9話 2人の戦士
「イリーナ!ミジーやめて!」
ハルカの呼びかけを受け、二人の戦士がその場に止まる。
「なぜ止めるハルカ!この輩は魔王軍の者ではないのか?」
「邪魔建て無用」
魔物と思われいるのか?俺が?
二人はまだ俺を斬ろうとしている、これは説明が必要そうだ。
「俺は魔物じゃありませんって、CGアニメーターです」
「はっ?シーギー……え?」
「CGアニメーターですって」
「何だと?」
フードを被っていても困った表情を浮かべているのがわかるようなリアクションだ。
(そうだった、アニメーターと言ってわかってもらえる訳がなかった)
「この人の名前はスネタ。私の命の恩人なの」
困っている俺を見てハルカが説明をしてくれた。
「え?どういう事かしら?」
「詳しく」
ハルカの言葉で少し冷静になったようで、二人が武器を収める。
(斬りかかる様子を撮影したかったのだが……あぁ残念)
俺は少し肩を落とした。
× × × ×
「紹介するわ、同じガルドフ傭兵団に所属するイリーナとミジーよ。二人は姉妹なの」
ハルカが二人を紹介してくれた。
つまりハルカの仲間という事か。
「ハルカを救っていただいた事に関してはお礼を言うわ。でもこのイリーナに殺されるなんて幸せでしたのに、命拾いしてお気の毒様ですわね」
姉のイリーナは24歳。
身長が180cmはある長身の戦士で大剣を操る。
髪は赤色でロングのワンレン。
(この世界にもSキャラっぽい人はいるものなんだな)
「ミジーは、孤独を愛する鋼鉄の戦士」
妹のミジーは17歳。
145cmほどの背の低い戦士で槍を操る。
髪は銀色のショートボブ。
(ちょっと中2病気味な感じだろうか、どの世界にもこんな感じの人はいるものなのか)
俺は名刺を取り出し、丁寧に二人の前に差し出す。
「サンダーストラックアニメーションスタジオの鳥居 須音太です。本日はよろしくお願いいたします」
俺は軽く自己紹介をした。
「不思議な字ですわね……」
「召喚魔法の暗号化か?」
イリーナとミジーが名刺を見ながらつぶやく。
「まぁ何はともあれ、ハルカが無事で良かったですわ」
「ミジーは、心配をした。凄くだ」
「心配かけてごめんなさい、私はご覧の通り元気元気だよ」
イリーナとミジーは、一晩経っても宿舎に戻らないハルカを心配して捜索にきたとの事だ。
(そうだよな、ハルカは絶対に人望ありそうだもんな)
「ガドルフ団長にも心配かけてしまったよね」
「ええ、かなり心配していましたわ。早くも戻って無事を知らせてあげましょう」
そう言った後イリーナが「しかし……」と、俺の足元から頭まで見ながら話しを続ける。
「スネタは魔物が人間に化けているか、もしくは下っ端の山賊にしか見えなかったので、早とちりしてしまいましたわ」
「私、イリーナ姉様に同意する」
(ヤクザか不良に見えたという事か、俺が?)
異世界に来て鍛えられたのだろうか。
言われてみると少しワイルドになったかもしれない。
社会人らしい雰囲気が出てきたと思うと嬉しくなるな。
「イリーナ、ミジー、ありがとう。なんだか自信がついたよ」
俺は笑顔で感謝を返した。
「え?何?」
「ん?」
(おや?)
二人が和彦がいつもするあの表情になっている。
もしかしてイリーナと ミジー も目が悪いのだろうか?
異世界でも視力の低下なども存在するのか。めがねはあるのだろうか?また色々と疑問が出てきてしまった。
× × × ×
俺はスタジオから持ってきたタブレットで、イリーナとミジーにスタジオのデモリールを見せながら『アニメーション制作』がどんな仕事なのか軽く説明した。
「これはまた何といえばよいのかしら……ねぇミジー」
「悪魔の技、魔術の類か」
「戸惑うよね、これ見ただけだと。実際に制作している所見ると魔術とは違うものってわかるわ。職人たちで作られている作品だって事に」
戸惑うイリーナとミジーに説明を加えるハルカ。
「スネタ。今度、イリーナとミジーをスタジオに連れていっていい?実際にアニメーション制作している所見てもらった方が良いよ」
「もちろん!ハルカの仲間だったらいつでも歓迎だよ」
俺は大きく頷く。
「でもイリーナ、ミジー。俺が別の世界から来たという事、少しは信じてもらえたかな?」
「正直このアニメーションという代物はよくわからないですわ。でもこのイリーナの攻撃をかわせる人間などこの世界にそうは存在しない、存在してもらっては困りますわ。だから異世界から来たって頃、信じてあげますわ」
「ミジーは、強き者の言葉を信じる。スネタそなたは強い、だから信じる」
「あ、うん。信じてもらえたのなら良かった」
(俺が強いというのは誤解だと思うけどな)
俺は頭をかきながら苦笑いを浮かべた。
モーション制作の勉強の為に目は鍛えているのだが、こんな所で役に立つとはな。
努力は報われるものだ。
そしてやはり俺はアニメーターに向いているのだろうと実感できた。
できればすぐにでもスタジオに戻ってモーションの練習をしたい所だが、俺は街へ行って仕事を探さねばいけないのだ。
今はただ進もう。
× × × ×
「徒歩で街までも戻るのも面倒ですわ、二人乗りになってしまうけど飛行ドラゴンで帰りますわよ」
「そっか、飛行ドラゴンで来てくれたんだ。スネタ乗せてもらおうよ」
「うん、任せるよ」
俺たちはイリーナとミジーが乗ってきた飛行ドラゴンに乗せてもらい街へ向かう事になった。
俺はイリーナのドラゴンに、ハルカはイリーナのドラゴンに乗せてもらい大空へ飛び立った。
かなり上空までドラゴンが羽ばたく。
(高所恐怖症でなくて良かったよ)
「本当に空を飛んでいる……なんて気持ちいいんだ」
「スネタの世界には飛行ドラゴンをいないのかしら?」
「飛行機やヘリコプターはあるけど、ドラゴンは存在しないんだ」
「飛行ドラゴンがいないなんて、何とも不便な世界ですわね」
飛行ドラゴンを操りながらイリーナが笑う。
(ドラゴンの翼の動きをこんな近くで見られるのが一番嬉しい。やはり翼を下ろす時の方が動きが速いのか)
俺は純粋に感動していた。
「スネタ、もうすぐ着くよ!」
並んで飛んでいるミジーの飛行ドラゴンに乗っているハルカが声をかけてくる。
「本当だ、街が見えてきた」
眼下に城下街が見えてきた。
城壁、城門……遠くで見るよりやはり迫力がある。
中世ヨーロッパ風のレンガで建てられた街並み、絵にかいたようなファンタジー世界の街という感じだ。
「すごいな……〇〇ランドってこんな感じなのかな」
俺は○〇ランドに行った事ないのでわからないが、きっとこんな感じなんだろうな、と思う。
(しかし、これは背景モデラーしている人たちが見たらもっと感動するだろうな……こんなリアルな参考どこにもないぞ)
「まずは私たちガルドフ傭兵団の移動型宿舎に向かうよ」
「うん。よろしくどうぞ!……移動型宿舎?移動型って何?」
俺はハルカの言葉に首を傾げた。
「降りますわよ、舌を噛むないように注意して!」
イリーナが足でドラゴンの腹を軽く蹴ると街の外れに急降下した。
(いよいよ、異世界の街へ行けるんだ)
俺はワクワクしているのを感じた。
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