45話 僕らの願い
「我らが英雄、ガルドフ傭兵団のハルカ様だ!」
「ありがとうございますー!ハルカ様!」
「ウーリュウ国、万歳!」
俺たちが大通りを歩き城に向かっているとハルカに気づいた民衆たちが集まってきた。
歓喜の嵐、凱旋パレードといった所だ。
と、ハルカが大きな声で叫ぶ。
「皆さん、ここにいるスネタがガガルジアの策略を見抜き私にその事を教えてくれました。このスネタがいなければガガルジアを倒す事もできなかったはずです!」
「スネタ様!ありがとうございます!」
「スネタ様、万歳!」
急に俺への歓声に変わってしまった。
(やはりハルカの影響力は凄いな)
「良かった街の皆にスネタ事伝える事ができて」
「いやいや、本当に全てハルカのお陰だし、俺は裏方だからさこういうのは何か照れてしまうよ」
俺は苦笑するしかなかった。
「スネタって謙虚だよね、そういう所本当に……あの、その……格好いいと思うよ」
ハルカが顔を赤らめながら話す。
(かなり人が密集しているからな、熱いよなハルカも)
「さぁハルカ、急ごう風邪でも引いたら大変だ」
「え?あ、うん」
俺たちは少し速足で城へ向かった。
× × × ×
「スネタ!!本当に凄い活躍だったではないかぁ!こういうデッカイ事をやる男だと俺様は思っていたぞ!ガハハハッ」
「いえいえ、俺は大した事やってないですって」
城内に到着するとガルドフ団長が肩を組みながら褒めてくれた。
「このイリーナでも、今回スネタの協力がなければ魔王軍を撃退はできていなかったですわ。感謝いたします」
「ミジーと双璧をなす鋼鉄の戦士と認めよう」
「イリーナとミジーこそ、急いで戻って来てくれてありがとう。スタジオにいた魔王軍の兵士たちはかなり手練れだったはず。それをあんなに簡単に倒してしまうのは2人の実力だよ」
「スネタから見せてもらった剣術を使っただけですわ。あれのお陰で更に腕が上がりました」
「ミジーも姿さえ見えない闇を切り裂く力を手に入れた気がする」
(役に立って良かった。やはり2人は向上心が高いので、必ず結果を出してくれると思ったいたがこんなにも早く自分の物にしてしまう所は見習いたいと思う)
「ガドルフ団長、イリーナ、ミジーも無事で本当に良かった。サボテンキツネの完成したから映画が上映される時はぜひ観に来てよ」
「当たり前だ!全団員引き連れて観に行くぞ!ガハハハッ!」
ガドルフ団長たちとの話を終えると俺は国王の元へ向かった。
× × × ×
「サンダーストラックアニメーションスタジオの戦士たちよ。ウーリュウ国の危機を救ってくれた事、誠に感謝致す」
ウーリュウ国の国王であるオキーノハ王が、ただの会社員である俺たちに感謝の意を示している。
御年65歳くらいだろうか。立派な白髭を生やし、ゲームに出てくる『王様』のイメージ通りの方だ。
玉座の間には王族や貴族なども集まっており、俺たちの場違い感は凄い状態だ。
(せめてスーツでも着てくれば良かった……あっスーツはないか)
「スネタ殿」
「はい!」
オキーノハ王が俺の名を呼ぶ。
「そなたの活躍はハルカ殿からも聞いておる。その勇気、知恵がなければ我が国は滅びておったであろう。特に感謝いたす」
「滅相もございません、ただできる事をやっただけです」
「そこでじゃが……特別にそなたの望みのものを1つ叶えてしんぜよう」
「望み……どんな内容でもですか?」
「遠慮は無用じゃ。国を上げてその願い叶えてみせようぞ」
(これは凄い話だ……国を上げて支援してくれるなら、どんな望みでも叶えられそうだ)
俺もさすがに驚いた。
「スネタちゃん!元の世界に戻る方法探しもらいますしょうよ~」
「そうだスネタ、国王陛下だったら何とかしてくれるって」
哲さんと和彦は、元の世界に戻りたいようだ。
そうだよな……つい最近本当に殺されるかもしれない体験をしたんだ、無理もない。
「スネタ、良かったね。オキーノハ王ならきっと元の世界に戻る方法みつけてくれるよ」
一緒についてきてくれたハルカが、俯きながら言う。
「ハルカ、泣いているの?」
ハルカの頬に涙が流れているように見えた
「え?あの……これは違うよ!目にゴミが入っただけだよ、えへへへ」
ハルカが頭をかきながら苦笑いする。
「スネタの好きにしろ。俺たちはスネタの決めた願いで良いと思ってる」
「ふむ……好きにしなさい」
虎之助さんと義雄さんが背中を叩きながら笑う。
哲さん、和彦も頷く。
「皆さん……ありがとうございます。わかりました……」
俺はしばらく考えた後、一歩前に出てオキーノハ王に願いを伝えた。
「この街に映画館を作ってください!」
「……え・い・が・か・ん?とな?」
オキーノハ王がキョトンした表情になっている。
というか周りにいる全員がキョトンした表情になっている。
(何か変な事を言ったのだろうか)
そうか……映画館なんてこの世界の人が知る訳ないか。
「失礼いたしました、映画館がどのような物か説明させていだきます」
俺はできる限りわかりやすい言葉で、映画館が何かをオキーノハ王に説明した。
「なるほど、その映画館があればスネタ殿たちの作った、動く絵……アニメーション映画が上映でき多くの人々に観てもらえるという事じゃな?」
「はい!他に望みなどありません。ぜひ映画館を作ってください、よろしくお願いします」
俺は深々と頭を下げた。
それを見て虎之助さんたちも頭を下げた。
「はっはっはっ!愉快な話だ。てっきり金銀財宝でもくれと言うかと思っておったぞ。だがスネタたちは職人なのだな。よかろう、その願い叶えて進ぜよう!」
オキーノハ王が笑顔で承諾してくれた!
「ありがとうございます!」
俺はまた深々と頭を下げた。
(今までの苦労がやっと報われる)
× × × ×
それから1週間ほどで、映画館は完成した。
1日でも早く観てもらう為に、街にある室内競技場を改装する事で予算も納期も短縮したのだ。
オキーノハ王は、当然「一から作る」と言ってくださったが、俺はそこまで甘えるのは気が引けるのでこういう形にしてもらったのだ。
(50人は入れる立派な映画館だ)
スタジオにあった上映機材とステレオなどが大会場にはとても対応できるものではないので、ミニシアターくらいの方が丁度良いな。
俺は『ウーリュウ国映画館』と書かれた看板を入口に取り付け、ハルカと共に映画館の前で喜びを分かち合った。
「これが映画館だよ。俺がアニメーションの世界に興味を持ったきっかけを作ってくれた場所だ」
「サボテンキツネ、沢山の人に見てもらえるといいね」
「うん、実はここからが大忙しなんだ」
「え?」
「映画はお客さんに観てもらって本当に完成したって感じられるんだ。多くの人に観てもらえるように宣伝頑張らないと」
「それなら私にもできる、一緒にやらせて!」
それから映画に関わった全員で宣伝を行った。
ハルカたちガルドフ傭兵団の皆も国内外に宣伝をしてくれたお掛けで何と初日から連日満席になった。
主に親子連れが多い。
子供たちが大興奮で映画館から出てくる。
(あぁ……作って良かった)
俺は心底からそう感じていた。
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