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女性VTuber向け 朗読しやすい3分シチュエーションボイス台本集 〜季節イベント対応〜(無料・使用許諾不要)  作者: 常陸之介寛浩 本能寺から始める信長との天下統一
4月に合わせた台本集

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第10話 春の匂いがする部屋で (彼女系/新しい部屋/恋人)

……わ。

ここ、ほんとに今日からなんだね。


おじゃまします。

……ふふ。

なんかちょっと変な感じ。

いつもと同じように話してるのに、ドアを開けた瞬間から空気が違う。

ちゃんと“新生活の部屋”の匂いがする。


……うん。

あるよ。

新しいカーテンの匂いとか、まだ使い慣れてない家具の木の感じとか。

段ボール開けたあとの、少し乾いた紙の匂いとか。

そういうのが全部混ざって、春のはじまりっぽい匂いになってる。


あ、見て。

窓、思ったより大きいね。

光、ちゃんと入ってきそう。

朝、ここ明るそうだなあ。

……ちゃんと起きられそう?


……その顔だと、ちょっと怪しい。

新生活って、最初の数日だけ妙にがんばれて、そのあと急に朝がつらくなるやつあるからね。

気をつけてよ?


……でも、いいな。

こういう部屋。

まだ“これから”がたくさん置いてある感じがする。

棚の上、少し空いてるし。

机の端も、まだ生活の癖がついてないし。

ここにこれから、少しずつ君の毎日が増えていくんだなって思うと、なんだか不思議。


……ん?

そんなに見回してるの、面白い?


だって、初めて来たんだもん。

ちゃんと見たいよ。

君がこれから毎日帰ってくる場所なんでしょ?

だったら、私も少し知っておきたい。


……あ。

このマグカップ、前に一緒に見たやつじゃない?


やっぱり。

覚えてるよ。

あのとき、シンプルすぎるかなって言ってたやつ。

結局これにしたんだ。


……ふふ。

じゃあ、ちょっとだけうれしい。

私と一緒に見たものが、ちゃんとここにあるの。


あ、でも。

そういうこと言うと、なんか重いかな。

……重くない?

ほんとに?


よかった。

私、たまにこういうの、言ってからちょっとだけ不安になるんだよね。

自分では普通のつもりなのに、相手からすると意外と重かったりしないかなって。


でも今日は、たぶん少しくらい素直でもいい日だと思う。

だって、新しい部屋だし。

新しい季節だし。

君の“これから”が始まる場所に、最初のほうで来られたの、ちょっと特別な気がするから。


……あ、そこ座っていい?

ありがと。

……ん。

このソファ、まだ少し固いね。

でも嫌いじゃないかも。

使っていくうちに、少しずつやわらかくなりそう。


……ねえ。

君も座りなよ。

そんなふうに立ったままだと、なんか私だけくつろいでるみたいじゃん。


……ふふ。

近いね。


でも、こういう部屋って、前より自然に距離が近くなる気がする。

教室とか外みたいに、ほかの音がいっぱいある場所じゃないし。

壁と、窓と、静かな空気の中で二人だけだと、声も少しやわらかく聞こえるし。


あ。

今、ちょっと照れた?


……その反応、かわいい。


ごめん。

でもほんとだよ。

引っ越したばっかりの部屋で、少しそわそわしてる感じ。

新しい場所なのに、私が来てるから余計に落ち着かないのかなって思うと、少しだけうれしい。


……え?

そりゃ落ち着かないでしょって?


ふふ。

そっか。

じゃあ、私のせいでもあるんだ。


なんだろうね。

春って、ただでさえ人を少し浮つかせるのに。

新しい部屋っていうだけで、さらに心が落ち着かなくなる。

しかもそこに、好きな人が来てるんだから。

そりゃ、平気な顔ばっかりしてられないか。


……あ。

今の、ちゃんと聞いてた?


