43話 決戦02
(ガガルジアは人間の言葉をしゃべれるのか)
俺は驚いた。
(これは誤算だ。となると作戦が筒抜けだったのはガガルジアたちでなく……俺たちの作戦が筒抜けだったのか)
「人間の言葉理解できるのか?という驚きの表情ですね。私たちのような幹部は人間の言語を理解し話す事はできるのですよ。ただの獣だとでも思っていたのですか?まだまだ相手への理解が足りないようですね」
(位が高い者は、そういう事ができるのか……ここまで知能が高いって事はつまり)
「哲さん、このスタジオの事、全て話てしまったんですね」
「スネタちゃん……ごめんなさいじゃないですか~。でもだって、でもだってしゃべらないと殺すって脅されたら全部話すしかないじゃないですか~」
やっぱりそうだよな。
異世界から来た事を信じるかは別として、昨晩見せた映像や本隊を壊滅させた話が、はったりだった事はバレてしまっただろう。
「実に無駄のない素晴らしい作戦だったと思いますよ、スネタさん。私も思わず信じてしまいそうになりましたから」
フフフッ、ガガルジアが笑う。
「昨晩撤退したフリをしたのも、あなたたちを油断させ1名捕虜として真実を確認する為のお芝居だった訳です。この頭がかなりおかしい男から全て伺いました。城側が我々が襲撃すると思ってないとわかった以上は今夜こそ城を攻め落とします。でもその前に」
ガガルシアが手を上げると数名の魔王軍の兵士がスタジオに飛び込んでくる。
「うわぁ!」
虎之助さん、和彦、義雄さんが俺の近くに逃げてくる。
「この頭がかなりおかしい男の話だとあなたたちは別世界から来たって話ですが、流石に信じられませんね。あなたたちの言うパソコンや電灯などは、かなりのエネルギーを持ったブルークリスタルの結晶を動力源として動いているのは間違いありませんね。どこにあるか教えていただけますか?」
「だからブルークリスタルってなんの事ですか?知らないって言っているじゃないですか~」
「まぁ5人もいますし、4人ほど殺せばお話してくれますかね?」
(冗談じゃない……俺はまだ残り3カットのアニメーションの修正作業が残っているんだ。絶対に死ぬ訳にはいかない)
このままだと、全員危険だ。
(別世界から来た事を信じていないのか……巨大なブルークリスタルが何処にあるかという話は正直よくわからないけど、これはチャンスかもしれない)
俺は大きく深呼吸をした。
落ち着け、追い込まれている時こそ冷静に……締め切り前の仕事と同じだ。
(よし、やってみるか)
「(魔物語)別の世界から来た?そうだな、そんな話信じる訳ないよな。哲さんは頭がかなりおかしいとはいえ、変な話をしてしまった事を謝るよ」
「(魔王語)ほほう。スネタさんは魔物語が話せるのですか?こんな人間初めてお会いしました」
ガガルジアが食いついた。
これはいける。
「(魔物語)そう、俺は巨人族に選ばれ力を与えられたからな」
「(魔物語)ほほう。面白い話ですね」
俺は自信たっぷりに話をする、及び腰になっては絶対ダメだ。
「(魔物語)あなたがバディス神官の1人という訳ですか」
(バディス神官?何の事だろうか……だがここで動揺してはいけない。そしてこれは罠だ)
「(魔物語)思いつきで考えた固有名詞にしても雑だな、ガガルジア。バディス神官なんて役職存在しないぞ」
「(魔物語)ほほう。見抜かれましたか。『そうだ俺はバディス神官だ』などと言えば……すぐにでも殺してさし上げたのですが」
やはり罠だったか。
言葉一つ一つ最新の注意を払いながら会話を進めよう。
「(魔物語)ブルークリスタルについて詳しく聞きたければ、まずは哲さんを解放しろ」
「(魔物語)ふっ、まあいいでしょう」
ガガルシアが手を放し、哲さんを解放する。
