起きてよ、今日はまだ一緒にいられるんだから (妹系/GWの朝寝坊/家族同然に近い女の子)
……ねえ。
ねえってば。
もう。
起きてよ。
朝だよー。
……うそ。
まだ起きないの?
ちょっと、ほんとに?
カーテンの隙間からこんなに光入ってるのに?
鳥も鳴いてるし、外、もうぜんぶ“朝です”って顔してるのに、まだそんなに気持ちよさそうに寝ていられるの、逆に才能だと思う。
……あ、もしかして。
わざと?
起きてるのに起きてないふりして、私がどこまで起こすか見てるとか。
……してない?
ほんとに寝てる?
むう。
じゃあ、しょうがないなあ。
おーい。
起きてくださーい。
本日はゴールデンウィークでーす。
お休みでーす。
だからって、お昼まで寝てていい理由にはなりませーん。
……ん。
あ、ちょっと動いた。
ほらほら。
起きて。
今日はせっかく一緒にいられる日なんだから。
……え?
あと五分?
だめ。
それ、平日でも休日でもだめなやつ。
“あと五分”って言った人、だいたい十五分くらい消えるもん。
私、知ってるよ。
君、そういうところだけ一貫してるし。
……む。
そのまま布団に顔うずめないでよ。
あー、もう。
じゃあ、こうする。
カーテン、ぜんぶ開けます。
……はい、朝ー。
まぶしいでしょー。
あはは、顔しかめた。
でも、今日はいい天気だよ。
すっごく。
空、ちゃんと青いし、風もそんなに強くなさそうだし。
こういう日にだらだら寝てるの、ちょっともったいない。
……うん。
もちろん、休日だからのんびりしていいんだけどね。
でも、“のんびりする”のと“寝続ける”のは、ちょっと違うじゃん。
せっかくなら起きて、ちょっとだけゆっくり朝ごはん食べて、外の空気見て、「あー、休みだー」ってしたほうが、得した気分になるし。
……ねえ。
聞いてる?
……聞いてないな、これ。
半分寝てる声だもん。
しょうがない。
最終手段。
……よいしょ。
布団、少しだけめくるよー。
わ。
あったか。
ずるい。
こんなの、私まで眠くなるじゃん。
……ん?
なに。
その、寝起きのぼんやりした目で見ないでよ。
ちょっとだけ罪悪感あるみたいになるから。
でも起きて。
ほら。
起きたら、今日は急がなくていいんだよ。
学校の日みたいに「早く早く!」って言わないし。
間に合うとか間に合わないとか、そういうのないし。
だからこそ、ちゃんと起きてほしいの。
だって、休みの日の朝って、起きてからの時間がごほうびみたいなものじゃない?
まだ外が明るくなったばかりで。
部屋の空気もちょっとやわらかくて。
顔洗って、ゆっくり何か飲んで。
何をするか決めてなくても、“今日は自由だ”って思える時間。
私、そういうの好き。
……君は?
好きじゃない?
……あ、今の顔だと、嫌いじゃないけど眠いって感じだね。
ふふ。
わかりやすい。
でもさ。
今日、ほんとに気持ちいい朝なんだよ。
窓開けたら風ちょうどいいし、新緑の匂いちょっとするし。
五月って、春の終わりと初夏のはじまりが混ざってて、朝の空気がいちばんいい気がする。
まだ暑すぎないし、でも寒くもないし。
こういう朝に、君と同じ部屋でだらだら起きるの、なんかちょっと特別。
……あ。
今、ちょっと目、開いた。
ふふ。
やっと話が耳に届いた?
