37話 カット制作の問題点
ハルカたちの出陣を見送った俺たちは会議室に集まり、制作について問題点を洗い出す事にした。
「一番の問題は背景がまだ全部上がっていない事じゃないですかー、どうします?」
「ふむ……変わりの人を見つけるのは難しいよね」
「俺は無理っす、背景は門外漢っす」
「やはり今ある素材を使って何とかする、それしかないようだな」
皆からの意見が出た後、虎之助さんが答えを出した。
「完成させる事が優先だ。演出で見せ方を再考しよう。ただ俺は今回が初監督作品だ、演出力があるかと言われれば決して引き出しは多くない。今ある背景素材を使っての演出、他何か良い演出あったらドンドン出してほしい。よろしく頼む」
虎之助さんが深々と頭を下げる。
自分の足りない部分を正直に伝える虎之助さんは清々しく格好良いと俺は感じた。
(何かアイデアないかな……)
俺は腕を組みながら一考する。
「一応、ナレーションで逃げる手もあるとは思いますけど」
「確かにそれが一番ベターだとは思う。ただナレーションやモノローグはできるだけ使いたくない、映像で語りたい。いくつか考えてそれでも出なかったら、使おうとは思う」
「了解っす」
和彦の意見もわかるな……ただやはり監督は虎之助さんが求めているのは絵で見せる事ってことだな。
「ふむ……今ある背景の流用、つまり同ポジションでのカット割りの再構築かな」
「ですね、それがベースかとは思います」
義雄さんからも意見が出た。
「イメージBGとか、使うのはありでしょうか?」
思いつきだが、せっかくなので俺も意見を言ってみた。
「あぁ、確かにそれいいな。単色のデザインっぽいイメージBGなら俺たちでも描けるといえば描けるよな」
俺の意見も採用された、嬉しいものだ。
(自社作品の良い所だ。色々な意見が出て面白い)
その後も皆から意見が多く出て虎之助さんが上手くアイデアをまとめてくれた。
「これなら、最低限のコストで作り直しができそうだ。皆ありがとう!」
そう言って虎之助さんが頭を下げた。
「虎之助さん、頭上げてください。何も虎之助さんが悪い訳じゃありません」
「いやいや……でも結果的にモーションの修正が多くなってしまった、スネタすまない」
「望む所です。昨日作ったカットより、もっと良いカットに仕上げてみせます!」
俺は力強く答えた。
1カットでも多く制作して経験値を増やしたい俺にとっては有難い話だ。
戦争への不安は拭えないが、俺たちには俺たちの戦いがある。
俺たちはパソコンに向かい作業を進めた。
× × × ×
「先にアフレコを進めておいた方が良いかと思いますがどう思いますか?」
俺は進捗会議で虎之助さんに提案をしてみた。
「アフレコか、どうしてそう思うんだ?」
「はい、魔王軍との戦闘がどうなるかわからない状態です。万が一魔王軍が攻め込んできたら、さすがにアフレコはできないと思います」
「確かに。特に子供を危険にさらす事などできない。ウーリュウ国の軍隊が出撃したのは昨日だ、今のうちに採ってしまった方がよさそうだな。哲、すまないが街に行って子供たちにアフレコの件、相談してきてくるか」
「了解~。ただ……声優が決まっていない役がいくつかあるじゃないですか~、これどうします?」
哲さんからの鋭い指摘があった。
そうだ、確かに全ての役が決まっている訳ではないのだ。
「一応、村の住人などのガヤは俺らでやってしまうって話っすよね」
「役名がついていて決まっていないのが、敵の『熊』と女の子の『お父さん』ですかね~」
「『熊』役は俺がやるよ。義雄さん『お父さん』役は義雄さんお願いできますか?」
「ふむ……わかりました『お父さん』役は僕がやりましょう」
選択肢があまりない状況だ、身内で固めるとしてとりあえず役は決まりそうだ。
「皆、突貫工事みたいになってすまない」
虎之助さんが申し訳なさそうに言う。
「なんか、自社作品っぽくていいと思います。受け仕事だったらできない事ですし」
「国民的監督の映画にも別のアニメ監督が声優として出演してますし、大丈夫じゃないですか~?」
「一応、ダメ出しはするっすよ」
「和彦はなんだかんだで厳しそうだよなー、お手柔らかに頼むぞ」
全員思わず笑ってしまった。
哲さんが子供たちに説明をする為、街に向かった。
(よし、動きを止めずにこのままドンドン制作を進めておこう)
俺たちはアフレコ用のムービー制作など、諸々準備を進める事にした。
もう1日も無駄にしないつもりで俺たちは制作を進めた。
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