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女性VTuber向け 朗読しやすい3分シチュエーションボイス台本集 〜季節イベント対応〜(無料・使用許諾不要)  作者: 常陸之介寛浩 本能寺から始める信長との天下統一
4月に合わせた台本集

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第12話 忘れ物、してない? 私が見るから (委員長系/新学期の世話焼き/同じクラスの相手)

……ちょっと。

待って。


はい、止まって。

そのまま動かないで。

……うん、やっぱり。


ボタン、ひとつずれてる。

それからネクタイ、少しゆるい。

あと、プリントの角、鞄から出てる。

今のまま教室入ったら、朝からちょっとだけ“危なっかしい人”認定されるところだったよ。


……なにその顔。

別に怒ってないし。

ただ、見つけたから言っただけ。


ほら、こっち向いて。

ネクタイ、直すから。

じっとして。

動くと結びにくい。


……よし。

で、ボタンも。

……はい、これで大丈夫。


まったくもう。

新学期って、みんな気が抜けない顔してるくせに、こういう細かいところは案外抜けるんだから。

君もそのタイプみたいだね。

朝からちゃんと来てるだけえらいけど、そのままだと惜しい。


……え?

なんでそんなに見てるのか、って?


見てるよ。

同じクラスなんだから。

それに、前からちょっと思ってた。

君って、表向きはちゃんとしてるのに、たまに妙に抜けるよね。

プリントの提出期限、覚えてるようで微妙だったり。

話はちゃんと聞いてる顔してるのに、最後の一行だけ見落としてたり。

そういうところある。


……図星?


ふふ。

やっぱり。


でも、悪いことじゃないよ。

むしろ、ちょっと安心する。

最初から何もかも完璧な人より、そのくらい人間味あるほうが、同じ教室にいて息がしやすいし。


あ。

今ちょっと、ほっとした顔した。

そういう顔もするんだ。


……なによ。

別に変なこと言ってないでしょ。


私はただ、新学期の最初って、みんな少し無理してるなって思うだけ。

ちゃんとして見られたいとか。

失敗したくないとか。

変に浮きたくないとか。

そういうので、肩に力が入ってる。


だからこそ、ネクタイが少し曲がってるとか、プリントの角が出てるとか、そういう小さい綻びがあると、逆に「ちゃんと人間なんだな」って思えて安心するの。


……あ、でも。

私は見つけたら直すけど。

見過ごすの、気になるから。


ほら。

鞄、貸して。


……貸してってば。

中身ひっくり返すわけじゃないから。

確認するだけ。


……はい。

筆箱よし。

教科書……今日はまだそんなに要らないか。

連絡帳、プリント、ハンカチ。

……ティッシュは?


……ないの?


はあ……。

でしょうね。

なんとなくそんな気がした。


はい、これ。

予備。

使っていい。

その代わり、次からはちゃんと持ってくること。


……お礼はいいから。

そういうのは、持ってないほうが悪いんだし。


でも。

ちゃんと「ありがとう」って言えるのはいいところだと思う。

そこは減点しないでおく。


……なに、その顔。

今、採点されたって思った?


まあ、ちょっとはしてる。

新学期だし。

クラス委員っぽいこと、ついしてしまうの。

別に立候補したわけじゃないのに、毎年こういう役回りになるんだよね。


忘れ物してる子がいたら気になるし。

提出物出してない人がいたら確認したくなるし。

時間ぎりぎりの人がいたら、時計見てそわそわするし。


……そう。

自分でも面倒な性格だと思う。


でも、嫌いじゃない。

誰かが少しでも困らずに済むなら、そのほうが教室の空気も落ち着くし。

それに……。


……いや。

やっぱり今のはいい。


……え?

気になる?


気になるよね、そりゃ。

でも、今言うほどのことじゃないし。


ただね。

私はたぶん、“ちゃんとしてるつもりなのに少し危なっかしい人”を見つけると、放っておけないの。

なんでかは、自分でもよくわからない。

でも、見つけたら、つい手を出したくなる。


だから君が悪い。

朝からそんな、ちょっと直したくなる状態で来るから。


……ちょっと笑わないでくれる?