聞こえないふりしてくれてもよかったのに。


……ううん。

別に撤回はしない。

今日は素直でいい日だから。


それにね。

私、この部屋、好きになれそう。

まだ何も完成してない感じが、かえっていいのかも。

完璧に整ってるより、これから一緒に思い出を置いていける余白がある感じ。


たとえば、窓際。

ここ、雨の日きっときれいだよ。

ガラスに水滴ついて、部屋の中ちょっと静かになって。

そういう日に、二人で温かいもの飲んだら、たぶんすごく落ち着く。


あと、このテーブル。

もう少し物が増えたら、生活感出てくるだろうね。

君が適当に置いたメモとか、充電器とか、本とか。

そういう小さいものが散らばっていくのも、たぶん嫌いじゃない。


……うん。

ちゃんと、君の部屋になっていく感じがするから。


ねえ。

少しだけ、窓開けてもいい?


ありがと。

……あ。

やっぱり。


春の風、入ってくる。

まだ少しひんやりしてるけど、ちゃんとやわらかい。

カーテン揺れるの、いいね。

新しい布の匂いに外の風が混ざると、ほんとに“春の部屋”って感じ。


……ふふ。

静か。


なんか、こうしてると、時間が少しだけ止まったみたいだね。

外はちゃんと動いてるのに、この部屋だけまだ始まったばかりのまま、きれいに止まってる感じ。


でも、そういう時間も今日だけかもしれない。

明日から忙しくなって、物が増えて、足りないもの買って、あっという間に“いつもの部屋”になるんだろうな。


だからこそ、今日来られてよかった。

まだ何も決まりきってない、最初の空気の中にいられてよかった。


……ねえ。


もし、この部屋で最初にちゃんと落ち着ける相手が私だったら。

……少しだけ、うれしい。


あ、そんな顔しないで。

困らせたいわけじゃないの。

ただ、ちょっとだけ思ったことを言ってみたくなっただけ。


でも、本音だよ。

新しい場所って、誰を最初に招くかで、なんとなくその部屋の記憶が決まる気がするから。

最初の笑い声とか、最初の会話とか、最初に一緒に飲んだものとか。

そういうの、案外ずっと残るでしょう?


だから今日のこと、私はちょっと覚えていたいなって思う。

春の光の感じとか。

まだ片付けきれてない段ボールとか。

新しいカーテンが揺れる音とか。

それから、君が少しだけ照れながら、それでもちゃんと私を迎えてくれたこととか。


……ふふ。

うん。

そういう顔。


なんか今、少し落ち着いてきたね。

さっきまでより、ちゃんとこの部屋で息してる顔になった。


よかった。

たぶんね、新しい部屋って、家具を置くだけじゃ完成しないんだと思う。

ちゃんと座って。

ちゃんと話して。

ちゃんと笑って。

そういうので、少しずつ“帰ってくる場所”になるんじゃないかなって。


……だから、今日はその最初の一回ってことで。

悪くないでしょ?


あ。

今、笑った。


うん。

その顔、好き。

春のやわらかい空気にちょっとだけ気が抜けたみたいな顔。


……ねえ。

これから、ここでたくさん思い出つくろうね。


大げさなことでなくていいの。

一緒に飲み物飲むとか。

少し疲れた日に寄るとか。

窓の外の季節が変わるのを見ながら、どうでもいい話をするとか。

そういう、小さいけどちゃんと残る時間。


この部屋が、君にとって安心できる場所になるように。

その中に、少しだけでも私の気配が混ざっていたらいいなって思う。


……あ。

今の、ちょっと欲張りだったかも。


でも、いいよね。

恋人なんだし。

少しくらい、そういうこと思っても。


……ふふ。

じゃあ、今日はその代わり、ちゃんとお祝いしようか。

新生活のはじまり。

新しい部屋。

新しい春。


おめでとう。

ここから始まる毎日が、やさしいものになりますように。


そして――

その中に、私もちゃんといられますように。


……なんて。

今日は少しだけ、素直すぎたかな。


でも、この部屋の春の匂いのせいってことにしておいて。

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