哲さんが泣きながらこっちに逃げてくる。
「スネタちゃ~ん、ありがとう~怖かった怖かったじゃなですか~」
「わかりましたから、下がっていてください」
哲さんが泣きながら俺の背後に逃げ込む。
「(魔物語)まぁ巨人族と話をできる人間が限られている事は知っているようだな」
「(魔物語)えぇ、その程度の情報は調査済みです」
「(魔物語)もし俺を殺せば巨人族はお前たちの話を一切聞かなくなるぞ。もし俺以外の4人を殺せば俺は何をされても絶対に話さないぞ」
「(魔物語)なるほど……そうきますか」
ガガルシアが腕を組み考え込みだした。
(いけるか……)
「(魔物語)では、1つだけ私の質問に答えてください。そうすればスネタさんの話した内容を信じましょう」
「(魔物語)なんだ、言ってみろ」
「(魔物語)このスタジオの動力源になっているブルークリスタルの結晶は、何処にありますか?」
(そうきますか……)
これは当然の質問だ。且つ無駄が一切ない。
これを答えられなければ、今まで俺が言った事の信憑性がなくなる。
「(魔物語)ブルークリスタルの結晶を我々が手にしても、加工しなければただの鉱石です、いわば落ちている石を変わりありません。ブルークリスタルを加工する技術を持っているのは巨人族のみ……場所を教えた所で今、スネタさんたちに何も害がない事はご存じですよね?」
「(魔物語)あぁ、その為に人間は巨人族と契約をしている、確かに教える事くらいは問題ない」
俺のできる限り冷静に答えた。
「(魔物語)では、ブルークリスタルの結晶は何処にありますか?教えてください、スネタさん」
怪しい笑顔で再度ガガルシアが質問してきた。
これは答えない方が怪しいと思われる。
このスタジオの中に、何か巨大な鉱石を置ける場所って何処だ……。
俺は冷静に考えてみた。
(あっ……そうか地下だ)
最初にこの世界に転移した時に、スタジオ内を調査した時に地下が行き止まりになっていた事を思い出した。
(あそこ以外にはない)
「(魔物語)その扉を出ると、地下に降りる階段がある。行ってみるがいい」
俺はできる限り何か含みがある雰囲気で答えた。
(地下にあるのは間違いないが、限定するとやっかいな気がする)
「(魔物語)ベルドラ、調べてきなさい」
「(魔物語)はっ!」
ガガルジアの指示で、1人の魔物が地下に向かった。
「(魔物語)少し休ませていただきますね」
ガガルシアがイスにゆっくり腰をかけた。
× × × ×
「(魔物語)ガガルジア様!」
数分後、地下を調査しにいった魔王軍の兵士が戻ってきた。
ガガルジアの耳元で何かを報告をする。
「(魔物語)ほほう。スネタさんが言う事に偽りはないようですね」
(やはり地下だったか。予想通りで良かった)
こんな状況でなんだが、電力だけ生きていた事の疑問がこれで解けた。
実際にこの場所と巨人族とは何か関係があるのかもしれないな……。
「(魔物語)当然だ、ここで嘘を言っても何の得にもならないだろ」
俺はあくまで冷静に会話を続けた。
「(魔物語)この施設が巨人族から力を受けているのは、事実のようですね。あなたたちを殺せば巨人族と交渉できなくという点は、疑わしいですが……念の為、城を占拠するまでは生かしておいてさしあげます」
「(魔物語)撤退するなら、今のうちだと思うぞ」
「(魔物語)ほほう。何の脅しですか?」
「(魔物語)脅しなんて野蛮な事しないよ、ガガルジア。これはお前が生きて帰る最後のチャンスだ、と言っているだけだ」
ガガルジアの表情が曇る。
そして「はっ」と何かに気付いたようだ。
「(魔物語)もう遅いよ、ガガルジア」
「(魔物語)しまった!」
「ガガルジアァァー!」
そこへ「バリーン!」窓を割って、ハルカが飛び込んでくる!