ねえ。
起きたら、一緒に朝ごはん食べようよ。
まだ何食べるか決めてないけど、パンでもいいし、ホットケーキでもいいし。
簡単なやつでいいなら私も手伝うし。
あ、でもホットケーキはちょっと食べたいかも。
休日の朝って感じするから。
それで、そのあとどうしようね。
別に遠くに行かなくてもいいんだよ。
散歩でも。
コンビニでも。
近くの公園でも。
なんなら、家でごろごろしててもいいし。
でも、それも“起きてから”のごろごろがいいな。
一緒にソファに転がって、テレビつけっぱなしで、たまに会話して、眠くなったらまたちょっとだけうとうとする、みたいな。
……うん。
そういう休日、好き。
あ、いま笑った。
やっとちゃんと起きてきた顔してる。
ほら、上半身起こして。
そのままだとまた寝るでしょ。
……そう。
えらい。
わ。
寝癖ついてる。
すごい、後ろ、ぴょんってなってる。
……んー、じっとして。
直してあげる。
……よし。
……いや、よくない。
全然直ってない。
寝癖、意外と手強い。
あはは。
でも、そういうのも休日っぽくていいかも。
平日なら絶対「早く直して!」って言うけど、今日はちょっとくらいぼさぼさでも、まだかわいい感じするし。
……なにその顔。
かわいいって言われて変な顔しないでよ。
君じゃなくて、寝起きの雰囲気が、ね。
……いや、君もちょっと入ってるけど。
あ。
今、ちゃんと起きた。
耳まで起きた顔してる。
ふふ。
わかりやす。
でもほんとだよ。
休日の寝起きって、なんか無防備でずるい。
いつもより少し声も低いし。
動きもゆっくりだし。
髪も整ってないし。
そういう“まだ何にもなってない感じ”って、ちょっとだけ特別に見える。
平日は、起きたらすぐ学校の顔になるじゃん。
ちゃんと着替えて、ちゃんと間に合うようにして、ちゃんと外に出る準備をするから。
でも今日は、そういうのになる前の時間が長いでしょう?
だから今の君、ちょっとだけレア。
……え?
そんなに見ないで?
やだよ。
せっかくのGWの朝だもん。
見られるくらい、付き合ってよ。
だって、今日はまだ一緒にいられるんだから。
……あ。
今の、ちょっとだけ本音出たかも。
でもほんと。
連休って、始まる前は長いと思うのに、気づくとすぐ終わっちゃうじゃん。
だから、こういう朝の時間も、あとから思い出すと意外と大事なんだよ。
特別なことしてなくても。
起こしたとか。
寝癖なおしたとか。
眠そうな顔で文句言ってたとか。
そういうのが、ちゃんと“休みだったなあ”って記憶になる。
……うん。
だから今日は、少しだけわがまま言わせて。
起きて。
ちゃんと朝の時間、私にも分けて。
ほら、立てる?
……よし。
すごい。
えらい。
ちゃんと起き上がれた。
じゃあ、次は顔洗ってきて。
そのあいだに、私、お湯くらい沸かしておくから。
あ、でも。
冷たい牛乳もいいかも。
五月の朝って、なんかそういうの飲みたくなるよね。
……ん?
まだちょっと眠い?
そりゃそうでしょ。
起きたばっかりだもん。
でも、その眠さも含めて休日なんだよ。
しゃきっとしきらないまま、ゆっくり一日が始まる感じ。
私はけっこう好き。
……ねえ。
もし、このあと何も予定なくても。
今日がただの“なんでもない休みの日”でも。
私はそれでいいよ。
君と同じ朝にいて、同じ空気の中で、同じようにのんびりできるなら。
それだけで、ちゃんといい休日だと思うから。
……ふふ。
その顔、少しやさしくなった。
やっと休日の顔になってきたね。
じゃ、決まり。
今日は急がない。
慌てない。
眠かったら途中でまたソファでだらけてもいい。
でも、その前にちゃんと起きて、ちゃんと朝を始めること。
……うん。
約束。
ほら、いってらっしゃい。
顔、洗っておいで。
そのあとは、ゆっくり朝ごはんにしよう。
お日さまもちゃんと出てるし、風もやさしいし。
今日はたぶん、のんびりするための一日だから。
……ね。
起きてよ。
今日はまだ、一緒にいられるんだから。
……ふふ。
そう。
その返事なら合格。
じゃあ、GWの朝、ちゃんと始めよっか。
今日は急がなくていいね。