私は真面目に言ってるんだけど。


ほら、次。

袖。


……うん、そこ。

ちょっとだけ折れてる。

動かないで。

直すから。


……よし。


ほんと、近くで見ると、意外と抜けてる。

教室で見るともう少しちゃんとして見えるのに。

朝って、人の“まだ整いきってない感じ”が出るのかもね。


……え?

私も?


私は大丈夫。

今日はちゃんと三十分前に起きて、持ち物も二回確認して、鏡の前も三回見たし。


……完璧すぎる?


普通でしょ。

普通……だと思う。

少なくとも、新学期の朝くらいはそれくらいやるものじゃない?


……あ。

でも。

ひとつだけ、予定外だった。


君がここまで危なっかしいとは思ってなかったこと。

それで、朝から思ったより手がかかる。


……なによ、その不服そうな顔。

だって事実でしょ。


でも、うん。

嫌じゃない。

むしろ、少し楽しいかも。


新学期って、どうしても空気が固くなるでしょう?

みんなまだ距離を測ってて、何を話したらいいかわからなくて、やけに静かだったり、逆に無理して明るかったりする。

その中で、こうして誰かのネクタイ直したり、忘れ物確認したりするのって、変な話だけど少し落ち着くの。

“いつもの私”でいられる感じがして。


……君も?

私にそうされると、少し落ち着く?


……へえ。


そうなんだ。


……ううん。

別に驚いてない。

ただ、少し意外だっただけ。

君って、自分のことは自分でやりますって顔をしてるから。

こういうふうに世話を焼かれるの、あんまり好きじゃないタイプかと思ってた。


……嫌じゃないんだ。


そっか。

じゃあ、少しくらいなら続けてもいいのかな。


あ。

もちろん、何でもかんでもって意味じゃないから。

でも、朝のこういう細かい確認くらいなら。

忘れ物してないか見たり。

ネクタイ曲がってたら直したり。

そういうのなら、まあ。


……え?

それ、かなり助かるって?


そ、そう。

じゃあ、ちゃんと感謝して。

私は朝の数分を使ってるんだから。


……うん。

そう、そのくらい素直でいい。


ふふ。

なんか今、ちょっとだけ調子狂った顔した。

でも、そういう顔のほうが、さっきより好きかも。

朝のぴりっとした感じが少しほどけてて。


ねえ。

新学期って、たぶんこういう小さいことで少しずつ楽になるんだと思う。

大きなイベントとか、劇的な出来事じゃなくて。

誰かに「ボタンずれてるよ」って言われるとか。

「それ持った?」って確認されるとか。

「ありがと」って言えるとか。

そういうので、教室がただの場所じゃなくなっていく。


だから。

今日のこれは、けっこう大事。

……と、私は思ってる。


……あ、ほら。

そろそろチャイム鳴る。

教室入るよ。


その前に、最後もう一回確認。

ハンカチよし。

ティッシュは私の予備。

プリントしまった。

ネクタイよし。

ボタンよし。


……うん。

これで大丈夫。


あとは君が、変なところでぼーっとしなければ完璧。


……なによ。

そのくらい言うでしょ。

ちゃんとしてそうで危なっかしいんだから。


でも。


そういうところ、嫌いじゃないよ。

放っておけないし。

見てて、ちょっとだけ気になる。

……あ。

今のは、深く受け取らなくていいから。


ほら、行くよ。


あ、それから。

もしまた明日も何か抜けてたら、ちゃんと言って。

隠して教室入ろうとしても、たぶん私が見つけるから。


……ふふ。

そう。

最初から頼ってくれたほうが早いでしょ?


新学期なんだし。

少しくらい、世話焼きが近くにいるほうが安心するじゃない。


だから、忘れ物してない?

って、明日もたぶん聞くよ。

私が見るから。

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