そしてそのままガガルジアに斬りかかる。
「ちっ!」
ガガルジアも剣を抜き応戦する!
「ガガルジア、ここが貴様の墓場にしてやる!」
剣と剣での激しい戦いが繰り広げられる。
続いて、イリーナとミジーもスタジオ内に飛び込んできて、次々と魔王軍の兵士を倒していく!
「(魔物語)怯むな!殺せ!」
「(魔物語)ガガルジア様をお守りしろ!」
他のガルドフ傭兵団の戦士たちも合流し、激しい戦闘が繰り広げられる。
「皆さん、作業データの入っているサーバーのパソコンを持って屋上に逃げてください!」
「スネタちゃん!データより命じゃないですかー!!」
「戦い巻き込まれてパソコンが壊れてデータ消えたら、今までの苦労が水の泡です!大丈夫、俺たちは死なない!ハルカたちがいますから」
「わかった、そうする!でもスネタまさかこれを狙っていたのか?」
「ハルカならきっと気付いて戻ってきてくれと読んでいましたから」
俺は、混乱に乗じて虎之助さんたちを逃がした。
「流石、ガガルジア強いわね!」
「おやおや、甘く観られたものですね。人間如きに簡単に倒せるとでも思っていましたか?」
「何てね!」
ハルカがガガルジアに回し蹴りを加える。
「ぐはぁ!」
ガガルジアが外に吹っ飛ばされる。
「スネタ無事!?」
「大丈夫だ!」
「良かった!詳しい話は後でね」
そう言うとハルカが外に飛び出した。
俺の心配できるくらい余裕のようだ。
俺は窓に駆け寄りハルカの様子を見た。
外ではガルドフ傭兵団の戦士たちと魔王軍が戦っている。
(数ではガルドフ傭兵団の方が優位だ、これは勝てるぞ)
次々と俺の目の前で魔王軍の兵士が倒されていく。
「やはり昨夜、城に奇襲をかけておけば良かったようですね……」
ガガルジアが唇を噛む。
「策に溺れたわね。ガガルジア!」
ハルカの持つ剣が更に青く光!
そして素早くガガルジアを斬り捨てる。
「ぐはぁ!」
口から血を吹き、ガガルシジアが膝から崩れ落ちる。
「くくくっ……これで勝ったと思わない方が良いですよ。必ずあなたたち人間を絶滅させてみせますから」
怪しく微笑みながら、ガガルジアを地面に倒れ絶命した。
「ガガルジアを討ち取ったぞ!私たちの勝利だ!」
ハルカが勝鬨を上げる。
「うおぉぉー!」
周りに動いている魔王軍の兵士はいない。
どうやら全て片付けたようだ。
(とはいえ流石に危なかった……助かってよかった)
俺は安堵して胸をなでおろした。
屋上に避難していた虎之助さんたちも下りてくる。
「良かった!助かった!勝ったんだなスネタ!」
「えぇ、虎之助さんたちも無事で良かったです。」
「いやもう死ぬかと思ったぞ」
「もうマジ勘弁してほしいっすよ……」
「ふむ……娘に会うまでは死ねない」
「良かった!これでまたメイド喫茶に行けるじゃないですか~!生きてるって最高だ!」
皆、無事で良かった。
俺は心からそう感じた。
「1人でもかけたらアニメーション制作続ける事できないですもんね」
「え?」
「さぁ、スタジオ内を綺麗にしたら、またアニメーション制作の続きをしましょう!」
「スネタ、お前は凄いな……」
虎之助さんたちが苦笑いを浮かべる。
(皆よっぽど怖かったんだろうな、顔が引きつった状態がなかなか戻らないようだ)
そんな事を思いながら俺は急いでスタジオに戻った。
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