28話 サボテンキツネ、制作スタート
「はい、では原作者のサキモーリィー先生から許可を頂いたという事で、後はひたすら制作するのみ!と言いたい所ですが~、スタッフが足りません!」
哲さんがそう言うながら、問題点を書き出したホワイトボードを指さす。
スタッフで足りないのは「美術」そしてキャストである「声優」かぁ。
ホワイトボードにもこの2点について大きく書かれている。
「声優って言うんだ、声を入れる人」
「うん、そんな言葉こっちの世界にないよね」
ハルカにも相談に乗ってもらおとスタジオに来てもらい会議に参加してもらった。
「音楽は会社のデモリール作る時に購入したフリーの音楽集があります。また効果音についてはPVの案件で使った、フリーの効果音集が残っていたのでそれを使えば何とかなりますけど~、早急に背景美術を描けるスタッフを集めなければいけない訳じゃないですか~、知ってる協力会社さんなんて、この世界にはない訳です!皆さんどうします!?」
哲さんが頭を抱えながら話しを続ける。
「そして問題が食料です!残っている食品も1週間も経てば底をつきます。魚も義雄さんなら多く釣ってきてくれますが、他の人だと数匹だったりして安定的な食料確保とはいえない状態です!」
(魚釣りに関しては俺もまだまだ未熟なのは認めざる負えない。ただ義雄さんに全て任せてしまえば撮影がいなくなってします……本末転倒だ)
「食料の調達も行いながらだと、制作が止まるって事っすよね」
「その通りだ、和彦ちゃん。良い事言うじゃないですか~」
「一応、哲さん実作業しないし食料調達をメインでやる事ってできるっすよね」
「無理に決まってるじゃないですか~。釣り針にミミズなんて付けれないし、生きてる魚を手で掴むとかできないから!」
哲さんの言葉に全員がため息をつく。
「まぁ、哲にそこまで期待していないし大丈夫だ。とはいえ制作していく上で一番大事なのは健康である事だ。健康状態が悪ければパフォーマンスが落ちる。調子よければ1時間で終わる事が4時間かかってしまう事もある。これは避けなければいけない」
「ふむ。制作期間の2カ月、どう乗り切るかだね」
虎之助さんと義雄さんがベテランらしい話をしている。
「スポンサー探しちゃいますか~?」
「悪くない考えだが、お金を出すという事は口も出す……という事になる。自由度がなくる危険性がある」
確かに、哲さんの提案も一理あるが、異世界にまで来て自由に作品作れない環境というのもなかなか辛いな……と俺も思う。
(それなら……)
と、俺は一つ考えた。
「ハルカ、銀行ってあるのかな」
「銀行?」
「お金を貸してくれたりする所、融資だね」
「貸金の事かな?それならあるよ。私たち傭兵も武器を揃えたりする時に借りたりはする」
「あるにはあるんだ」
「でも金利は4割だよ」
「4割?40%!?」
俺はあまりの数字に驚く。
「ちょっとちょっと、それは日本なら違法だよ!僕だってサラ金から借りる時最大18%じゃないですか~」
「哲、サラ金から金借りてるのか?」
「色々、お金かかるじゃないですか~、メイド喫茶お茶飲み行ったり、メイド喫茶にご飯食べに行ったり」
流石、哲さん。
サラ金に手を出すなんて、リボ払いすら絶対にやらないと決めている俺からすると信じられない行為だ。思わず感心した。
(ダメだ、話が逸れた)
「その数字じゃ、とても俺たちには現実的じゃないね。別の方法をやはり考えないと」
「あのねスネタ、ひとつ提案があるんだ」
「何?」
「私が食料や食材を提供するのはどうかな?」
「気持ちはとても嬉しいけど。これ以上、ハルカに頼る事はできない」
俺は慌てて断った。
「無料で……とは言わないよ。変わりにパソコンとCGアニメーションのソフトの使い方を私に教えて。そうしたらパン、スープ、野菜とか最低限の食料や食材は授業料としてお支払いします」
「え?」
ハルカがなかなか凄い提案をしてきた。
しかしハルカがアニメーション制作に興味を持っているとは知らなかった。
「スネタに先生になってもらえるなら……私週に何度か、ここに来る。同じ時間を過ごせるだけで凄く……その、あの……嬉しいし……」
俯きながらハルカが話す。
(ハルカが俯いてしまった。もしかして、俺から教わる事が不安なのだろうか?そうだよな、まだ俺は一人前ではない)
「異世界の人がアニメーションに興味を持ってくれるなんて嬉しいよ!俺でよければ全力で教える!アニメーションの良さを知ってもらえるように俺も頑張るから!」
俺は思わず大きな声を出してしまった。
「虎之助さん、いいですか?」
「そうだな、もしその条件で食料を提供してもらえるなら、俺たちも凄く助かるよ」
虎之助さんも賛成のようだ。
「ハルカ、よろしく頼むよ」
「うん、決まりだね」
ハルカが微笑む。
(これで食料問題はとりあえず解決できそうだ。後はスタッフだな……なんとかまずは『美術』スタッフの確保だ)
「虎之助さん、美術スタッフの問題はすぐには解決できそうにないと思います。仮の背景素材を用意して、それで制作を進めませんか?」
「そうだな。ローポリで仮の背景を作ってそれでレイアウトなども進めておこう」
虎之助さんも俺の意見を受け入れてくれた。
(作業を進めつつ打開策を練ろう)
俺たちは会議を終え制作を開始した。
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