かっただけ。


……怒った?


怒ってないね。

わかる。

今のは、少し照れただけ。


……そういうの、顔に出るよ。


四月のころより、出るようになった気がする。

最初はもう少し硬かった。

話しかけても、返事はするけど、どこか一歩引いてる感じがあった。


今は、少し違う。

変なこと言うと、ちゃんと困る。

からかうと、少しだけ目が泳ぐ。

近くに座ると、声が少し遅れる。


……うん。

見てる。


隣の席だし。


それに、君は見ていて飽きない。

……あ。


今のは、変な意味じゃない。


……いや。

少し変な意味かも。


わからない。


五月って、そういう季節なのかもしれない。

四月は、ただ新しいものに慣れるだけで精一杯だったけど。

五月になると、慣れたぶんだけ、相手の細かいところが目に入る。


袖をまくる癖とか。

暑い日に、少しだけ襟元を気にするところとか。

眠いとき、まばたきが遅くなるところとか。


前より、そういうのが見える。


……そして、見えると、少しだけ気になる。


……なに。

黙らないで。


こっちまで、言いすぎた気がするでしょ。


……あ。

また風。


プリント、飛ぶ。


……ん。


押さえた。


君も押さえてくれたんだ。


……指、近い。


……触れてない。

触れてないけど、近い。


こういう距離、少し困る。

離れればいいだけなのに、離れなくてもいい理由を探してしまうから。


……君も離れないんだ。


……そっか。


じゃあ、少しだけこのままでいい。


五月の放課後だし。

風、ぬるいし。

教室、誰もいないし。


……たぶん、今なら少しくらい変でも、風のせいにできる。


……なに、その顔。


変なこと言った自覚はある。


でも、聞かなかったことにするのはなし。

せっかく言ったから。


……。


ねえ。


この教室、昼間より今のほうが好きかも。

人が多いと、机も椅子もただの道具みたいだけど。

誰もいなくなると、ここで一日過ごしたんだなって感じがする。


黒板に少し残ったチョークの跡とか。

誰かが閉め忘れた窓とか。

机の端に残った消しゴムの粉とか。

そういうのが、急にちゃんと見える。


君のことも、たぶん同じ。


人が多いところだと、同じクラスの一人。

隣の席の人。

でも、こうして放課後に二人だけになると、もう少し違って見える。


……近くにいる人。


……落ち着く人。


……少し、帰らないでほしい人。


……今の、最後のだけ聞かなかったことにして。


……無理?


……そう。


じゃあ、仕方ない。


でも、私だって毎日こんなこと言うわけじゃない。

今日はたまたま。

窓が開いてて。

風がぬるくて。

君がまだ教室にいて。


……それで、少し言いやすかっただけ。


……ん。

カーテン、また来た。


邪魔。


……あ、ごめん。

近い。


でも、君も避けなかった。


……じゃあ、このまま。


ほんの少しだけ。


……。


静かだね。


こんなに近いのに、うるさくない。

君のそういうところ、好きかもしれない。

必要以上に踏み込んでこないのに、ちゃんと隣にいるところ。


……うん。

たぶん、好き。


……あ。

いや、今のは。


……もういい。

訂正すると余計変になる。


そういう意味か、そうじゃない意味かは、今は決めなくていい。

ただ、今の私は、君がここにいるのが嫌じゃない。

むしろ、いてほしい。


それで十分。


……ねえ。

もう少しだけ、ここにいて。


風が止むまででもいい。

チャイムが鳴るまででもいい。

誰かが廊下を通るまででもいい。


長くなくていいから。


少しだけ。


……ありがとう。


……ふふ。

変な感じ。


君がいるだけで、教室の静かさが少し変わる。

一人だと静かすぎるのに、二人だとちょうどいい。


この風も、さっきまではただぬるいだけだったけど。

今は、少し気持ちいい。


……ねえ。


次にまた、窓が開けっぱなしの放課後があったら。

そのときも、少しだけここにいて。


私が言わなくても。

君が忘れ物をしたふりをしてでも。


……いや、そこまでしなくていいけど。


でも、いてくれたら嬉しい。


……うん。

今のは、ちゃんと言った。


じゃあ、もう少しだけ。

このまま。


五月の風がぬるいあいだだけでいいから。

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